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第2章 レナード&ランス
第11話 哀愁
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「じゃあ、これからどっかの領地に宣戦布告するか? 奪いたいわけじゃないけど、ライナを含めてちょっと腕試ししてみたいし」
「それなら、またミリアナさんところがいい!」
げふっ。
ライナちゃーん、私の目の前で、そんなはっきりとー。
「いや、ライナにとっては連続過ぎる。ギルドとしてイメージが悪い」
「だなあ。1対1で僅差だったから1対多にしてみましたって感じだもんなあ」
「コナミさんの装備を考慮しても2対多になるだけだしな」
「むう」
「あはは…」
その『コナミ・サキ』としては、とりあえず笑っとくしかない。
「でも、なんかそれでも負ける気がする」
「だな。対ライナ戦のミリアナを見て、そんな気がしてならない」
「そ、そうなの? 私の爆弾がなかったら大変だったんじゃないの?」
「いや、あそこで躊躇なく爆弾を使ったからこそなんだよ」
「え?」
よく、わかんない。私に関する、悪くない評価みたいなんだけど。
「ミリアナって、姉さんの装備はともかく、基本ソロだったろ? 弱点はそこだと思ってたんだけど、それも打ち破られたって感じでな」
「あ、それは私も思った! 中継見ていた人はがっくりしたかもしれないけど、あれってあくまで、領地の防衛戦だったんだから」
「そうそう。最初からユニークウェポン縛りの試合とかだったならともかくな」
ああ、そういうこと。いや、さすがに銃撃戦で攻められて『我が国は武士道精神を重んじるから!』とかって刀だけで対抗をすることはないよねっていう。まあ、歴史上、近世と近代の間でそれで滅んでしまった国々があったわけだけれども。
「そういうわけで、ミリアナ戦はかなりの戦略と戦術がいる。もしかすると、所詮リアルでは中坊な俺達の知識と発想じゃあ、どうにもならないかもしれない」
「ミリアナって、中身どんななんだろうな。掲示板じゃあ、時間余りまくりのお金ありまくり、無駄に才能があるいい年こいた引きこもり野郎って予想が定番だけど。やっかみ込でな」
あははは…。まあ、私としては、そんな噂が流れまくっていた方が都合がいいけどね。
「『ファラウェイ・ワールド・オンライン』だと、性別年齢関係なくアバター作れるもんな。退職後の元有能な経営者の暇つぶしって言われても納得できちまうかも」
「まあ…興味はあるけど、それがわかったところで、やっぱりどうにもならないけどな」
ほうほう、拓也は両親経由の情報源・私で、ミリアナが少なくとも女性であることを知ってるのに、一番の友達のふたりにも言ってないのか。義理堅い拓也が素敵だ。
だからねライナちゃん、私のことをチラチラと見ないでもらえる?
「じゃあ、どこにするの? このギルドに関われない私が尋ねるのも変だけど」
「そりゃあ、ひとつしかないな」
「ああ…やっぱり」
『新緑の騎士団』の領地ね。他に思いつかないよ。
◇
「『シューティングスター』!!!」
シュバッ―――
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ―――
…
……
………
「天空城のメイドを出すまでもなかったな」
「だな。他のギルメンも、それわかり切ってたから来てないし。」
「剣士ばっかりだもんなあ」
「とりあえず、合掌しとこうか」
「ふっとばした本人に合掌されるとは、哀れな」
◇
エリア1のバー『雨宿り』。
「コナミから言ってもらえないかな、ちょっとばかし手加減してくれないかって」
「こればかりは、前島さん…ユーマからの頼みでも、ちょっと」
「うん、言ってみただけだから。言ってみたかっただけ…」
哀愁が漂ってますね、『新緑の騎士団』ギルマスのユーマさん。
「今日は、それだけ? 学校で話しても良かった内容だと思うんだけれども」
「いや、最近、学校での締め付けが厳しくて…」
「あの人達…」
もしかして、私が言う相手は『神々の黄昏』じゃなくて、三人娘の方々なのではないだろうか。それも、リアルの方。運動会の時も、前島さんをネタにしてあれやこれやと言動が残念だったからなあ。
からんからん
「あ、ホントにお姉さん…コナミさんがいた」
「こんにちは。ランスくん、レナードくん」
「ちわっす」
「あ、ユーマさんも。こないだはどうも」
うん、名前覚えたよ! 他のギルメンは怪しいけど。リアル名前に至っては以下略。
「何か飲む? ここはジンジャーエールがオススメだよ。辛口が最高なの」
「そ、そうなんですか。それじゃあ、それひとつ」
「あ、俺も、マスター」
「あいよ」
しゅわっ
「あ、ホントに、んまい」
「へえ、こりゃいいや」
「ミリアナも好きなんだよ。というか、だからここに置いてるんだけどね」
「ん? どういうこと?」
「あれ? このバーのオーナー、ミリアナだよ」
「「「そうなの!?」」」
「言ってなかったっけ?」
「知らなかった…」
最近、ヘラルドやユーマ、ユリシーズさんと、関係者の溜まり場みたいな感じで使っていたから、言ったつもりになってたかも。ユリシーズさんを始めとした運営スタッフは知っていて当然だし。特に、女性陣。なぜかはあえて言うまい。
「なんだ?」
「なんでもないよ、マスター。あははは」
「いやでも、それってあまり広めない方がいいんじゃないか?」
「だよなあ。ミリアナがオーナーの店と知られたら、ユーザアバターが大挙して押し寄せるぞ」
「えー、それはやだなあ」
この店のアイデンティティに関わるからね! 密かな情報交換の場であり、憩いの場。人気カフェみたいになるのはNG。
「じゃあ、聞かなかったってことにしてね。ちなみに、このジンジャーエールは『コナミ・サキ』ブランドだから」
「「「納得しました」」」
あれえ?
「ところで、ふたりは私に用があったの?」
「コナミさんっていうか、ミリアナかな」
「そうそう。俺たちを、もう一度『現界』してほしいって頼みだから」
「「え?」」
な、なんだろ?
「それなら、またミリアナさんところがいい!」
げふっ。
ライナちゃーん、私の目の前で、そんなはっきりとー。
「いや、ライナにとっては連続過ぎる。ギルドとしてイメージが悪い」
「だなあ。1対1で僅差だったから1対多にしてみましたって感じだもんなあ」
「コナミさんの装備を考慮しても2対多になるだけだしな」
「むう」
「あはは…」
その『コナミ・サキ』としては、とりあえず笑っとくしかない。
「でも、なんかそれでも負ける気がする」
「だな。対ライナ戦のミリアナを見て、そんな気がしてならない」
「そ、そうなの? 私の爆弾がなかったら大変だったんじゃないの?」
「いや、あそこで躊躇なく爆弾を使ったからこそなんだよ」
「え?」
よく、わかんない。私に関する、悪くない評価みたいなんだけど。
「ミリアナって、姉さんの装備はともかく、基本ソロだったろ? 弱点はそこだと思ってたんだけど、それも打ち破られたって感じでな」
「あ、それは私も思った! 中継見ていた人はがっくりしたかもしれないけど、あれってあくまで、領地の防衛戦だったんだから」
「そうそう。最初からユニークウェポン縛りの試合とかだったならともかくな」
ああ、そういうこと。いや、さすがに銃撃戦で攻められて『我が国は武士道精神を重んじるから!』とかって刀だけで対抗をすることはないよねっていう。まあ、歴史上、近世と近代の間でそれで滅んでしまった国々があったわけだけれども。
「そういうわけで、ミリアナ戦はかなりの戦略と戦術がいる。もしかすると、所詮リアルでは中坊な俺達の知識と発想じゃあ、どうにもならないかもしれない」
「ミリアナって、中身どんななんだろうな。掲示板じゃあ、時間余りまくりのお金ありまくり、無駄に才能があるいい年こいた引きこもり野郎って予想が定番だけど。やっかみ込でな」
あははは…。まあ、私としては、そんな噂が流れまくっていた方が都合がいいけどね。
「『ファラウェイ・ワールド・オンライン』だと、性別年齢関係なくアバター作れるもんな。退職後の元有能な経営者の暇つぶしって言われても納得できちまうかも」
「まあ…興味はあるけど、それがわかったところで、やっぱりどうにもならないけどな」
ほうほう、拓也は両親経由の情報源・私で、ミリアナが少なくとも女性であることを知ってるのに、一番の友達のふたりにも言ってないのか。義理堅い拓也が素敵だ。
だからねライナちゃん、私のことをチラチラと見ないでもらえる?
「じゃあ、どこにするの? このギルドに関われない私が尋ねるのも変だけど」
「そりゃあ、ひとつしかないな」
「ああ…やっぱり」
『新緑の騎士団』の領地ね。他に思いつかないよ。
◇
「『シューティングスター』!!!」
シュバッ―――
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ―――
…
……
………
「天空城のメイドを出すまでもなかったな」
「だな。他のギルメンも、それわかり切ってたから来てないし。」
「剣士ばっかりだもんなあ」
「とりあえず、合掌しとこうか」
「ふっとばした本人に合掌されるとは、哀れな」
◇
エリア1のバー『雨宿り』。
「コナミから言ってもらえないかな、ちょっとばかし手加減してくれないかって」
「こればかりは、前島さん…ユーマからの頼みでも、ちょっと」
「うん、言ってみただけだから。言ってみたかっただけ…」
哀愁が漂ってますね、『新緑の騎士団』ギルマスのユーマさん。
「今日は、それだけ? 学校で話しても良かった内容だと思うんだけれども」
「いや、最近、学校での締め付けが厳しくて…」
「あの人達…」
もしかして、私が言う相手は『神々の黄昏』じゃなくて、三人娘の方々なのではないだろうか。それも、リアルの方。運動会の時も、前島さんをネタにしてあれやこれやと言動が残念だったからなあ。
からんからん
「あ、ホントにお姉さん…コナミさんがいた」
「こんにちは。ランスくん、レナードくん」
「ちわっす」
「あ、ユーマさんも。こないだはどうも」
うん、名前覚えたよ! 他のギルメンは怪しいけど。リアル名前に至っては以下略。
「何か飲む? ここはジンジャーエールがオススメだよ。辛口が最高なの」
「そ、そうなんですか。それじゃあ、それひとつ」
「あ、俺も、マスター」
「あいよ」
しゅわっ
「あ、ホントに、んまい」
「へえ、こりゃいいや」
「ミリアナも好きなんだよ。というか、だからここに置いてるんだけどね」
「ん? どういうこと?」
「あれ? このバーのオーナー、ミリアナだよ」
「「「そうなの!?」」」
「言ってなかったっけ?」
「知らなかった…」
最近、ヘラルドやユーマ、ユリシーズさんと、関係者の溜まり場みたいな感じで使っていたから、言ったつもりになってたかも。ユリシーズさんを始めとした運営スタッフは知っていて当然だし。特に、女性陣。なぜかはあえて言うまい。
「なんだ?」
「なんでもないよ、マスター。あははは」
「いやでも、それってあまり広めない方がいいんじゃないか?」
「だよなあ。ミリアナがオーナーの店と知られたら、ユーザアバターが大挙して押し寄せるぞ」
「えー、それはやだなあ」
この店のアイデンティティに関わるからね! 密かな情報交換の場であり、憩いの場。人気カフェみたいになるのはNG。
「じゃあ、聞かなかったってことにしてね。ちなみに、このジンジャーエールは『コナミ・サキ』ブランドだから」
「「「納得しました」」」
あれえ?
「ところで、ふたりは私に用があったの?」
「コナミさんっていうか、ミリアナかな」
「そうそう。俺たちを、もう一度『現界』してほしいって頼みだから」
「「え?」」
な、なんだろ?
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