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しおりを挟む1日目 5回目
鹿は強かった。
突撃だけで全身バキバキになった後綺麗に頭を踏まれて死亡した。
少しだけ強くなった程度ではあの鹿はまだ遠いのだろう。
これは暫くあの猿を倒し続けるしかない。
水も食料も現状手に入れにくいのなら、少しでも強くなってから改めて採取に向かうべきだろう。
一応生きている間は出来るだけ探してみることにしつつではあるが。
1日目 5回目その2
慣れたもので直ぐに林に到着した。
道中に居る動物は基本逃げるので現時点では何もできない。
銃でもあれば行けるんだろうかと思ったが、当てられる自信がないし音で他のモンスターが来る可能性がある。
弓・・・そもそも持ってないし作る技術もない、弦とかどこから調達すればいいのか。
そういう訳で武器は石である。とりあえず石で殴れば素手で殴るよりダメージになる。
そんな事を考えながら歩いていると前回と同じ場所で猿が寛いでいた。
見た目で猿と決めつけているが、猿にしては色々姿が違う。
何がどう違うかと言われれば自分のボキャブラリーでは説明のしようがない。
とりあえず「猿の様な何か」で間違いはないだろう。
警戒心が無いのか、余裕なのか此方が近づいているのに動物特有の反応がない。
普通の動物ならここまで近づけば逃げるのだが、猿はこちらに見向きもせず寝そべっている。
前回はほぼ奇襲で倒せたが、今回はどうだろうか。
右手に持った石を強く握り、意を決して飛び込む。
投石なども考えたが当てられる自信がないので接近戦しか勝てる方法がない。
動物だろうがモンスターだろうが本来なら足が竦んで動けないのかもしれないが、
既に何度も殺されて、一度でも殺してしまえば嫌でも慣れてしまうようだ。
思い切り振りかぶり叩きつけるようにして石を叩きつけ、軽く避けられてしまった。
【ギギギッ!!】
表情が読み取れないが攻撃を避け立ち上がった猿が気色の悪い声を上げる。
両手を目の前で叩くその姿はまるで相手を馬鹿にしている猿そのものだ。
間違いなく馬鹿にしているのだろう。
だがそれは此方を侮って油断しているという事だ、それならまだ可能性はある。
逃げられたら逃げられたでまた倒せるモンスターを倒せばいいし、死んだらまた襲えばいい。
そう考えれば気も楽だ。
もう一度駆け出して再び石を握った拳を振りかぶる。
射程を考えれば蹴りの方が良いかもしれないんだろうが、格闘技を齧った訳でもない素人の
力の入ってない蹴りなんて隙を晒すだけだ、それならば当てられる可能性のある素手攻撃の方が
まだ当たるかもしれない。
何度も何度も振りかぶって攻撃を繰り返すがやはりと言うか当たらない。
何処かで聞いた話だと人間は猫にも勝てないと聞いたが、猿なら余計に勝てないんだろう。
それもこいつはおそらくモンスターだ。
目の前で見れば奴の表情も良く見える。 目が四つもある猿なんて世界のどこを探してもいないだろう。
こちらの攻撃を軽く回避し、少し先で此方を馬鹿にした態度をとっている猿。
そして相手は此方がこれだけ攻撃しているのに反撃もしてこない、おちょくっているのか・・・
それとも疲れた所を攻撃しようとしているのか。どちらにしてもこのままでは埒が明かない。
手もどんどん疲れてきているし呼吸も荒れてきている、ならば可能性を信じて行動するしかない。
【ギギィ・・】
もう一度全力で振り下ろし、それも軽く避けられる。
同時に荒く呼吸を繰り返しその場に立ち止まる自分。
その様は完全にスタミナが切れて動けなくなったと言わんばかりだ。
事実ほとんどスタミナが尽きて動けていないのもあるが・・・
これだけ頭の良い猿は油断してくれるだろうか。
ぜぇぜぇと息を吐く自分を見た猿の表情が、ぐにゃりと歪んだ。
口角が上がり、まるで笑っているかのように。
ふらふらとゆっくり歩いてくる猿だったが、一定の場所までそうして歩いた瞬間―――
【ギャヒイイイイ!!】
「予想通り」にこちらを殺しに襲い掛かってくる。
大きく口を開き突撃してくる様は本能的な恐怖を覚え、一瞬震えが走る――が
既にこの猿より恐ろしい猪に襲われていた事や、これが数回目という事もあり咄嗟に左腕を上げて
猿の口に突っ込ませた。同時に走る激痛、このまま食いちぎられそうなほどの痛みに耐え
このまま腕を噛み切ろうとしている猿の頭部に向かって全力で石を何度も叩きつけた。
【ブオオオオオオオ!?】
激痛に体を捩り噛んでいた左腕を離そうとするが、そうさせないために全体重をかけて
猿を押しつぶす。自由になっている両手両足の爪で全身が切り裂かれるが構わず攻撃を続けていく。
お互いに激痛に耐えながら攻撃していたが、どうやら此方の執念の方が上回ったらしい。
最後に背中を全力で引き裂かれたが、それを最後に猿の動きが止まった。
【ギュェエエエエエ!?】
人間ならそれで死んでたかもだが、猿・・・モンスターなら死んだふりしてる可能性を考慮して
構わず頭部を叩き続けていると再び動き出し、今度こそ動きが止まる。
やはり死んだふりしていたようだ。 石で叩き続けていた頭部は血だらけで頭蓋骨を破壊し脳にまで
達していたらしい。 流石に脳に直接攻撃されれば猿も死ぬだろう。
まぁ・・・自分もそろそろ死にそうなのだが・・・
これで次生き返ったらもう少し強くなっていると助かるなと思いつつ、
そのまま意識を失った。
―続く
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