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第十八章 帝国大乱。

第365話 たまに良い事が有るから、生きていけるのさ。

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    部屋に入る前にインベントリィから白い仮面を取り出して顔に着けてから中に入る。

「失礼するよ。オカベは居るかい?」

    部屋の中には、真面目そうな役人タイプの男が一人で黙々と書類仕事をしている。
男が顔を上げ、私が扉を開けたのを認めると、立ち上がって迎えてくれる。

「これは殿、よくいらっしゃいました。おや、後ろに連れてらっしゃる方は、もしかしてサンドロールからの方ですかな?」
「おお、流石オカべだ。よく分かったね。」
「いえ、昔の仕事の折りにサンドロールの方と交易しておりまして、顔立ちとか見知ってましたので。しかし、何故殿とご一緒で?」
「うん、詳しく話す。座って良いかな?」
「あっ!これは気が付かず申し訳ありません。どうぞ中に入ってお座り下さい。これ、誰か!」

私達を中に招き入れて席を勧めると、控えの者を呼び出す。

「済まぬが、三人分お茶を頼む。」
「はっ、お待ちを。」

暫く待つと、先程の男の代わに、メイドがお盆に茶碗を乗せて入ってきた。それぞれの前に茶碗が置かれると、一礼して出ていく。

「ほう。緑茶ですか。私はこれが一番好きなんですよ。」

シンドバット・マハティールが嬉しそうに緑茶を啜る。

「おや?サンドロールにもコーヒーや紅茶はあるだろうに、何故緑茶が一番なのですかな?」

オカベが不思議そうに尋ねた。

「実はサンドロールの飲み物は土地柄、皆砂糖や蜂蜜で甘い味付けをされて出てくるのですよ。実は私は甘い物が苦手でしてね。飲むと余計に喉が乾くので、さっぱりとした緑茶が好きですね。ただし、国内では緑茶は作られていないので、輸入に頼るのですがね。最近はその輸入自体が減っていて、個人的にも困っていたのですよ。是非とも交易品に入れて頂きたいですな。」
「ほう、それは有り難いですな。こちらこそ是非ともお願いします。」
「二人とも、今日明日交易について話し合ってくれ。明後日の昼にマハティール殿を迎えにまた来るので、それまで十分に話し合って条約など締結してくれ。一応私は、交易しても良いと思っている。何を輸出して何を輸入するか、品目や輸入輸出量及び各種条件を決めてくれるか。但しマハティール殿は言葉巧みだからね。上手いこと丸め込まれないようにしてくれよ?ではマハティール殿、明後日の昼に。それでは私はツールに戻るから後は宜しく。失礼するよ。〈テレポート〉。」

あとを任せて、私はツールの執務室にもどった。

「ふぅ、到着っと。うーん、流石に腹が減ったな。この空き具合だと、そろそろ昼食のはずだが。」

呼び鈴を鳴らすと、暫くしてサウルが入ってきた。

「お呼びでしょうか旦那様?」
「おや、サウル。戻っていたのか?」
「はい。先程教会より戻りました。」
「ほう。教会側から何か要望でもあったのかい?」
「はい。実はこの地方では毎年三の月の三十日に春の豊作豊漁を祈る大地母神のお祭りがあるそうです。是非旦那様にも祭りにご出席頂きたいとお話がありまして。」
「へぇー、春のお祭りね。三十日か。もうすぐだね。」
「はい。地域のお祭りですので、ここはこの地の領主としては最低限の礼儀として、お顔は出さないと不味いかと思われますが?」
「そうだよな。領主が領地のお祭りに出ないのは不味いよな。分かった。顔を出すことにする。行事中ずっと参加とはいかないかもしれないが、当日は挨拶くらいは出来ると思う。主催は教会なのかな?」
「そのようです。」
「なら、済まないが開催費用の補助として、この金貨二十枚を寄進してくれるかい。」
 
そう言って、金貨の入った小袋をサウルに差し出す。

「承知しました。お預かりして、確かにお渡し致します。」

小袋を受けとると、懐に大事にしまった。

「他に急用はないかな?」
「ああ、そろそろお昼の用意が整うのと、練兵場での入団試験もそろそろ終わりそうでしたよ。」
「え、もう終わりそうなのか。こりゃ合格者は少ないかな?わかった。確認してくる。昼食は用意できたら悪いが呼びに来てくれるかな?」
「承知しました。」

サウルを残して、練兵場に向かうと、あと三人を残して模擬戦は終わっていた。

「レナード、こっちはどんな様子だい?」
「あ、閣下いらっしゃったのですか?丁度試験が全て終わるところです。」
「それで、今回はどの位の人数が合格しそうかな?」
「はい。それなのですが、後でご報告しようとも思ってましたが、何人か即戦力になれそうな者もいたんですが、それ以外はギリギリ合格というレベルでした。勿論皆、才能は有る者達だけですが、オークは倒せてもオークリーダーは運次第の力量です。一人前に鍛えるには、半年は掛かるかと思われます。」
「おや、では今回は不作なのかい?」
「恐らくですが、閣下の異名が各地に知れ渡り、それで、力量の足りない者が今回は多く応募してきたのではと思われます。如何されますか?」
「うーん、一般の貴族家の騎士の給金はいくらなの?」
「普通の貴族家の騎士だと、食事と鎧盾と住まい
を保証して、月に銀貨四十から五十枚程度かと。」
「案外安いんだね。半年やってオークナイトを倒せるようになったら、金貨一枚に上げるか。一応半年ほど鍛えるようにしてくれ。強くならないまたは、強くなる気の無い者はどんどん落としていってくれ。強くなる気の無い者は鍛えても無駄だから。後はレナードに任せた。どう扱うか決まったら、また報告してくれ。」 
「承知しました。」

    (どうやら今回は大漁とはいかなかったようだ。まぁ、毎回大漁という訳にはいかないのだろうが、各人の実力を査定して給金に差をつけないと、不平が出ても困るからね。人事管理は大変だよ。って、まるで会社経営だな。(笑))

(さて、この後は王宮に報告と相談をしないとな。特にケルンからの件は勝手に出来ないからね。では、行くか。)

レナードから様子を聞くと再び執務室でに戻り執務机に座りながら試験の結果をつらつらと考えていると、ノックの後にサウルが部屋に入ってきて昼の準備が出来た事を告げた。

    (昼食食べて、午後からも頑張りますかね。
しかし、何でこうも面倒事が私の所にやって来るのかねぇ。平々凡々な日々を送りたいものです。)

そう思いながら、溜め息一つ吐いて、食堂に向かった。

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