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第十八章 帝国大乱。

第374話 出発の朝。

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   二日後の朝。

    「一週間後に向こうで会おう。」
「閣下も無茶はしません様に。何でも出来るからとは言え、ご自分が何でもかんでもお引き受けする必要は無いのですよ。良い機会です。少し考えてみてください。」
「分かったよ。まあ、適当に過ごすさ。皆も気を付けて行ってくれ。元気に向こうで会おう。」

最近、やたらと心配性のレナードを船に押し込み、少し遅れて船は旅立った。

(さて、これで矢は放たれたと。後は結果を出すのみだな。)

一緒に船の見送りに来ていたキャプテンに話しかける。

「船は予定通り八日後に、向こうに着くのだな?」
「はい。この季節であれば、よっぽどの悪天候でもなければ、八日後には目的地に到着しますよ。任せてください。」
「よし、頼むぞ。」

後をキャプテンに任せて、次の予定をこなしに向かう。次はルイスのいる、農業管理事務所だ。
港から距離があるので、テレポートで移動する。

朝九時を少し回った時間だが、農業従事者の朝は早い。既に畑に仕事で出かけているので、事務所にはこの時間は事務員だけが残っていた。

「こんにちは。」
「はい、こんにちは。ご用でしょうか。」
「えーと、ルイスはいるかな?」
「所長ですか?少々お待ち下さい。確認してまいります。」

そういって、二階へと上がっていった。
暫く待つとルイスが先程の受付を伴い階段を下りてきた。そして私の姿を見た途端に慌てて転げるように走って来る。

「閣下、いらっしゃるなら、お呼び頂ければ伺いますのに。それで今日は一体何のご用ですか?」
「ああ、前に話したマイの実の栽培準備をしようと思ってね。」
「ああ、新しい栽培ですね。マニュアルは貰いました。まず、苗を育てるのでしたよね。」
「そうだ。発芽まで済ませたマイの実を苗代に蒔いて、ある程度まで育てる訳だ。その温室を今日は造る訳さ。すでに『エチゴヤ』には、温室のためのガラス板を注文してある。これから引き取りに行く       お前は南門をでて直ぐの場所で私が行くのを待っているように。良いな?」
「はい、分かりました。これから直ぐで?」
「ああ、先に行っていてくれ。」
「では、先に南門でお待ちしています。」

    ルイスの返事を聞くと、早速ガラスの回収に『エチゴヤ』へと飛ぶ。

「誰か居るかい?」
「はーい。・・・お待たせしました。ご用件はなんでしょうか?」

声を掛けると、奥から反応があり、店の者なのか若い男が出てきた。

「オオガミというが、主は今居るか?居たら呼んでくれるか?」
「はい。今呼んで参ります。少しお待ち下さい。」

そう言って、慌てて奥に呼びに行った。
少し待つと、奥から慌てて出てくるビルさんがいた。

「申し訳有りません。お待たせして。この者は、まだ入ったばかりでして、閣下の顔を覚えておりませんで失礼を致しました。」
「まぁ、新人ならしょうがないよ。それよりも以前に頼んだガラス板を貰いに来た訳だが、出来上がっているかな?」
「はい、それほど難しい物ではなかったようで、既に入荷してます。こちらへどうぞ。」

オオガミを伴い、奥の倉庫へた連れていった。

「ご注文の通り作ってありますが、間違いないですか?」

置かれているガラス板を、詳細に見て頼んだ通り作られている事を確かめると、頷きながらこたえる。

「有難う。注文通りだね。貰っていくよ。」

そう言って、倉庫に有ったガラス板を嵌めた窓枠の様な物をインベントリィにしまっていく。 
後ろで声が驚きの声がしたようだが、ここは無視した。

「有難う、ビルさん。後を頼むよ。待たせている人がいるから。また、日をあらためて。」

それだけを伝えて、その場で〈テレポート〉をする。
転移の瞬間に、新人が叫んだ様な気がしたが、気にしないでおこう。

「わっ!何だ?」

誰も居ない空間に、いきなり人影が現れたため、驚きの声を上げたのは、近くにいたルイスであった。

「お、スマンな。驚かせたか?」
「い、いえ。初めて見たものですから、つい、驚いてしまいました。申し訳有りません。大丈夫です。」

顔を赤くしながら、慌てて言い募った。

「スマン。急いでいたので、驚かせたか?さあ、ハウスを作りに行くぞ。」

とルイスに声をかけていく。

そこは先日、魔法で整えた田んぼの一角である。
畔に立ち、南側を向くようガラス板を立て掛ける様に並べていく。

「閣下、こんな具合で宜しいですか?」
「そうだ。板の間に隙間が出来ないように詰めて置くように。暖まった空気が漏れない様にしてくれ。」

と、ルイスに注意しながらガラス板を並べていく。
現在あるだけのガラス板の枠を並べると、一息ついた。

「ようし、全部板は並べたね。交換用の板は忘れないで、取っておいてくれよ。後は、種籾を用意するだけだが、今日はこれでおわりにするか。今日一日、籾を水に浸して種を発芽させるから、温い水に浸けて置くこと。決して熱湯にいれないこと。種が死んでしまうからね。ルイス頼めるか?」
「はい。マニュアルに書いてありましたので、わかります。」
「じゃあ、田んぼと苗床を区切っておこう。」

そう言って魔法を使う。

「まず、ジョブを変えてメインを精霊術士に、サブを錬金術士にしてから、〈マップ表示・オン〉。続けて、ハウスを囲う様に畦道で囲う訳だが、おーい〈レプラコーン〉。出てきてくれ。」
「・・・ホイ呼んだかの?」
「またで済まないが、こんな感じで畦道を造ってくれるかな。」
「どれ。ほう、ここで良いのか?高さは、そんな感じか?わかったぞい。魔力は五十じゃな。やるかの?」
「ああ、やってくれ。」
「分かった。 ホイ。どうじゃ?」
「おお。相変わらず見事だ。あと、ハウスのガラス板を乗せている片側を、こんなように石に固めてくれるかな?」
「ほう。片側だけ高くするのか。高さは成る程。日が当たるようにするのか。これなら魔力は三十だな。やるが良いのだな?」
「ああ。やってくれ。」
「では、ホイ!」

レプラコーンの掛け声と共に先程ガラス板の枠を乗せるために片側を高くした部分がそっくり石となり乗っていたガラスの板が安定して乗っかった。

温室が出来たので、ルイスには種籾の発芽を頼む為に、事務所に一旦戻り、籾を渡してマニュアルにある通り発芽させるように頼んだ。

全滅しても大丈夫な様に少し残して渡したが。

「明後日、発芽した種籾を撒くから、温室の場所に集まること。そうだね。朝九時に集合な。時間は良いか?」
「えーと。朝の九時に集合ですね。分かりました。」
「じゃあ、今日はここまで。また、明日な。〈テレポート〉。」

こうして私の米造りは、着々と進んで行った。

「ああ。米が食べられるには、あと半年は先だな。いざ、自分で作るとなると、こんなにも大変だとは、思いもしなかったよ。なんせ、スーパーで買ってただけだからね。」

日本に居たときは、当たり前に感じていたスーパー・コンビニの有り難さを、実に染みて感じた今日でした。




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