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第十八章 帝国大乱。
幕間98話 メイザースの刃。
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俺の名はメイザース。冒険者をしている。この界隈ではちったぁ知られた名前だ。年は今年で二十六歳だったな。確か冒険者ランクはBだ。王都では、それなりに名が知られていると自負しているよ。クラスは剣闘士だ。普段は片刃の大剣を愛用している。
元々俺は王都の商人をしていた両親の下で生まれ、十五の時に両親を盗賊達に殺されて一度に失い、その復讐も兼ねて冒険者となった。有り難い事に剣の才能もあり、十八歳の頃にはそれなりに名前が売れていたよ。パーティーは組まないで、一人で討伐・護衛を中心に活動していた。何故一人かって?
理由は簡単。誰も俺の実力についてこられないからだ。
まぁ今思えば、少し傲っていたかもしれないな。
実際貴族から家臣にならないか?という誘いも有ったが、俺が仕えようと思える相手ではなかったな。お陰で全て断り冒険者を続けていた。
そんな俺が自信を持って年一回の武闘大会に今年初めて出場する事になった。
勿論決勝トーナメントに勝ち残るのは当然のこと。自分としては、優勝するのは自分であると思っていたわけだ。
予想通り、予選は予定通り勝ち残ったが、その中で不思議な出来事があったな。
予選の最中、誰かに見られている視線を試合中に感じたわけだ。
その視線は、俺の体の中の全てを見通すかのような視線だった。予選が終わった途端に消えた為、どこからの視線だったか分からず仕舞いだった。大会参加者なら少しは楽しめそうだとその時は思って、視線の事は直ぐに忘れたけどな。それよりも、決勝トーナメントに予定通り残れた事にほっとしたよ。
予選はバトルロワイヤルだったから、勿論負ける積もりは無かったが、他の出場者が結託してかかってきたら、流石の俺でも勝てるか分からなかったからだ。
幸いな事に、俺のグループには頭のキレる奴はおらず、皆もマトモに戦う奴らだったな。
トーナメントはクジ運が良かったのか、最後の試合になった。
まぁ、十六番だったからな。事前に調べておいた強そうな者は、殆んど隣の山に集まっていて、障害は二回戦で当たるだろう選手なのか槍の男くらいだ。それでも決勝まで勝ち抜ける事が出来そうだがね。
トーナメントが始まり二日目。何か王都中が騒がしい。朝早くから武装した騎士達が貴族街を走り回っていたな。後で聞いた話によると、貴族派の中心人物達が一斉に取り締まりにあったらしい。中には以前に家臣に誘ってきた家もあったようだが、あの時断って正解たったと情報を聞いたときに思ったな。
まぁ、今の俺には直接関係ないけどね。
トーナメントはその後、キツイ相手もいたが、何とか決勝まで無事に進めた。
そのキツかったのは、レインロードとか言う名前の相手で、攻撃については怖くはなかったが、盾や剣捌きと言った防御については流石に決勝まで上ってきた男だけあった。目と勘が良いのだろうな。
トーナメントの中の各試合で一番ケリが着くまで時間がかかった相手だ。
対戦相手のレインロードは、試合開始からそのカイトシールドを持った左手を前に軽く突きだして防御の体勢になった。そう、この男はカウンタータイプの戦い方をするのだ。
迂闊に攻め込むと、カウンターの剣の攻撃が待っている。なかなか厄介な相手だった。それでも来ると分かっているのだから、それを想定していれば、相手の攻撃を喰らうことはない。
結局勝因は、相手のカウンターをわざと誘い、それに合わせて攻撃をする。つまり、防御は一流品だったが攻撃は防御程ではなく、その隙を突いたわけだ。
これ以外は確かに強かったが、ただの力押しだったので、手こずる事相手は居なかったな。
そして決勝の相手は、ウィンドフィールドと言う相手だ。
まぁ、これが今の団長なのだけどね。
最初はレインロードと同じ防御の堅いタイプかと思っていた。
だが、試合は短時間で決着がついた。
残念ながら俺の勝ちではなく、相手の勝利だった。
予選やトーナメントを通して使わなかった魔法の強化を使い、試合開始と共にスタートダッシュしてきた。決して油断はして無かった積もりだったが、試合開始直後の為に相手の動きを待って見ていたのが良く無かったのか、我に返ったときには相手のシールドバッシュをまともに受けていた。俺はバランスを崩して思わず尻餅をついてしまった。そこに目の前に剣を突き付けられて、試合は相手の勝ちとなった。
正直言うと結果には不満だったが、真剣勝負ならこれで死んでいたと思いその場は納得したさ。
表彰式も済んで、冒険者の仕事に戻ろうかと思い、その前に少し休みを取ろうと思った矢先、王国にとんでもない事件が起こった。なんと、隣の帝国が攻めてきたと聞いた。
詳しいことは分からなかったが、翌日には王弟殿下であるリヒト侯爵を指揮官にして、取り敢えず二万の兵を率いて南に向かった。今からなら余程に運が良くないと、帝国軍に国内に侵入されてからの迎撃になるなと、その時はそう思い、進入された場所の街や村は大丈夫かと多少心配したさ。
それから四日五日した日に、敵を発見してこれと戦い撃破したらしい。
俺も酒場で聞く噂で聞いた位だから詳しくは分からないが、何でも軍に同行した冒険者が敵の将軍を一騎討ちで一撃のもとに倒したらしい。その為に兵達からは、『雷光』と呼ばれ始めたらしい。
(ヘェー。決勝でのあの対戦相手かな?)
彼の顔を一瞬思い浮かべたが、『雷光』と異名されるほどの速さでは無かった気がした。
その日はその噂で一日中持ちきりだった。何とは無しにその時は聞き流していたが、三日後に兵達が帰って来た。
俺はその行列を見て、不思議なこと、普通なら有り得ない事に気が付いた。兵数が殆んど減っていないのだ。普通なら少なくとも二割から三割は死傷者が出るのが当たり前で、話に聞いたら損害がたったの十名程らしい。万の軍勢同士が戦って被害がそれだけとは有り得ないことだ。
途中で軍列の中で、決勝の相手の顔を見つけたが、流石に誇らし気な顔をしていたな。
それから日が経ち、そろそろ仕事を再開しようかなと思っていた矢先、定宿にしている宿屋にあいつが訪ねてきた。そう決勝の相手のレナード・ウィンドフィールドだ。
「それで何の用事かな?」
「私は、ある貴族の方の騎士としてメイザース殿をこれはと見込んで伺った。その方は最近領地持ちの貴族に叙爵されたばかりの伯爵様だ。如何であろうか、その方の騎士にならないか?私と共にその方の力とならないか?」
「騎士への勧誘か・・・。その貴族は先日の戦争に参加したのか?叙爵されたばかりと言うが?」
「そうだ。余り詳しいことは言えないが、この前の帝国との戦争で活躍された方だ。最後には敵の将軍を倒した。それもたった一撃でな。」
「ほう。敵の将軍を一撃か。かなり出来るな。お主と比べてどうだ?」
「ふふふ。比べるまでもないな。」
「そうか。お主の方が強いか。」
「そうではない。あの方の方が遥かに強い。いや、強さの底が見えないほどだ。」
「何、そんなに強いのか?」
「その一騎討ちは初めは私がやるつもりだったが、その方から五分五分の相手だから止めておけと言われて止められた。その相手を剣の一振りで倒されたのだ。とても私の及ぶ方ではないさ。」
「ほほう。そこまで強いのか。そうだな、一つ条件がある。それが叶うなら騎士となることを承知しよう。」
「条件とは?」
「俺は決勝の結果には満足していない。確かに真剣ならあのシールドバッシュで転ばされたことは死を意味するのはわかっている。しかし、それでも納得がいかないのだ。そこでお主ともう一度戦いたい。そして、お主よりも強いという、その貴族とも戦いたい。本当にそんなに強い者がいるのか。いるなら戦ってみたい。これは戦士の性だ。どうだ?」
「私は構わないが、閣下とはいずれ戦うことは出来るだろうが何かとお忙しい方だから、希望は聞いておくが、それでも良いか?」
「ああ、構わない。」
「なら、これからでも闘か?」
「いいだろう。ギルドの訓練場に行こう。あそこなら今空いているはすだ。」
こうして俺は閣下の騎士になるのだった。
閣下の騎士となって分かったのは、世の中は広いと言うことだ。しみじみ思ったよ。あの歳であの強さ、それも底の知れない強さと言うものを見た気がする。人間はあそこまで強くなれると知り俺もと思ったよ。
さて、今日は閣下は訓練に来るかな?来るならお相手をお願いしたいのだがな。・・・さて、どうかな。
元々俺は王都の商人をしていた両親の下で生まれ、十五の時に両親を盗賊達に殺されて一度に失い、その復讐も兼ねて冒険者となった。有り難い事に剣の才能もあり、十八歳の頃にはそれなりに名前が売れていたよ。パーティーは組まないで、一人で討伐・護衛を中心に活動していた。何故一人かって?
理由は簡単。誰も俺の実力についてこられないからだ。
まぁ今思えば、少し傲っていたかもしれないな。
実際貴族から家臣にならないか?という誘いも有ったが、俺が仕えようと思える相手ではなかったな。お陰で全て断り冒険者を続けていた。
そんな俺が自信を持って年一回の武闘大会に今年初めて出場する事になった。
勿論決勝トーナメントに勝ち残るのは当然のこと。自分としては、優勝するのは自分であると思っていたわけだ。
予想通り、予選は予定通り勝ち残ったが、その中で不思議な出来事があったな。
予選の最中、誰かに見られている視線を試合中に感じたわけだ。
その視線は、俺の体の中の全てを見通すかのような視線だった。予選が終わった途端に消えた為、どこからの視線だったか分からず仕舞いだった。大会参加者なら少しは楽しめそうだとその時は思って、視線の事は直ぐに忘れたけどな。それよりも、決勝トーナメントに予定通り残れた事にほっとしたよ。
予選はバトルロワイヤルだったから、勿論負ける積もりは無かったが、他の出場者が結託してかかってきたら、流石の俺でも勝てるか分からなかったからだ。
幸いな事に、俺のグループには頭のキレる奴はおらず、皆もマトモに戦う奴らだったな。
トーナメントはクジ運が良かったのか、最後の試合になった。
まぁ、十六番だったからな。事前に調べておいた強そうな者は、殆んど隣の山に集まっていて、障害は二回戦で当たるだろう選手なのか槍の男くらいだ。それでも決勝まで勝ち抜ける事が出来そうだがね。
トーナメントが始まり二日目。何か王都中が騒がしい。朝早くから武装した騎士達が貴族街を走り回っていたな。後で聞いた話によると、貴族派の中心人物達が一斉に取り締まりにあったらしい。中には以前に家臣に誘ってきた家もあったようだが、あの時断って正解たったと情報を聞いたときに思ったな。
まぁ、今の俺には直接関係ないけどね。
トーナメントはその後、キツイ相手もいたが、何とか決勝まで無事に進めた。
そのキツかったのは、レインロードとか言う名前の相手で、攻撃については怖くはなかったが、盾や剣捌きと言った防御については流石に決勝まで上ってきた男だけあった。目と勘が良いのだろうな。
トーナメントの中の各試合で一番ケリが着くまで時間がかかった相手だ。
対戦相手のレインロードは、試合開始からそのカイトシールドを持った左手を前に軽く突きだして防御の体勢になった。そう、この男はカウンタータイプの戦い方をするのだ。
迂闊に攻め込むと、カウンターの剣の攻撃が待っている。なかなか厄介な相手だった。それでも来ると分かっているのだから、それを想定していれば、相手の攻撃を喰らうことはない。
結局勝因は、相手のカウンターをわざと誘い、それに合わせて攻撃をする。つまり、防御は一流品だったが攻撃は防御程ではなく、その隙を突いたわけだ。
これ以外は確かに強かったが、ただの力押しだったので、手こずる事相手は居なかったな。
そして決勝の相手は、ウィンドフィールドと言う相手だ。
まぁ、これが今の団長なのだけどね。
最初はレインロードと同じ防御の堅いタイプかと思っていた。
だが、試合は短時間で決着がついた。
残念ながら俺の勝ちではなく、相手の勝利だった。
予選やトーナメントを通して使わなかった魔法の強化を使い、試合開始と共にスタートダッシュしてきた。決して油断はして無かった積もりだったが、試合開始直後の為に相手の動きを待って見ていたのが良く無かったのか、我に返ったときには相手のシールドバッシュをまともに受けていた。俺はバランスを崩して思わず尻餅をついてしまった。そこに目の前に剣を突き付けられて、試合は相手の勝ちとなった。
正直言うと結果には不満だったが、真剣勝負ならこれで死んでいたと思いその場は納得したさ。
表彰式も済んで、冒険者の仕事に戻ろうかと思い、その前に少し休みを取ろうと思った矢先、王国にとんでもない事件が起こった。なんと、隣の帝国が攻めてきたと聞いた。
詳しいことは分からなかったが、翌日には王弟殿下であるリヒト侯爵を指揮官にして、取り敢えず二万の兵を率いて南に向かった。今からなら余程に運が良くないと、帝国軍に国内に侵入されてからの迎撃になるなと、その時はそう思い、進入された場所の街や村は大丈夫かと多少心配したさ。
それから四日五日した日に、敵を発見してこれと戦い撃破したらしい。
俺も酒場で聞く噂で聞いた位だから詳しくは分からないが、何でも軍に同行した冒険者が敵の将軍を一騎討ちで一撃のもとに倒したらしい。その為に兵達からは、『雷光』と呼ばれ始めたらしい。
(ヘェー。決勝でのあの対戦相手かな?)
彼の顔を一瞬思い浮かべたが、『雷光』と異名されるほどの速さでは無かった気がした。
その日はその噂で一日中持ちきりだった。何とは無しにその時は聞き流していたが、三日後に兵達が帰って来た。
俺はその行列を見て、不思議なこと、普通なら有り得ない事に気が付いた。兵数が殆んど減っていないのだ。普通なら少なくとも二割から三割は死傷者が出るのが当たり前で、話に聞いたら損害がたったの十名程らしい。万の軍勢同士が戦って被害がそれだけとは有り得ないことだ。
途中で軍列の中で、決勝の相手の顔を見つけたが、流石に誇らし気な顔をしていたな。
それから日が経ち、そろそろ仕事を再開しようかなと思っていた矢先、定宿にしている宿屋にあいつが訪ねてきた。そう決勝の相手のレナード・ウィンドフィールドだ。
「それで何の用事かな?」
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「そうだ。余り詳しいことは言えないが、この前の帝国との戦争で活躍された方だ。最後には敵の将軍を倒した。それもたった一撃でな。」
「ほう。敵の将軍を一撃か。かなり出来るな。お主と比べてどうだ?」
「ふふふ。比べるまでもないな。」
「そうか。お主の方が強いか。」
「そうではない。あの方の方が遥かに強い。いや、強さの底が見えないほどだ。」
「何、そんなに強いのか?」
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「条件とは?」
「俺は決勝の結果には満足していない。確かに真剣ならあのシールドバッシュで転ばされたことは死を意味するのはわかっている。しかし、それでも納得がいかないのだ。そこでお主ともう一度戦いたい。そして、お主よりも強いという、その貴族とも戦いたい。本当にそんなに強い者がいるのか。いるなら戦ってみたい。これは戦士の性だ。どうだ?」
「私は構わないが、閣下とはいずれ戦うことは出来るだろうが何かとお忙しい方だから、希望は聞いておくが、それでも良いか?」
「ああ、構わない。」
「なら、これからでも闘か?」
「いいだろう。ギルドの訓練場に行こう。あそこなら今空いているはすだ。」
こうして俺は閣下の騎士になるのだった。
閣下の騎士となって分かったのは、世の中は広いと言うことだ。しみじみ思ったよ。あの歳であの強さ、それも底の知れない強さと言うものを見た気がする。人間はあそこまで強くなれると知り俺もと思ったよ。
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