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第6章 並木リナ

第33話 利益

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 自宅に帰宅した美奈子さんを見送り、私は『フォークロア・コーポレーション』でユリシーズさんと話をする。社長である父親も出勤しているから、一緒に車で帰宅するためという理由もある。

「私も、土曜日午後の定例ミーティングに出ます! お願い!」
「それは構いませんが…必ずしも『緊急クエスト』のことばかりではありませんよ?」
「わかってます。美奈子さんが普段『現界』して試していることの報告もあるんでしょう? なおさら聞きたい!」

 美奈子さんが、毎週土曜日午前に『現界』して高校に登校していることは聞いている。本人は『電車に乗らなくて済むから』って言ってるけど、実際には、いろいろと有益なことを試していることはユリシーズさん経由で知っている。

「この間は、物理の実験でこっそりスキルを使ったら、普通ならとっても時間がかかる化学反応が一瞬であっさり起きたとかって」
「そうなんですよ。他にも、無重力環境が必要な工程も地上でできてしまうことから、新しい薬品の合成手法なども短時間で発見してしまって」

 つまり美奈子さんは、エルフな剣士であるミリアナだけでなく、ドワーフな生産職であるコナミとしても、『現界』能力をこれでもかと活用しているわけである。料理スキルに限らず、あらゆる鍛冶・調合スキルについても。

「いやもう彼女、この数か月だけで、どれだけの『依頼』を達成しているのか…」
「…え、美奈子さんが対応してるのって、『緊急クエスト』だけじゃなかったんですか?」
「…あっ」
「えっと、美奈子さんって『ファラウェイ・ワールド・オンライン』内でも、現界スキルや暴発スキルを付与した魔石を大量生産して運営に渡しているんですよね?」
「…」
「ウチの会社、どんだけ美奈子さんをこきつかってるの!?」
「しゃ、社員のボーナスが数倍に跳ね上がる程度には…」
「なにそれー!?」

 後で父親を問い詰めたら、並木家の資産倍増にもつながっているらしい。なんてことなの…。



「ここは私が! 私が全部おごりますから!!」
「え、でも…(ひそひそ)私だって、相応の報酬はもらってるんだよ? ゲーム内ポイントとしてだけど、ここの支払いにだって…」
「それでも! それでもです!!」
「おーい、美奈子姉さんはてりやきバーガーとジンジャーエール、並木はダブルチキンとポテトでいいのか?」
「おっけーだよ! 支払いは私がするから!」
「お、おう」

 私は財布だ。美奈子さんと霧雨くんの財布になるのだ!
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