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第二十章 帝国の覇権の行方。

第405話 真心は饒舌に勝るか。

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「それは閣下お一人の考えでしょうか?この場だけの言い逃れの言葉ではないと何故言えるのですか?それを我々に信用させる事が出来なければ、我々を信じさせその命令に従える事は出来ないでしよう。如何ですか?」

 ハンナはそう言って、公爵の眼をじっと見詰めた。
さて、公爵は何と言うのかな。


 どうやらこの男が、反乱の中心人物のようだ。筆頭執政官と言うから、内政における現場責任者なんだろう。
見た目は痩せたオッサンで、ヤツレて疲れた顔をした男だ。その癖目の輝きだけは、強く光っているのが見えた。今も、食い付くかのように公爵に迫っていた。この手の人間は、口先だけの言葉には見向きもしないだろう。さて、公爵はどう対応するのかな?


「まずこれだけは言っておきたい。私が挙兵したのは、特別皇帝になりたいとか、人の上に立って命令したいとかでは全く無いと言っておこう。ここに来たのも、今の政府を倒して帝国の臣民がまともな生活を遅れるようしたあとに、今度はここを討伐対象としたくない為だ。いつまでも反乱軍でいられない事は分かっているだろう?」

公爵はそうハンナ・ガレーシャに話しかけた。
元々反乱を長期間続ける積りは無かったのか、ハンナ筆頭執政官は公爵の言葉に、何ら言い返す事はなく、ただ何も言わずに聞いている。

「確かに、皇帝の地位にある者が、治めている国を乱すのはもっての外だ。ましてや国民を食い物にして、己が贅沢な暮しを送るなんて、その様な者には皇帝としての資格が有るとは最早言えないだろう。そして臣民にそんな暮しを強いている中で、改めるでもなく他国に戦を仕掛けることに夢中になって、自国内で反乱を引き起こし自力で鎮圧さえ出来無い。このような時に反乱者同士が勢力争いなんかするのは、政府側の思うツボだと思わないか?ハンナ殿は、そこをどう思っている?」
「私は・・・。私個人で思う所は有りますが、まずは政府が一日でも早く民達の窮状に気が付いて、今何をしなくてはならないかき付いて欲しいだけです。私自身は権力なんか欲しくはありませんが、食べる物がなく飢えて倒れる者が今居る事を分かってもらいたい。只それだけです。」

目の前に立つ男は、権力欲ではなくただ目の前の平民を大事にしたいと言う気持ちに溢れているのが、口調から読み取れた。
また、そんな男であれば公爵の言葉も理解しているはずだ。

(まあ最悪、味方に出来なくても敵にはなるまい。作戦としては勝ったな。)

 そんな事を考えながら、二人の話を聞いていた。只でさえ味方が多いわけでない所に更に敵を増やすのは上策ではないだろう。
さて、今の所互いに反発して、物別れにはならずにすみそうだな。

「分かりました。公爵の仰っしゃりたい事も理解できます。後は反乱を実際指揮した者たちを、納得させてくれればあなたの指揮下に入っても良いです。彼等は平民をであり、その平民を率いてこれまでやって来た者たちです。彼等が納得するなら私も従いましょう。宜しいか?」
「良いだろう。何も分からずに従えと言われても、納得行かないだろうしな。分かった会わせて貰おうか?」
「分かりました。今日という訳にはいかないので、改めて明日の朝十時にこの場にて落ち合うという事で宜しいか?」
「分かった。明日の朝十時にここでだな?宜しく頼む。」

こうして今回の話し合いの場では決着を一旦保留とし、明日に改めて実務者協議をすることになった。
さて、今度は平民相手に説得しなくてはいけないが、公爵はどう思っているのだろうか。相手は役人ではないからな。理路整然とは行かないだろうと思う。逆に情に訴えた方が会談は上手く纏まりやすいだろうな。明日の会談がどう転ぶのか、楽しみなことだ。私的には何方になろうが、最終的な敵の数が多いか少ないかだけだからね。大勢に影響は少ないだろうと、判断出来た。何れにしても、二年以内には新政府によって反乱は平定されるだろう。
私は、今回の会談は成功だろうと判断した。


 明日の会談の為、今日はここで夜営をすることになった。
このまま進軍すれば、領都のバイデンに近くなる。そうなればやはり話し合いは嘘で、結局政府と同じく、反対する者は力で捻じ伏せるのかと思われるだろう。その様な無用な誤解を招きかねないから、ここでの夜営は致し方ないところだろう。

 皆んなの所に一旦戻ると、自然と小隊長たちが会談の行方について、聞きに集まってきた。
どの顔も興味津々である。
レナードが会談について尋ねてきた。

「閣下、会談は如何なりましたか?」
「会談か?取り敢えず、明日改めて会談を行う事になったよ。」
「明日改めてですか・・・。」
「そうだ。」
「・・・閣下。恐らくですが、向こうの代表も、完全には反乱軍の掌握が出来て無いのではと小官には思われるのですが・・・。」

周りに居た隊長達も何人か同意するのかレナードの言葉に頷いていた。

(確かに有り得る話だな。)

私もレナードの意見に同意して、頷きを返した。

「確かにその可能性も有るな。今回は顔見せで、筆頭執政官にとっては、話し合いが出来るかどうかだけ判断したという所か。それなら短時間で会談を切り上げたのも、納得だな。てっきり公爵に、兵隊が欲しいなら、自分で口説けと言っているものだと感違いしてしまったよ。成程、レナードの言うとおりなら、彼には判断出来ないわけだな。納得だ。」
「閣下。ですから、明日の会談は御注意してください。」
「何故だね?」
「話の方向によっては、我々が王国の貴族家の者だと知られる可能性が有るからです。」
「それは嬉しくない話だな。分かった。公爵には釘を差しておこう。それで良いか?」
「宜しいかと。」

周りの隊長達も、ウンウンと頷いて同意している。

 明日の会談は、意外と神経を使う事になりそうだね。




 








 




 
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