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第十五章 王都で貴族のお仕事。そして・・・。

第324話 見送りと雑事を片付けに東へ南へ。③

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    イーストンでの熱い会議を終えて、今日最後の予定のサウスラーニのメーガンとの打ち合わせに向かう。居場所は分かっているので、〈テレポート〉で一気に移動した。

「よし、到着っと。ああ、ここだ。」

脇道から、表に出ると、以前来た宿屋『レッドベアー』の看板がある。

「こんにちはー!」
「はーい、いらっしゃい・・・貴方は!」
「久方ぶりだ。たしか、サンドマン殿だったかな?」
「はっ!覚えていてくれましたか。オオガミ閣下。」
「まあ、其れなりにはね。で、メーガンはいるかい?」
「はい、将軍はいらっしゃいます。どうぞこちらへ。おーい、少し奥にいってくるぞ。」
「あいよー。」
「さ、こちらからどうぞ。」

   裏に抜ける扉へ先導していく。宿屋の裏には中庭に繋がっており、そこには一見二階建ての物置小屋があり、メーガンはそこの二階に隠れ住んでいる。

一階にはメーガンの副官のマリガンがいて、出迎えたくれ、二階へと案内してくれた。

「やぁ、久しぶりだメーガン。」
「これは閣下お久しぶりです。」
「やっと、ウェザリアでの行事が大分片付いて、それなりに動けるようになったので、連絡を取りにきたわけだ。早速だが情報を交換したい。いいかい?」
「分かりました。立ち話も何ですので、こちらへどうぞ。」

部屋の中に通してくれて、ソファーに座るように勧められる。

「前回来たのが、約一月前だけど、兵数は幾つ集まったかな?」
「はっ、現在元国軍の兵士を中心に千名を少し越える人数を確保しました。」
「よし、取り敢えず千は越えたか。国内の情勢に変わったことは?」
「その事なのですが、セイトの正規兵が駐留軍から二千人、街の守備軍から千人の合計三千人が帝都に引き上げられ、減った分を奴隷兵が代わりに補充されました。」
「ほう、理由はわかってるかい?」
「はい、先日独立宣言した、イーストンのヒラドへ派遣した増援軍二万が輸送の途中で火事で船ごと沈みました。その為に派遣する軍を再編成する為のようです。ヒラドへ再派遣するのか。国内治安の為なのかは、判断が難しいですが、その為だと思われます。」
「あー、あれね。燃やしたのは私だ。魔法でやったよ。こっちにも影響があるんだ。」
「な・・・閣下の仕業でしたか。言われてみれば納得です。察するに来月辺りからイーストンの統一戦を仕掛けますか?」
「お、良い読みしてるね。予定では、二週間後に出陣だ。イーストン国軍の兵も一万を越えたが、流民などの予定外の事態も起こってね。少し早目に動くように指示してきたよ。」
「流石に手を打つのが早い。」
「そこで、確認なんだか。政府を動かせる人物に目処はたったのかい?」
「はい、何人か現状を憂えている商人達や旧行政府の中堅から下の若手幹部達と当たりを着けました。ただ、思う所はあるが本当に独立できて、その後も維持していけるのかと不安視しています。閣下とお会いして、その辺りをお聞きしたいと言ってます。如何でしょう。一度彼等とお会いなされては。是非、味方に着けるべきと考えます。」 
「確かに、メーガンの言う通りだね。良いよ。その者達と会いましょう。但し、七日と二週間後だから十九日は予定ありでダメだ。それ以外に調整してくれるか?」
「分かりました。そのように合わせます。」
「行動の開始は、その会談の後にする。一週間後に再び来るから、また状況を報告してくれるか?」
「はっ、承知しました。」
「最後に一つ聞きたいのだが、帝国本国の帝国人兵士の動員可能数はどの様な状態なのかな?」
「動員数ですか。先日二万が消え、更に再編成の為に国内から帝国人兵士を抽出している様です。しかし、これ以上各地から抽出するのは限界だろうと思われます。強制で徴兵すれば、帝国民の国への忠誠心は揺らぎますし、それでなくても地方には反帝室、反皇帝の噂も流れております。知らないのは帝都に住む人達だけでしょう。」
「そうか、新規徴兵しないと兵が揃わない程か。中々良いタイミングだね。もう、一戦二戦で帝国もボロボロかな。よし、メーガンさっきの会談の日程を早目に決めてくれるか?」
「はい、分かりました。早速セッティングしましょう。」
「うん、頼むよ。早ければ今月末に、まずはここセイトの攻略を始めたい。メーガンもその積もりで、動いてくれ。武器や兵糧は整っているかい?」
「はい、以前頂いた軍資金で、整えました。量がありますので、別の場所に隠してあります。」
「そうか、将来的には、二万人を一年くわせるだけの兵糧を集める積もりでいてくれ。」
「成る程。将来的にですね。正直、収入がない現状では、難しいですね。」
「勿論、今直ぐとは言わないさ。常備軍二万五千から三万各町に千の守備軍合計で三万からの防衛軍がいれば直ぐに占領される事は無いだろう。その為には、税収は勿論、食料の増産をしなくてはいけない。その為にも、確りとした、マトモな政府を作り上げなくてはいけない。最低限、帝国に統治されていた時よりも、マシになったと言われるようにしなくてはな。」
「全くその通りですな。その為になら、私も国を興すのに命をかける甲斐が有ります。早速、行動に取りかかります。」
「うん、頼むよ。改めて聞くが、セイトの守備軍の内容を詳しく教えてくれるかい?」
「はっ、領事の直轄軍五千と街の守備兵が千の合計で六千の兵力です。これは以前と変わりませんが、中身については、先程もご報告しました様に、帝国人の兵士は再編成の為に帝都に抜かれていきました。現在は、直轄軍のうち、帝国人の兵士は千人で四千が奴隷兵です。守備軍については、変わらず半分が帝国人の兵士です。前に比べて、かなり隙が見られます。」
「そうだね。軍の再編成の為に、かなりの無茶をしているようだ。チャンス到来だな。メーガン、街の攻略自体は安心しろ。むしろそれよりも、独立後の統治を心配してくれるか。贅沢は言わんが、まともに仕事がやれる者を頼むよ。出来るだけ真面目で実直な者が良いな。」
「お任せください。先程の者達は、堅物として前の政府では煙たがれていた程ですから、安心してください。」
「取り敢えず、今日はこんな所かな?質問は有るかい?」
「閣下、先程の者達にセイトの攻略法を話してもよろしいですか?」
「どうかな。信じるかな?・・・いや、私から話そう。只てさえ、信じ難い事だからね。直接説明した方が、早そうだ。セッティングだけ頼むよ。」
「分かりました。」
「いよいよ、解放に動くからな。抜かるなよ、メーガン?」
「はっ!承知しました、閣下!」

    夢の物語の様に思っていた解放運動がいよいよ現実味を帯びてきたことで、よりやる気を出し始めたメーガンである。

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