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第十九章 ケルン掌握。
幕間102話 ある公爵令嬢の思い付き。
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ここは、ケルンの元王城。私は、この地の総督で父親でもある公爵の娘よ。お父様から今回帝国から離反をするというか、皇帝陛下に反旗を翻すと言われ、その理由をお聞きしたわ。その事で私なりに色々思う事があったので、ここで整理をしたいと思います。
「ふぅ。やっとケルンの生活にも慣れて来た所ね。ケルンに来てから早くも三月(みつき)になるけど、以前はまだ駐留軍とか、先任で派遣されていた前領事だったりが私達家族に対して目を光らせていた人達が居たからかしら、大人しく目立たない様に生活しなさいと、よくお父様お母様からそれこそ煩く言われたわ。結局その領事がその後に早々にお父様に罷免されているし、駐留軍も先日にお父様が雇った冒険者集団がケルンに来たばかりの着いたその日に、あっと言う間に片付けてしまいましたわ。その知らせが先日あったのですが、あんな百人ちょっとしか居ない少人数なのに、一万人近い駐留軍の大人数を相手にあっと言う間に全員を倒してしまうなんて、このお話を聞いた時は信じられませんでしたわ。」
お父様から初めてお話を伺った時に、思わず思い浮かべた言葉です。
「先日その冒険者達のリーダーの方とお話しする機会がありましたけど、案外お若くて私とそんなにお年が違わないようでしたわ。お父様が何故か丁寧な対応をされてましたから、高名な冒険者なのかもしれませんわね。あまり冒険者の世界のことは存じませんが、率いられている方達も皆さん見るからに腕利きの方達の様ですしね。」
部屋のソファーに腰掛けながら、テーブルに置かれたティーカップを手に取り、淹れられたばかりの紅茶の香りを楽しみつつ最近の出来事に思いを馳せ続ける。
「それにしてもあの冒険者達を率いていた彼だけど、気のせいか以前に何処かで会った覚えがあるような気がして仕方無いですわね。詳しくは思い起こせないのですが。それにあんなに若くて冒険者達の統率が出来るのかしら?周りからは不平や不満が出ない様子だから、大丈夫の様だけど。お父様もかなり彼の事を信用しているみたいね。ああ見えて見かけによらずお強いのかしら。あの方のように。」
思わず以前に、一度だけ会った三人連れのリーダーの若者の事を思い出していた。
「まぁ確かに年恰好はあの方と同じ年頃の方の様でしたけど、あの時は黒いマントをしていて白仮面してお顔が分からなかったので、ご本人かどうか判別できないし、本人も初めてお会いしたかのように挨拶されてましたわね。やっぱり彼とは別人なのかしら。」
彼女には判らなかった。その若者が彼女が探している本人だと断定するほどには。その所為か思いがけず会えているとは、気付けずにいるようだ。
まぁ、しっかりと顔つきとか覚えている訳でもなく、すれ違った印象しか残っていないのだから。覚えていない事で彼女を責める事は可哀想とも言えるだろう。
「何れにしても、その内に実力を示してもらえれば、その力量が有る無いも白黒つきますわ。やはりお父様にお願いしてみましょうか。でも、見かけで人を判断するのは良くないと言われるけど、それでも頼りになるのか心配ですわ。それに万一あの方だったら、この機会を逃す訳には行きませんし、確認する為にもやはりお父様にお願いしないと。お顔をしっかりと覚えていない私も悪いのだけど、一度すれちがっただけですし致し方ありませんわね。はー、あの方は今何処に居るのかしら。颯爽とした姿といい、人を率いる事に慣れた態度といい、きっと名のある貴族の方だと思うのだけど。帝国の宮廷にそれらしき方はいなかったですわ。それ所か、私に寄ってくるのは公爵家の後ろ盾を狙って来る方ばかり。ケルンに来てからは減ってきて有り難かった位ですわ。」
思い出から、最近の身近な身の回りの事に愚痴が変わっていたのは、彼女の身を考えると致し方無いと言える。
取り敢えず、早速思い付いた案をお願いするべく父親の公爵にお願いをする為に、父親の仕事部屋の執務室に会いに向かうことにした。
「お父様、少し時間を頂きたいのですけど宜しいかしら?」
執務机にて書類を見ていた公爵は、その言葉に顔を上げる。そこには娘のコーネリアが何かを決心した顔をして私を見詰めていた。
「如何したのかな、そんな思い詰めた顔をして?今は忙しい時だが、お前の悩みやお願い程度の相談を聞くぐらいの余裕はあるよ。一体何かな?」
何時もは大人しい性格で余り私には我儘を言ってこない娘が、思い詰めた顔をして話しかけてきた。一体何事だろうか。
「実はお父様にお願いがあって来ましたの。」
「ほう。願いとは一体何かな?何か買って欲しい物でも有るのかな?余りにも高い物は駄目だよ。」
「いえ、物をお強請りしたいのではなくて、最近新しく雇われた傭兵の方々の実力を見せてもらうために、模擬試合を開催して頂きたいのですが、如何でしょうか?」
「(何かと思えば、伯爵の所の騎士達の力量を見たいとな。気持ちは分からんでもないが、うーん。)・・・どうしてかな?また改めて何故そのような事を言うのかな?」
「だって私達にも関係してくることですし、お父様も実際に目で見てどれ位の力なのか知りたいでしょう?」
「確かに、知りたいかと言われると知りたいが・・・。」
「なら良い機会ですわ。大事になる前に確認しておきましょうよ。」
こうして、お嬢様の思い付きで、オオガミ達の思いも寄らない試合をする事になったのである。
「ふぅ。やっとケルンの生活にも慣れて来た所ね。ケルンに来てから早くも三月(みつき)になるけど、以前はまだ駐留軍とか、先任で派遣されていた前領事だったりが私達家族に対して目を光らせていた人達が居たからかしら、大人しく目立たない様に生活しなさいと、よくお父様お母様からそれこそ煩く言われたわ。結局その領事がその後に早々にお父様に罷免されているし、駐留軍も先日にお父様が雇った冒険者集団がケルンに来たばかりの着いたその日に、あっと言う間に片付けてしまいましたわ。その知らせが先日あったのですが、あんな百人ちょっとしか居ない少人数なのに、一万人近い駐留軍の大人数を相手にあっと言う間に全員を倒してしまうなんて、このお話を聞いた時は信じられませんでしたわ。」
お父様から初めてお話を伺った時に、思わず思い浮かべた言葉です。
「先日その冒険者達のリーダーの方とお話しする機会がありましたけど、案外お若くて私とそんなにお年が違わないようでしたわ。お父様が何故か丁寧な対応をされてましたから、高名な冒険者なのかもしれませんわね。あまり冒険者の世界のことは存じませんが、率いられている方達も皆さん見るからに腕利きの方達の様ですしね。」
部屋のソファーに腰掛けながら、テーブルに置かれたティーカップを手に取り、淹れられたばかりの紅茶の香りを楽しみつつ最近の出来事に思いを馳せ続ける。
「それにしてもあの冒険者達を率いていた彼だけど、気のせいか以前に何処かで会った覚えがあるような気がして仕方無いですわね。詳しくは思い起こせないのですが。それにあんなに若くて冒険者達の統率が出来るのかしら?周りからは不平や不満が出ない様子だから、大丈夫の様だけど。お父様もかなり彼の事を信用しているみたいね。ああ見えて見かけによらずお強いのかしら。あの方のように。」
思わず以前に、一度だけ会った三人連れのリーダーの若者の事を思い出していた。
「まぁ確かに年恰好はあの方と同じ年頃の方の様でしたけど、あの時は黒いマントをしていて白仮面してお顔が分からなかったので、ご本人かどうか判別できないし、本人も初めてお会いしたかのように挨拶されてましたわね。やっぱり彼とは別人なのかしら。」
彼女には判らなかった。その若者が彼女が探している本人だと断定するほどには。その所為か思いがけず会えているとは、気付けずにいるようだ。
まぁ、しっかりと顔つきとか覚えている訳でもなく、すれ違った印象しか残っていないのだから。覚えていない事で彼女を責める事は可哀想とも言えるだろう。
「何れにしても、その内に実力を示してもらえれば、その力量が有る無いも白黒つきますわ。やはりお父様にお願いしてみましょうか。でも、見かけで人を判断するのは良くないと言われるけど、それでも頼りになるのか心配ですわ。それに万一あの方だったら、この機会を逃す訳には行きませんし、確認する為にもやはりお父様にお願いしないと。お顔をしっかりと覚えていない私も悪いのだけど、一度すれちがっただけですし致し方ありませんわね。はー、あの方は今何処に居るのかしら。颯爽とした姿といい、人を率いる事に慣れた態度といい、きっと名のある貴族の方だと思うのだけど。帝国の宮廷にそれらしき方はいなかったですわ。それ所か、私に寄ってくるのは公爵家の後ろ盾を狙って来る方ばかり。ケルンに来てからは減ってきて有り難かった位ですわ。」
思い出から、最近の身近な身の回りの事に愚痴が変わっていたのは、彼女の身を考えると致し方無いと言える。
取り敢えず、早速思い付いた案をお願いするべく父親の公爵にお願いをする為に、父親の仕事部屋の執務室に会いに向かうことにした。
「お父様、少し時間を頂きたいのですけど宜しいかしら?」
執務机にて書類を見ていた公爵は、その言葉に顔を上げる。そこには娘のコーネリアが何かを決心した顔をして私を見詰めていた。
「如何したのかな、そんな思い詰めた顔をして?今は忙しい時だが、お前の悩みやお願い程度の相談を聞くぐらいの余裕はあるよ。一体何かな?」
何時もは大人しい性格で余り私には我儘を言ってこない娘が、思い詰めた顔をして話しかけてきた。一体何事だろうか。
「実はお父様にお願いがあって来ましたの。」
「ほう。願いとは一体何かな?何か買って欲しい物でも有るのかな?余りにも高い物は駄目だよ。」
「いえ、物をお強請りしたいのではなくて、最近新しく雇われた傭兵の方々の実力を見せてもらうために、模擬試合を開催して頂きたいのですが、如何でしょうか?」
「(何かと思えば、伯爵の所の騎士達の力量を見たいとな。気持ちは分からんでもないが、うーん。)・・・どうしてかな?また改めて何故そのような事を言うのかな?」
「だって私達にも関係してくることですし、お父様も実際に目で見てどれ位の力なのか知りたいでしょう?」
「確かに、知りたいかと言われると知りたいが・・・。」
「なら良い機会ですわ。大事になる前に確認しておきましょうよ。」
こうして、お嬢様の思い付きで、オオガミ達の思いも寄らない試合をする事になったのである。
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