18 / 31
四章 暗闇に差し伸べられた手
狼の感覚を研ぎ澄ませ
しおりを挟む
真上家からの招待は、クラウスにとっては願ってもないものであると同時に、たいへん疑わしいものでもあった。
(夜の貴婦人──あの少女のことを探るには、確かに好機だが。俺にいったい何の用だ……?)
外交官として日本に滞在している各国の貴族は、この国の皇族や華族と華やかに交流しているらしい。
だが、彼の立場は一介の旅行者に過ぎない。友人であるヘルベルトに、日本が過ごしやすい場所だと聞いて、試しに訪れただけで。政治的な人脈がある訳でも、提携をもちかけるような事業を手がけている訳でもない。
(令嬢にも、婚約者がいるということだし……)
真上家に向かう馬車に揺られながら、クラウスは軽く顔を顰めた。彼の「貴婦人」にそっくりな、けれど中身はまったく違う娘を思い出したのだ。
国を越えた結婚は──まあ、ない訳ではないが。彼の容姿は、どうやら日本の令嬢にも好ましく見えるようだが。
それでも、すでにいる婚約者を取り換えることはないだろう。何より、真上暁子嬢は異国の言葉にも文化にもまったく興味がないようだった。
(まあ、良い。行けば分かるさ)
クラウスが溜息を吐いた時──馬車は、ちょうど真上家の門を潜るところだった。
* * *
真上邸は、東京の街並みとは打って変わった完全な西洋風の建物だった。広い庭があるため、外の木造の家々は視界に入って来ない。だから、馬車から降りた瞬間、クラウスは祖国ドイツの田舎に戻ったような錯覚に陥った。
「ようこそお出でくださいました、シャッテンヴァルト伯爵閣下」
なのに、彼を出迎えるのは黒髪黒目の日本人の使用人で、口にするドイツ語もぎこちないから不思議な感覚になる。
「招待いただき、感謝している。──日本語は勉強しているので、無理をなさらなくても結構」
「それは、恐れ入ります」
クラウスの日本語も、きっと当地の者には違和感のある発音なのだろうが。それでも意味は通じたらしく、使用人は明らかに安堵の表情を見せた。
(これも、あの令嬢のお陰だな)
次こそは彼の夜の貴婦人とまともに意思疎通したい、という一念で、クラウスは日本語の勉強に力を入れることにしたのだ。ヘルベルトの協力もあって、ひと月もしない間になかなか上達したのではないかと思う。
前提として、そもそも人の姿で会えないと、声を出したり筆談を試みたりもできないのだが──今日は、せめてあの令嬢の匂いだけでも捉えることができるだろうか。
大理石造りの暖炉が据えられた応接間に入ると、甲高い少女の声がクラウスの耳に刺さった。
「お久しゅうございますわね、伯爵様! お会いできるのを楽しみにしておりましたわ……!」
「……こちらこそ、暁子様」
貴婦人の手を取って口づけるのは、紳士の作法というものだ。クラウスも当然弁えている。
だが、当然のような顔で手を突き出されるのは良い気分ではなかった。
暁子の手は白く滑らかで、あの令嬢の荒れたそれとはまるで違うからなおのこと。美しく整っているからこそ、彼が想う女性ではないと突き付けられるようだった。
「当家に外国の客人をお招きするのは、実は初めてのことでしてな。粗相がないと良いのですが」
「……美しいお屋敷に、美しい令嬢です。最初の客になれたのは光栄なことです」
真上子爵本人に、その隣には鹿鳴館でも言葉を交わした新城春彦という青年もいる。
クラウスのほかに招待客はいないらしい。まるで、身内の席に彼だけが紛れ込んだようだ。
(外国人をもてなす練習台に、さほどの地位も立場もない若造が選ばれた、とかいうことか……?)
緊張した面持ちで茶菓子を供する女性の使用人を横目に、クラウスは考える。日本は、まだ異国との付き合いに慣れていない。多少失敗をしても問題がなさそうな彼を相手に予行演習しておきたい、ということもあり得るだろうか。
(それならそれで、構わないが……)
茶器は、欧州から取り寄せたらしい繊細な磁器。菓子は、屋敷の中で焼いたらしく、まだ温もりを残している。
不慣れな様子はありつつも、基本的には和やかで心地良い茶会になりそうではあったのだが──
「伯爵様──クラウス様とお呼びしてよろしくて? 日本でどこかお出かけになりたいところはありますの? 鎌倉とか日光とか、近場にも名所がありますのよ。ご案内して差し上げたいですわ!」
許可を得るのを待たずに彼の名を勝手に呼び、一方的にまくし立てる暁子は押しつけがましく鬱陶しかった。クラウスが日本語を聞き取れているか否かも気にしていないように見える。
「そうですね。あちこち足を延ばしたいとは思っていますが」
仮面のような笑みを顔に貼り付けて、菓子を味わう──クラウスの胸の中で、狼が唸る。
(うるさいな……食い殺してやろうか)
彼の牙なら、こんな細い首などひと噛みだ、と──残酷な想像に、一瞬とはいえ酔ったことに、自分自身で驚いてしまう。口の中に湧いた、幻の血を洗い流すべく、クラウスは慌てて茶を飲み干した。
(これでは、迫害されるのも当然の獣じゃないか……!)
人間として節度ある振る舞いをしなければ、と自分に言い聞かせて、クラウスは春彦に話しかけることにした。この青年が、この中では一番ドイツ語に堪能なようだから。
「──婚約者のいるお方とふたりきり、という訳にはいかないでしょう。どうせなら誰か一緒に──真上家には、同年代の方はほかにはいらっしゃらないのですか……?」
それに、春彦は彼の夜の貴婦人と一緒にいたことがある。
あれだけ似ているのだから、あの女性は、暁子の姉妹か従姉妹か、とにかく近しい親族ではないのだろうか。春彦の反応が、何かの手掛かりにならないだろうか。
「あいにく、真上家には暁子以外の御子はおりません。もうひとり娘でもいたら、貴国との──貴家とのご縁もより深まったかもしれませんが」
「……そうですか。残念です」
春彦のにこやかな笑顔に綻びは見えなかった。いっぽうで、そのもの言いは、あの夜の女性の存在をクラウスの目の前にちらつかせているようでもあった。
(食えない男だ)
ほんの少し──気付かれないていどに、クラウスは眼差しを鋭くして春彦を睨む。獲物を狙う、狼の目つきになっていることだろう。
強く賢い獣の血を昂ぶらせて、五感を研ぎ澄ませて相手の隙を窺うのが、彼の家の流儀だった。目に見える兆候だけではない、嘘や偽りといった悪巧み、それにともなう緊張や興奮が、匂いとして感じられることもある。
「まあ、ひとり娘だからこそ、私は婿に迎えていただけるのですが」
「春彦兄様は、私の言うことは何でも聞いてくれますのよ。だって、私のお陰で真上子爵を継げるのですもの!」
高慢に胸を張る婚約者に苦笑を向ける春彦は、爽やかな好青年そのものだった。だが──クラウスの鼻に届く匂いは、違う。
(なんだ、この──腐ったような悪臭は!?)
まるで、何かの死体が部屋の中に投げ込まれたようだった。
鋭敏になった嗅覚が感知した耐え難い臭いは、春彦が秘めた感情なのか、悪意ある計画なのか。
(冷静に。顔には出してはならない……)
素知らぬ顔で嗅ぎ分けなければ、とは思うのだが。悪臭への嫌悪が先に立って、クラウスは思わず顔を背け、腰を浮かしてしまう。
「どうかなさいましたか?」
突然立ち上がった客人に、真上子爵は怪訝そうな表情をした。惚けているのだろうか、それとも、何も気付いていないのか。
「いえ……何も……」
いずれにしても、クラウスの鼻について悟られてはならないし、真上家の内情を探るには怪しまれてならない。
だが──余所を向いたことで、彼の五感はまた別の音と匂いを捉えていた。どちらも、彼にとっては放っておけないものだった。
「──失礼」
短く言い捨てるなり、クラウスは真上子爵たちの答えを待たずに応接間から大股に退出した。
「伯爵閣下、あの──」
「どこへいらっしゃるの!?」
子爵の狼狽える声に、暁子の耳障りな声がうるさい。だが、一度耳が拾った音がする方向を、クラウスはもはや聞き逃しはしない。
微かな鈴の音は、彼の夜の貴婦人がなぜか足首につけていたもの。それに、同族の狼を思わせる、どこか懐かしい匂いもした。
間違いなく、あの少女はこの屋敷のどこかにいるのだ。
(夜の貴婦人──あの少女のことを探るには、確かに好機だが。俺にいったい何の用だ……?)
外交官として日本に滞在している各国の貴族は、この国の皇族や華族と華やかに交流しているらしい。
だが、彼の立場は一介の旅行者に過ぎない。友人であるヘルベルトに、日本が過ごしやすい場所だと聞いて、試しに訪れただけで。政治的な人脈がある訳でも、提携をもちかけるような事業を手がけている訳でもない。
(令嬢にも、婚約者がいるということだし……)
真上家に向かう馬車に揺られながら、クラウスは軽く顔を顰めた。彼の「貴婦人」にそっくりな、けれど中身はまったく違う娘を思い出したのだ。
国を越えた結婚は──まあ、ない訳ではないが。彼の容姿は、どうやら日本の令嬢にも好ましく見えるようだが。
それでも、すでにいる婚約者を取り換えることはないだろう。何より、真上暁子嬢は異国の言葉にも文化にもまったく興味がないようだった。
(まあ、良い。行けば分かるさ)
クラウスが溜息を吐いた時──馬車は、ちょうど真上家の門を潜るところだった。
* * *
真上邸は、東京の街並みとは打って変わった完全な西洋風の建物だった。広い庭があるため、外の木造の家々は視界に入って来ない。だから、馬車から降りた瞬間、クラウスは祖国ドイツの田舎に戻ったような錯覚に陥った。
「ようこそお出でくださいました、シャッテンヴァルト伯爵閣下」
なのに、彼を出迎えるのは黒髪黒目の日本人の使用人で、口にするドイツ語もぎこちないから不思議な感覚になる。
「招待いただき、感謝している。──日本語は勉強しているので、無理をなさらなくても結構」
「それは、恐れ入ります」
クラウスの日本語も、きっと当地の者には違和感のある発音なのだろうが。それでも意味は通じたらしく、使用人は明らかに安堵の表情を見せた。
(これも、あの令嬢のお陰だな)
次こそは彼の夜の貴婦人とまともに意思疎通したい、という一念で、クラウスは日本語の勉強に力を入れることにしたのだ。ヘルベルトの協力もあって、ひと月もしない間になかなか上達したのではないかと思う。
前提として、そもそも人の姿で会えないと、声を出したり筆談を試みたりもできないのだが──今日は、せめてあの令嬢の匂いだけでも捉えることができるだろうか。
大理石造りの暖炉が据えられた応接間に入ると、甲高い少女の声がクラウスの耳に刺さった。
「お久しゅうございますわね、伯爵様! お会いできるのを楽しみにしておりましたわ……!」
「……こちらこそ、暁子様」
貴婦人の手を取って口づけるのは、紳士の作法というものだ。クラウスも当然弁えている。
だが、当然のような顔で手を突き出されるのは良い気分ではなかった。
暁子の手は白く滑らかで、あの令嬢の荒れたそれとはまるで違うからなおのこと。美しく整っているからこそ、彼が想う女性ではないと突き付けられるようだった。
「当家に外国の客人をお招きするのは、実は初めてのことでしてな。粗相がないと良いのですが」
「……美しいお屋敷に、美しい令嬢です。最初の客になれたのは光栄なことです」
真上子爵本人に、その隣には鹿鳴館でも言葉を交わした新城春彦という青年もいる。
クラウスのほかに招待客はいないらしい。まるで、身内の席に彼だけが紛れ込んだようだ。
(外国人をもてなす練習台に、さほどの地位も立場もない若造が選ばれた、とかいうことか……?)
緊張した面持ちで茶菓子を供する女性の使用人を横目に、クラウスは考える。日本は、まだ異国との付き合いに慣れていない。多少失敗をしても問題がなさそうな彼を相手に予行演習しておきたい、ということもあり得るだろうか。
(それならそれで、構わないが……)
茶器は、欧州から取り寄せたらしい繊細な磁器。菓子は、屋敷の中で焼いたらしく、まだ温もりを残している。
不慣れな様子はありつつも、基本的には和やかで心地良い茶会になりそうではあったのだが──
「伯爵様──クラウス様とお呼びしてよろしくて? 日本でどこかお出かけになりたいところはありますの? 鎌倉とか日光とか、近場にも名所がありますのよ。ご案内して差し上げたいですわ!」
許可を得るのを待たずに彼の名を勝手に呼び、一方的にまくし立てる暁子は押しつけがましく鬱陶しかった。クラウスが日本語を聞き取れているか否かも気にしていないように見える。
「そうですね。あちこち足を延ばしたいとは思っていますが」
仮面のような笑みを顔に貼り付けて、菓子を味わう──クラウスの胸の中で、狼が唸る。
(うるさいな……食い殺してやろうか)
彼の牙なら、こんな細い首などひと噛みだ、と──残酷な想像に、一瞬とはいえ酔ったことに、自分自身で驚いてしまう。口の中に湧いた、幻の血を洗い流すべく、クラウスは慌てて茶を飲み干した。
(これでは、迫害されるのも当然の獣じゃないか……!)
人間として節度ある振る舞いをしなければ、と自分に言い聞かせて、クラウスは春彦に話しかけることにした。この青年が、この中では一番ドイツ語に堪能なようだから。
「──婚約者のいるお方とふたりきり、という訳にはいかないでしょう。どうせなら誰か一緒に──真上家には、同年代の方はほかにはいらっしゃらないのですか……?」
それに、春彦は彼の夜の貴婦人と一緒にいたことがある。
あれだけ似ているのだから、あの女性は、暁子の姉妹か従姉妹か、とにかく近しい親族ではないのだろうか。春彦の反応が、何かの手掛かりにならないだろうか。
「あいにく、真上家には暁子以外の御子はおりません。もうひとり娘でもいたら、貴国との──貴家とのご縁もより深まったかもしれませんが」
「……そうですか。残念です」
春彦のにこやかな笑顔に綻びは見えなかった。いっぽうで、そのもの言いは、あの夜の女性の存在をクラウスの目の前にちらつかせているようでもあった。
(食えない男だ)
ほんの少し──気付かれないていどに、クラウスは眼差しを鋭くして春彦を睨む。獲物を狙う、狼の目つきになっていることだろう。
強く賢い獣の血を昂ぶらせて、五感を研ぎ澄ませて相手の隙を窺うのが、彼の家の流儀だった。目に見える兆候だけではない、嘘や偽りといった悪巧み、それにともなう緊張や興奮が、匂いとして感じられることもある。
「まあ、ひとり娘だからこそ、私は婿に迎えていただけるのですが」
「春彦兄様は、私の言うことは何でも聞いてくれますのよ。だって、私のお陰で真上子爵を継げるのですもの!」
高慢に胸を張る婚約者に苦笑を向ける春彦は、爽やかな好青年そのものだった。だが──クラウスの鼻に届く匂いは、違う。
(なんだ、この──腐ったような悪臭は!?)
まるで、何かの死体が部屋の中に投げ込まれたようだった。
鋭敏になった嗅覚が感知した耐え難い臭いは、春彦が秘めた感情なのか、悪意ある計画なのか。
(冷静に。顔には出してはならない……)
素知らぬ顔で嗅ぎ分けなければ、とは思うのだが。悪臭への嫌悪が先に立って、クラウスは思わず顔を背け、腰を浮かしてしまう。
「どうかなさいましたか?」
突然立ち上がった客人に、真上子爵は怪訝そうな表情をした。惚けているのだろうか、それとも、何も気付いていないのか。
「いえ……何も……」
いずれにしても、クラウスの鼻について悟られてはならないし、真上家の内情を探るには怪しまれてならない。
だが──余所を向いたことで、彼の五感はまた別の音と匂いを捉えていた。どちらも、彼にとっては放っておけないものだった。
「──失礼」
短く言い捨てるなり、クラウスは真上子爵たちの答えを待たずに応接間から大股に退出した。
「伯爵閣下、あの──」
「どこへいらっしゃるの!?」
子爵の狼狽える声に、暁子の耳障りな声がうるさい。だが、一度耳が拾った音がする方向を、クラウスはもはや聞き逃しはしない。
微かな鈴の音は、彼の夜の貴婦人がなぜか足首につけていたもの。それに、同族の狼を思わせる、どこか懐かしい匂いもした。
間違いなく、あの少女はこの屋敷のどこかにいるのだ。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
紅屋のフジコちゃん ― 鬼退治、始めました。 ―
木原あざみ
キャラ文芸
この世界で最も安定し、そして最も危険な職業--それが鬼狩り(特殊公務員)である。
……か、どうかは定かではありませんが、あたしこと藤子奈々は今春から鬼狩り見習いとして政府公認特A事務所「紅屋」で働くことになりました。
小さい頃から憧れていた「鬼狩り」になるため、誠心誠意がんばります! のはずだったのですが、その事務所にいたのは、癖のある上司ばかりで!? どうなる、あたし。みたいな話です。
お仕事小説&ラブコメ(最終的には)の予定でもあります。
第5回キャラ文芸大賞 奨励賞ありがとうございました。
『神山のつくば』〜古代日本を舞台にした歴史ロマンスファンタジー〜
うろこ道
恋愛
【完結まで毎日更新】
時は古墳時代。
北の大国・日高見国の王である那束は、迫る大和連合国東征の前線基地にすべく、吾妻の地の五国を順調に征服していった。
那束は自国を守る為とはいえ他国を侵略することを割り切れず、また人の命を奪うことに嫌悪感を抱いていた。だが、王として国を守りたい気持ちもあり、葛藤に苛まれていた。
吾妻五国のひとつ、播埀国の王の首をとった那束であったが、そこで残された后に魅せられてしまう。
后を救わんとした那束だったが、后はそれを許さなかった。
后は自らの命と引き換えに呪いをかけ、那束は太刀を取れなくなってしまう。
覡の卜占により、次に攻め入る紀国の山神が呪いを解くだろうとの託宣が出る。
那束は従者と共に和議の名目で紀国へ向かう。山にて遭難するが、そこで助けてくれたのが津久葉という洞窟で獣のように暮らしている娘だった。
古代日本を舞台にした歴史ロマンスファンタジー。

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜
束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。
家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。
「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。
皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。
今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。
ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……!
心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。
魔法使いの国で無能だった少年は、魔物使いとして世界を救う旅に出る
ムーン
ファンタジー
完結しました!
魔法使いの国に生まれた少年には、魔法を扱う才能がなかった。
無能と蔑まれ、両親にも愛されず、優秀な兄を頼りに何年も引きこもっていた。
そんなある日、国が魔物の襲撃を受け、少年の魔物を操る能力も目覚める。
能力に呼応し現れた狼は少年だけを助けた。狼は少年を息子のように愛し、少年も狼を母のように慕った。
滅びた故郷を去り、一人と一匹は様々な国を渡り歩く。
悪魔の家畜として扱われる人間、退廃的な生活を送る天使、人との共存を望む悪魔、地の底に封印された堕天使──残酷な呪いを知り、凄惨な日常を知り、少年は自らの能力を平和のために使うと決意する。
悪魔との契約や邪神との接触により少年は人間から離れていく。対価のように精神がすり減り、壊れかけた少年に狼は寄り添い続けた。次第に一人と一匹の絆は親子のようなものから夫婦のようなものに変化する。
狂いかけた少年の精神は狼によって繋ぎ止められる。
やがて少年は数多の天使を取り込んで上位存在へと変転し、出生も狼との出会いもこれまでの旅路も……全てを仕組んだ邪神と対決する。
紀尾井坂ノスタルジック
涼寺みすゞ
恋愛
士農工商の身分制度は、御一新により変化した。
元公家出身の堂上華族、大名家の大名華族、勲功から身分を得た新華族。
明治25年4月、英国視察を終えた官の一行が帰国した。その中には1年前、初恋を成就させる為に宮家との縁談を断った子爵家の従五位、田中光留がいた。
日本に帰ったら1番に、あの方に逢いに行くと断言していた光留の耳に入ってきた噂は、恋い焦がれた尾井坂男爵家の晃子の婚約が整ったというものだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】辺境に飛ばされた聖女は角笛を吹く〜氷河の辺境伯様の熱愛で溶けそうです
香練
恋愛
ステラは最も優れた聖女、“首席聖女”、そして“大聖女”になると期待されていた。
後妻と義姉から虐げられ大神殿へ移り住み、厳しい修行に耐えて迎えた聖女認定式。
そこで神から与えられた“聖具”は角笛だった。
他の聖女達がよくある楽器を奏でる中、角笛を吹こうとするが音が出ない。
“底辺聖女”と呼ばれるようになったステラは、『ここで角笛を教えてもらえばいい』と辺境伯領の神殿へ異動を命じられる。『王都には二度と戻れない』とされる左遷人事だった。
落ち込むステラを迎えたのは美しい自然。
しかし“氷河”とも呼ばれる辺境伯のクラヴィは冷たい。
それもあるきっかけで変わっていく。孤独で不器用な二人の恋物語。
※小説家になろうでも投稿しています。転載禁止。●読者様のおかげをもちまして、2025.1.27、完結小説ランキング1位、ありがとうございます。
よんよんまる
如月芳美
キャラ文芸
東のプリンス・大路詩音。西のウルフ・大神響。
音楽界に燦然と輝く若きピアニストと作曲家。
見た目爽やか王子様(実は負けず嫌い)と、
クールなヴィジュアルの一匹狼(実は超弱気)、
イメージ正反対(中身も正反対)の二人で構成するユニット『よんよんまる』。
だが、これからという時に、二人の前にある男が現われる。
お互いやっと見つけた『欠けたピース』を手放さなければならないのか。
※作中に登場する団体、ホール、店、コンペなどは、全て架空のものです。
※音楽モノではありますが、音楽はただのスパイスでしかないので音楽知らない人でも大丈夫です!
(医者でもないのに医療モノのドラマを見て理解するのと同じ感覚です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる