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ich rede nichts(私は語らない)
愚かさの報い
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愛に生きる女? 褒めているようで、決して褒めていないのがとてもよく分かるわね。常に自身を律するオットー・フォン・ハプスブルクとはまるで違う、と言いたいのでしょう。その場の感情に囚われて我を忘れて、道を踏み外したのを美しい言葉で表しただけよ。貴方はもちろん私の生涯を調べてきたのでしょうし、私を恥じ入らせて悔い改めさせるような「証拠」もたくさん用意してきたのでしょうね。私が上手く話をこしらえたものだから、口を挟む隙を見つけられなかっただけで。何もかも計画通りだったなんてあり得ないのに……本人の証言というだけで信じてしまうなんて、迂闊ではないのかしら。
開き直ったのかしら、遠慮がなくなってきたわね。ええ、子供たちのことを持ち出されると本当に辛いわ。離婚裁判であれほど激しく親権を争ったのに、成長した子供たちは結局父親のもとへ行ってしまったのだから。ゴルディと家族ぐるみの交流があったのは事実だけれど、母の交際相手としてはまた話は別だったのでしょうね。彼の思想が受け入れがたかったのもあるし、私が父親以外の男性に惹かれたのを快く思わなかったからでもあるでしょう。私自身の両親のことを思えば、その気持ちも分からないでもないのだけれど。私だって、父が母以外の女性と死を選んだのも、母が新しい方と添い遂げられたことも、とても悲しく辛く、理不尽に感じられたもの。
貴方はきっと、私は報いを受けたのだと言いたがるのでしょうね。もっとも近くにいる子供たちは、母親の振る舞いをよく見ていたのだと。恋に盲目になって怪しげな男に入れあげて、子供たちをおろそかにしたから見捨てられたのだ、と。ゴルディは貴族以上に貴族らしい──オットー・フォン・ハプスブルクにもきっと劣らない紳士だったということを、子供たちは最後まで信じ切れていなかったのかもしれないわね。
ねえ、貴方は三男のルドルフが若くして死んでしまったのもきっと知っているのよね。自動車事故だったわ。あの子は、レーサーだったのよ。当時のことだから、今よりももっとずっと危険なスポーツだったのに。息子が死に惹かれるようにスピードを求めたのは、私のせいだったのかしら。オットーとの不仲に、ゴルディとの関係に……私の行いが、あの子の精神を不安定にしてしまったのかしら。私の祖母や父から伝わる狂気の血のせいになんてできない、もっと身近な原因のせいでルドルフは死んでしまったのだと、私にはそうとしか思えないのよ。それに何より、ルドルフはいつの間にかナチスに入党していた。それを私たちが知ったのは、彼が亡くなってからだったわ……。保身のためや周囲に流されてのことだったらまだ良いけれど、それもまた私への反発だったのかどうか──分からないの。だから私は、すべて私のせいだと思うことしかできないわ。きっと、母が私に感じたのもこんな感情なのでしょうね。血を分けた子に手ひどく裏切られて、見捨てられたような。
そう、だから、貴方に何か言われるまでもなく、私はとっくに、そして十分に打ちのめされていた。報いを受けていた。自身の過ちと愚かさを、嫌というほど突き付けられていたのよ。それでも後悔していないのかどうか──ああ、貴方は本当に容赦しないのね。ええ、そう問われて頷くのは、さっきよりは難しいわね。ねえ、でも、私がそうと認めたとして、貴方は信じて悦に入ることができるのかしら。私はたくさん嘘を吐いてきたと、打ち明けたばかりだというのに。
開き直ったのかしら、遠慮がなくなってきたわね。ええ、子供たちのことを持ち出されると本当に辛いわ。離婚裁判であれほど激しく親権を争ったのに、成長した子供たちは結局父親のもとへ行ってしまったのだから。ゴルディと家族ぐるみの交流があったのは事実だけれど、母の交際相手としてはまた話は別だったのでしょうね。彼の思想が受け入れがたかったのもあるし、私が父親以外の男性に惹かれたのを快く思わなかったからでもあるでしょう。私自身の両親のことを思えば、その気持ちも分からないでもないのだけれど。私だって、父が母以外の女性と死を選んだのも、母が新しい方と添い遂げられたことも、とても悲しく辛く、理不尽に感じられたもの。
貴方はきっと、私は報いを受けたのだと言いたがるのでしょうね。もっとも近くにいる子供たちは、母親の振る舞いをよく見ていたのだと。恋に盲目になって怪しげな男に入れあげて、子供たちをおろそかにしたから見捨てられたのだ、と。ゴルディは貴族以上に貴族らしい──オットー・フォン・ハプスブルクにもきっと劣らない紳士だったということを、子供たちは最後まで信じ切れていなかったのかもしれないわね。
ねえ、貴方は三男のルドルフが若くして死んでしまったのもきっと知っているのよね。自動車事故だったわ。あの子は、レーサーだったのよ。当時のことだから、今よりももっとずっと危険なスポーツだったのに。息子が死に惹かれるようにスピードを求めたのは、私のせいだったのかしら。オットーとの不仲に、ゴルディとの関係に……私の行いが、あの子の精神を不安定にしてしまったのかしら。私の祖母や父から伝わる狂気の血のせいになんてできない、もっと身近な原因のせいでルドルフは死んでしまったのだと、私にはそうとしか思えないのよ。それに何より、ルドルフはいつの間にかナチスに入党していた。それを私たちが知ったのは、彼が亡くなってからだったわ……。保身のためや周囲に流されてのことだったらまだ良いけれど、それもまた私への反発だったのかどうか──分からないの。だから私は、すべて私のせいだと思うことしかできないわ。きっと、母が私に感じたのもこんな感情なのでしょうね。血を分けた子に手ひどく裏切られて、見捨てられたような。
そう、だから、貴方に何か言われるまでもなく、私はとっくに、そして十分に打ちのめされていた。報いを受けていた。自身の過ちと愚かさを、嫌というほど突き付けられていたのよ。それでも後悔していないのかどうか──ああ、貴方は本当に容赦しないのね。ええ、そう問われて頷くのは、さっきよりは難しいわね。ねえ、でも、私がそうと認めたとして、貴方は信じて悦に入ることができるのかしら。私はたくさん嘘を吐いてきたと、打ち明けたばかりだというのに。
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