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第1章 ライナ・アセトアルカナ

第7話 急襲

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 運動会が終わり、私は先に帰宅した。朝と同じく、拓也達生徒は後片付けがあったからだ。
 そして私は、昨日に引き続いて夕食担当。拓也をねぎらわないとね!

「MVP賞、惜しかったねー」
「いや、あれは生徒会がやってる非公式のものだしさ。まあ、二番目だったけど」
「いいじゃない、二番目! さあさあ、唐揚げ食べて、おいしいよ!」
「あ、ああ…。(言えない、一番目がなぜか美奈子姉さんだったなんて)」

 もぐもぐ

「…ねえ、並木リナちゃん、だったよね。普段から仲いいの?」
「並木? あー、よく声かけてくるクラスメートではあるかな。あいつらに次いで」

 あいつら…ああ、ウチに来たこともある、あのお友達ふたりね。拓也…ヘラルド・ミストライブラがマスターのギルド『神々の黄昏』のメンバーでもある。

「ほ、他にも声かけてくる女の子、っているの?」
「まあ、同じクラスなら話す機会もいろいろあるさ。ただ、並木の場合は特別だな」
「と、特別!?」
「あいつ、転入生だから。数週間前に来たばかりなんだよ」
「そうだったの!?」

 それにしては、拓也とずいぶん親しげだったなあ。最初に会ったお昼の時はともかく。あの時は私達もいたからね。特に、前島さん。でも、あれだって、自分からお昼を申し出てきたんだよね。やっぱり…やっぱり、なのかな。

「だから、よく話すって言っても、あいつのことはほとんど知らないんだよ…どうした?」
「え? べ、別に?」
「…美奈子姉さん、そりゃあ、俺が女と話をするのは珍しいかもだけどさ、戦闘メイド達の時と同じように…」
「え!? や、そんな、そんなこと、ないよ!? な、ないからね!?」
「『そんなこと』って?」
「え? あああっ…!!」
「…いや、まあ、俺も別にいいけどよ」

 ううう、また『嫉妬』したと思われた…。そうじゃないよ? そうじゃない…はず。

「…」
「…唐揚げ、おかわりいる?」
「ああ…」

 うーん、またちょっと気まずい雰囲気。あの時とはかなり意味合いが違うけど…な、なんか、恥ずかしい…。

「…私達も、いるんだがな」
「もうあきらめましょ、お父さん」



「はあああああっ!」

 しゅばっ
 ずしゃああああああ

「ぐはっ」
「うわああああああっ!」

 ドゴォン…
 ズン…

「今回も瞬殺だったなあ…。はあ」

 くるっ
 チンッ

 しゅうううううう…

 消えていくパーティ…じゃないな、数十人規模のギルドだな。そのアバター達が次々と死に戻りしていくのを眺めなら、何度目かのため息をつく。
 もう、何回やったか数えてもいない、領地防衛戦。例外なく、1分もかからない。

「あーもう、掲示板で名乗り出て、しばらく防衛戦やりませんって宣言しようかな。いつまでたっても領地の内政できないよ」

 うん、決めた、そうしようそうしよう。そうしてようやく、ポーション用薬草を栽培して街の名産にするのだ。

「じゃあ、掲示板に書き込むために、オンライン通知をオンにして…」

 ピッ

 ぽーん

【アバター名『ライナ』がエリア19の特殊クエストを単独クリアしました。また、ユニークウェポン『嵐弓テンペストアセトアルカナ』をドロップしました】

 おお、なんというタイミング。これまで、ユニークウェポン取得といったら、私とユーマ(前島さん)とヘラルド(拓也)だけだったのに。ログで確認したから間違いない。

 んー、念のため、会いに行った方がいいのかなあ。『聖盾アンサイルアイスフィールド』は私に関係なく現界できちゃうし、『天空城ミストライブラ』は戦闘メイドさん達が不可思議な言動をしていたし。今度のユニークウェポンにも、何か起きていたら…。

 ぽーん

【アバター名『ライナ・アセトアルカナ』が、アバター名『ミリアナ・レインフォール』に宣戦布告しました。PvPを受諾しますか? [はい/いいえ]】

 うぇっ!? ユニークウェポンを取得して、すぐに私に宣戦布告!? しかも、すぐに改名してるし! いや、最後のはどうでもいいか。
 いやしかし、私を狙い撃ちって感じだよね。もしかして、以前も宣戦布告してきたユーザだったのかな? パーティかギルドのひとりだったとか。

 まあでも、話すきっかけになるかもしれない。PvPの結果がどうあれ。よし。

 [はい]を、押す。

 …
 ……
 ………

「え、あれって…ええええええ!?」

 最初は、小さな小さな『点』が、空の彼方に散らばっていただけだった。
 それらが、だんだん、だんだん、大きくなって…。

 …ヒュウウウウウウウウウウウウッ

「ちょっとー! どんだけたくさんあるのよー!?」

 百や二百ではきかない無数の『矢』が、空から降ってきた。気がつけば、目の前の上空を覆い尽くすほどに。
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