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第十六章 サウスラーニは面倒臭い。
第347話 農は国の基本です。①
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サウルとの伝達を済ますと、午後のこの後をどうするかと考える。結局久しぶりに直轄農園の事務所に農地の作付けの相談も含めて会いに行くことにした。
外出する為馬車の用意を頼み、暖かい格好をして玄関から出ようとすると馬車にはアルメイダとアイリスとシーラの三人が乗っていた。
「おや、三人とも出掛けるのかな?」
「はい、少し教会のお手伝いに。」
「私とアルは養護院へ友達に会いにいくのよ。」
「そうにゃ。」
「そうか。あまり遅くならない様にな。」
「判ったにゃ。」
「任せなさい。」
そう言えば、教会の各施設は任せっきりだったなと、思い出した。これは機会を作って、町の各施設を巡回して回らないといけないな。忘れない様に頭の隅に書き込んでおこう。
途中、教会の前で三人を下ろすと馬車は更に南に進み、やがて南門の脇にある守衛の待機所の隣にある建物の前に停まった。
「ほう、ここが農園管理事務所か。ここには初めてくるけど、さて農園長のルイス君はいるかな?」
「失礼するよ。」
「はい、どの様なご用件でしょうか?」
受け付けに現れたのは、私が以前に、『仮面司祭』で治療した覚えがある狐人族の女性であった。たしか、片腕を欠損していて、幼い娘が治してと頼んで来た件だったな。
「オオガミと言う。農園長のルイス君に面談したいのだが、居るかな?」
「居ますので、お伝えしてまいります。そちらの椅子に座ってお待ち下さい。」
言われたように、椅子に座り待っていると、二階から農園長のルイスが慌てた顔で駆け降りてくる。辺りを見回して私を見つけると、一直線に私の元に駆け寄って頭を下げた。
「閣下、わざわざ此方に来られなくとも、お呼び下されればお屋敷まで伺いましたものを。何か急用でも有りましたか?」
「いや、急な来訪で済まないね。今忙しかったかい?後日の報告会議でも良かったが、そろそろ農繁期に入るから、今後の予定等を話し合っておきたかったんだよ。」
「成る程。分かりました。お話は私の部屋で如何ですか?君、私の部屋へお茶を二人分頼むよ。」
「はい、分かりました。」
受け付けに出た女性にお茶の用意を申し付けると、農園長のルイスは私を部屋へ案内した。
「閣下、どうぞソファーへお掛けください。」
私に上座を勧め、自分は横にある二人掛けの長椅子に座ると、早速話し始めた。
「わざわざ事務所に来られてのお話とは何でしょうか?」
「まずは急な訪問で済まないね。去年の十月頃から現場を皆に任せっきりにしてきただろう?四ヶ月経ち途中何回か報告書は出して貰っていたが、来月から春に向かって農繁期に入って来るからね。現在の状況を事前に大まかに知りたくてね。それに、スラム対策として、労働者の引き受けもして貰っているからね。その状況を知っておきたかったんだよ。あと春から新しい穀物の作付けも試したい物が有るし、他にも試したい新しい栽培方法もあるので、その相談もしたいのだよ。」
「成る程、分かりました。資料の用意をしますので、少しお待ち下さい。」
そう言って、立ち上がると壁にある書類棚から関係する書類を取り出してソファーに座り直すと説明を始めた。
「えーと先ずは、労働力として雇った流民達の状況からですが、現在農園で働く従業員ですが、全体で百十三名居るなかでお尋ねにあった流民から受け入れた者は現在七十二名ですね。内八割程が女性となります。今の規模ではあと三十人までなら即受け入れることは出来ますが、それ以上お望みとなると農園の規模を広げて頂かなくてはなりません。または、これは将来的な話ですが。勤務状態の良い者には新たに農地を与えて、自作農にすることで従業員の入れ換えを行って、半永続的に流民の雇い入れが出来る様にしてはと思ったのですが。食料生産を担う農民を増やして、かつ新しい労働力も確保出来るので将来的に如何でしょうか?」
「うーん、確かに家でずっと囲い込んでおく訳にもいかないからね。そうだな・・・済まないが、近々開く報告会で返答するから、暫く考えさせてくれないかな?」
「はい、それは構いません。急ぎの話では有りませんから。」
「助かる。次に畑の広さだが、もう少し新しく開墾して畑を広げても大丈夫かな?」
「そうですね。人数的にはまだ余裕ありますから、今の内に広げて貰えるなら、更に食料の増産に繋がりますね。新しい畑は小麦ですか?それとも?」
「基本は小麦だが、他にも新しい穀物の栽培も考えているよ。」
「閣下、それは何でしょうか?」
「知っているかな?これだよ。」
そう言いながら、インベントリィからずっと前に収穫してその後インベントリィに仕舞いっぱなしだったジャポニカ米の籾を右掌に一部を取り出してルイスに見せる。
「おや?これは湿地で良く見かける野草のマイの実ですかな。これがなにか?」
「ああ、これは私の故郷では『コメ』と呼ばれている穀物だ。籾殻を脱穀して中の白い実を炊いて食べるんだが、麦よりも収穫量が多く、連作しても土地が痛みにくい性質がある。」
「ほほう、なんと誠ですか?閣下、これの栽培方法をご存知ですか?」
「ああ、知っている。ただし、麦と違って湿地や専用の畑で栽培するけどね。」
「ほう、ではこのマイの実を春から育てたいとお考えなのですね?」
「うん。専用の畑、私の故郷ではそれを『水田』または『田んぼ』と言うのだが、新しく田んぼを造成して試作してみたいのさ。まずは最低限私が食べる分を確保したい。やってくれるかい?」
「分かりました。栽培方法が判っているなら、育成マニュアルを頂ければ、それを元に作業出来ますので、問題ないです。」
「そうか、助かるよ。早速マニュアルを用意して渡すよ。」
「はい、お願いします閣下。」
こうして、ルイスとの話し合いは続いていく。
外出する為馬車の用意を頼み、暖かい格好をして玄関から出ようとすると馬車にはアルメイダとアイリスとシーラの三人が乗っていた。
「おや、三人とも出掛けるのかな?」
「はい、少し教会のお手伝いに。」
「私とアルは養護院へ友達に会いにいくのよ。」
「そうにゃ。」
「そうか。あまり遅くならない様にな。」
「判ったにゃ。」
「任せなさい。」
そう言えば、教会の各施設は任せっきりだったなと、思い出した。これは機会を作って、町の各施設を巡回して回らないといけないな。忘れない様に頭の隅に書き込んでおこう。
途中、教会の前で三人を下ろすと馬車は更に南に進み、やがて南門の脇にある守衛の待機所の隣にある建物の前に停まった。
「ほう、ここが農園管理事務所か。ここには初めてくるけど、さて農園長のルイス君はいるかな?」
「失礼するよ。」
「はい、どの様なご用件でしょうか?」
受け付けに現れたのは、私が以前に、『仮面司祭』で治療した覚えがある狐人族の女性であった。たしか、片腕を欠損していて、幼い娘が治してと頼んで来た件だったな。
「オオガミと言う。農園長のルイス君に面談したいのだが、居るかな?」
「居ますので、お伝えしてまいります。そちらの椅子に座ってお待ち下さい。」
言われたように、椅子に座り待っていると、二階から農園長のルイスが慌てた顔で駆け降りてくる。辺りを見回して私を見つけると、一直線に私の元に駆け寄って頭を下げた。
「閣下、わざわざ此方に来られなくとも、お呼び下されればお屋敷まで伺いましたものを。何か急用でも有りましたか?」
「いや、急な来訪で済まないね。今忙しかったかい?後日の報告会議でも良かったが、そろそろ農繁期に入るから、今後の予定等を話し合っておきたかったんだよ。」
「成る程。分かりました。お話は私の部屋で如何ですか?君、私の部屋へお茶を二人分頼むよ。」
「はい、分かりました。」
受け付けに出た女性にお茶の用意を申し付けると、農園長のルイスは私を部屋へ案内した。
「閣下、どうぞソファーへお掛けください。」
私に上座を勧め、自分は横にある二人掛けの長椅子に座ると、早速話し始めた。
「わざわざ事務所に来られてのお話とは何でしょうか?」
「まずは急な訪問で済まないね。去年の十月頃から現場を皆に任せっきりにしてきただろう?四ヶ月経ち途中何回か報告書は出して貰っていたが、来月から春に向かって農繁期に入って来るからね。現在の状況を事前に大まかに知りたくてね。それに、スラム対策として、労働者の引き受けもして貰っているからね。その状況を知っておきたかったんだよ。あと春から新しい穀物の作付けも試したい物が有るし、他にも試したい新しい栽培方法もあるので、その相談もしたいのだよ。」
「成る程、分かりました。資料の用意をしますので、少しお待ち下さい。」
そう言って、立ち上がると壁にある書類棚から関係する書類を取り出してソファーに座り直すと説明を始めた。
「えーと先ずは、労働力として雇った流民達の状況からですが、現在農園で働く従業員ですが、全体で百十三名居るなかでお尋ねにあった流民から受け入れた者は現在七十二名ですね。内八割程が女性となります。今の規模ではあと三十人までなら即受け入れることは出来ますが、それ以上お望みとなると農園の規模を広げて頂かなくてはなりません。または、これは将来的な話ですが。勤務状態の良い者には新たに農地を与えて、自作農にすることで従業員の入れ換えを行って、半永続的に流民の雇い入れが出来る様にしてはと思ったのですが。食料生産を担う農民を増やして、かつ新しい労働力も確保出来るので将来的に如何でしょうか?」
「うーん、確かに家でずっと囲い込んでおく訳にもいかないからね。そうだな・・・済まないが、近々開く報告会で返答するから、暫く考えさせてくれないかな?」
「はい、それは構いません。急ぎの話では有りませんから。」
「助かる。次に畑の広さだが、もう少し新しく開墾して畑を広げても大丈夫かな?」
「そうですね。人数的にはまだ余裕ありますから、今の内に広げて貰えるなら、更に食料の増産に繋がりますね。新しい畑は小麦ですか?それとも?」
「基本は小麦だが、他にも新しい穀物の栽培も考えているよ。」
「閣下、それは何でしょうか?」
「知っているかな?これだよ。」
そう言いながら、インベントリィからずっと前に収穫してその後インベントリィに仕舞いっぱなしだったジャポニカ米の籾を右掌に一部を取り出してルイスに見せる。
「おや?これは湿地で良く見かける野草のマイの実ですかな。これがなにか?」
「ああ、これは私の故郷では『コメ』と呼ばれている穀物だ。籾殻を脱穀して中の白い実を炊いて食べるんだが、麦よりも収穫量が多く、連作しても土地が痛みにくい性質がある。」
「ほほう、なんと誠ですか?閣下、これの栽培方法をご存知ですか?」
「ああ、知っている。ただし、麦と違って湿地や専用の畑で栽培するけどね。」
「ほう、ではこのマイの実を春から育てたいとお考えなのですね?」
「うん。専用の畑、私の故郷ではそれを『水田』または『田んぼ』と言うのだが、新しく田んぼを造成して試作してみたいのさ。まずは最低限私が食べる分を確保したい。やってくれるかい?」
「分かりました。栽培方法が判っているなら、育成マニュアルを頂ければ、それを元に作業出来ますので、問題ないです。」
「そうか、助かるよ。早速マニュアルを用意して渡すよ。」
「はい、お願いします閣下。」
こうして、ルイスとの話し合いは続いていく。
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