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第二十章 帝国の覇権の行方。

第413話 いざ、帝国軍との雨中決戦③。

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 日が落ちたのか、空に雲が垂れ込んだのか闇が濃くなりつつあった。それに伴ない闇の空を仰ぐと、空から雨粒が次第に落ちてきたと思えば、空はすっかり雨と闇に包まれて、視界は効かなかった。

 降りしきる雨を見上げながら、オオガミは呟いた。傍から見ると、ボウっと空をみている様にしか見えなかっただろう。
そんなオオガミが実際何をしていたかというと、空を見ているのではなく、目に映るマップに映っている、帝国軍の動きを見ていたのである。

 実際の所、帝国軍は雨の中で動きが無く当初向こうの言った通り朝まで待機している様に見えた。
 だが、彼の勘が朝までの間に必ず動きがあるといっているのだ。
それもあり、夜更けの遅いこの時間になっても珍しく私は仕事をしている訳だ。

「如何致しましたか、閣下?」

後ろから聞き慣れたレナードの声が問いかけて来た。

「なんだ、レナードか。お前の方こそこんな時間までどうしたのさ?」
「いえ。この夜更けに何をされているのかと思いまして。如何されましたか。この雨中の空に向かって見上げて。」
「・・・お前だから言うが、私は帝国軍の言う事など信用してはいない。その積もりで話を聞いてくれ。だから念の為に帝国軍の動きを見ていた訳だ。今の所目立った動きは向こうの言った通り見えて来ないが、私の勘が油断するなと言っている。でなければ寝ていたよ(笑)。」

 私の言葉に少し驚きを見せている様子だ。私が帝国軍の言う所を信じてない事に驚きを示し多様だ。

「では、帝国軍の動きに変化はあったのですか?」
「いや。今の所は無いね。」
「流石に向こうは小勢なので、仕掛けてくる事はやはり無いのでは。そろそろ夜も明ける時間帯ですよ。」
「確かに普通はそう思うよな。だから勘だと言うのさ。」
「しかし、あと五時間もすれば約束の時間になりますが?」
「レナードの言いたい事も分かるが、ここは私の我儘わがままを見逃して欲しいな。」
「まあ、我々はどちらでも構わないのですが、兵には予定通りに交代で休みを取らせていますから、お好きになさっても構いませんよ。」
「そう言ってくれると、気が楽になるよ。ぬっ?」

 そうオオガミが呻き声を発した途端に真剣な顔をして再び空を睨みつけた。

「閣下?急にどうしましたか?」

空を睨みつけたまま、レナードに応えた。

「レナード、全部隊を起こせ。帝国軍が動き出したぞ。やっぱり奇襲を掛けてきたか。あと、本陣にも伝令を出せ。帝国軍に動きがあると。解ったか。」
「はっ、早速に、では。」

そう答えて本陣のある天幕に伝令を伝え、部隊に起床して帝国軍を迎撃するように伝える様に伝令を走らせる。

「閣下、伝令を走らせました。その後の帝国の動きは、どうなるでしょうか?」

レナードは、帝国軍のその後の動きが気になるのか、私に聞き返してくる。

「帝国軍は暗闇に紛れて、陣地を北に移動しているようだね。多分止まった時が、攻撃の瞬間だろうね。まあ、私にはどこに移動しているのかバッチリ分かっているけどね。」


そんなやり取りをしている間に、帝国軍の移動は進んでいく。
味方の起床も遅れながらも進んでいく。コチラの起床が済み、隊列を組む頃には、既に帝国軍は東の帝都の前からは移動しており、我々を回り込んで北側の位置へ移動をし終わりそうだった。
だが、その動きは私にはしっかり捕捉されていたのであった。
オオガミからの指示によって、敵方に知られない様に陣形を移動させ、北側に迎え撃つように槍を向けた。

コチラの陣形が整ってから二十分後、闇の中に響き渡る帝国軍の鬨の声ときのこえが上がった。

マップで帝国軍との距離を測りながらも、相手が戻れない距離まで進むのを待ち、空に向かって大きな光球を幾つも打ち上げた。
実際はライトの魔法だが、屋外用に魔力を通常より多く込めて、魔法を打ち上げた。お陰で昼の様に明るくなり、敵方の驚く顔までハッキリと明かりに見て取れた。
光りの下に、コチラの構えた槍に驚く顔が浮かんでいるのが見て取れた。鬨の声は魔法の光りで驚きに掻き消されたのか、帝国軍は驚きに満ちていたようだ。

「槍兵部隊は構えて、前進して練習した様に敵を槍で叩け。」

待ち構えていた槍部隊は、空の灯りの下で訓練の通り長槍を構えて振り上げなから声を上げつつ、敵部隊に向かって突っ込んでいった。そして、敵と相対すると何百回となく練習した通リ、長槍を敵の頭上から振り下ろしそれから突いた。そして再び頭上に振り上げ再び叩き下ろす事を繰り返した。コチラの思惑の通り、敵は振り下ろした槍を避けるため態勢が崩れて居る所に、正面から槍の穂先を喰らいうめき声を上げなから、バタバタと倒れて行っく。
敵を倒すことで、興奮してきたのか、陣形が少しずつ崩れていったが、各小隊長が声を枯らしながらも突出する兵士を抑える声で何とか、陣形を崩す事無く維持させている。

 こうして正面の敵を抑えつつ敵の前進を防いだ。

 元々武器のリーチ差とは、武器の取り回しを考えて決められている。槍は長ければ良いというものではないのだ。五センチ十センチは体格差による、個人差の範囲だが、人の体格が十年や二十年で急激に変わる物ではないのと同じく、生長い時間をかけて今の長さになったものである。
それを一メートル弱伸ばした槍を、使い熟せるまでに訓練するのは大変だったな。
意外に思うかも知れないが、槍とは長くなるだけ重くなる武器である。何しろ槍先に鉄製の穂先が付いているのだからね。普通に振っていても、手元にはそれなりの重さが掛かる、長くなる程槍の重さも重くなるのだ。

 訓練の長い期間をかけて、この重さに耐える筋力を養っわけだ。
実際、長槍部隊のお陰で帝国軍は足を止められてしまい、開戦した時の勢いは殺されてしまって、今では立ち止まって長槍に対峙しようとしている。

 雨中の戦闘は、まずは帝国軍の先制攻撃を見破り、こちらが優位に進めていた。




 

 

































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