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第十四章 イーストン解放編
幕間70話 ある狐幼女の絵日記。①
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これは、仮面司祭によって、救われたある獣人母子のその後である。
「お母さん、行ってらっしゃい。」
「養護院の先生たちの言うことをしっかり守るのよ。」
「うん、わかった。」
私の名前はネル。今年で八歳です。お母さんは、キリです。お父さんは私が二歳の時に冒険者っていうお仕事をしていて、そのお仕事の最中に死んでしまったそうです。
小さい時だったので、お父さんの顔は覚えていないの。
私達は、現在町の城壁の中にある、お家に住んでいます。ちょっと前までは、城壁の外にあったテント村に住んでいました。
お母さんは、その時は大きな怪我をしていて、熱を出し寝込んでいました。元々は町からずっと南にある村から、この町の噂を聞いてお母さんと一緒にやって来ました。
お母さんは、この町は今景気が良いから、お仕事があってお金を稼げると言って、村を出てきました。
景気ってなんだろう?お母さんに聞くと、町全体が賑やかになっている事だと笑って教えてくれました。
ただ、この町に着く直前に、お母さんが狼に襲われた私を助けるために、右腕を噛み千切られてしまい、町に着いて直ぐに熱を出して寝込んでしまいました。
私一人では食べ物も用意出来ません。お腹が空いていたけど、お母さんの看病もしないといけないので我慢していました。そんな日のことです。
「私は修行の旅をしている正神教の司祭です。このテント村の中で怪我や病気、何らかの理由で体が欠損している者がいるなら、私の所に連れてきなさい。動けないようなら私をその者の居る場所に連れていきなさい。神のお慈悲で全て治療して差し上げる。勿論、お金は一切いらない。私の信仰の為の修行なのでな。誰か困っておる者は居らぬか?」
テントの中で、お母さんを見ていたら、テントの外でそう叫ぶ男の人の声が聞こえた。何事かとテントの外に出ると、教会の人が着ている服を着た人がこちらに背中を見せながら大きな声を出しているの。お母さんを治して貰えるのかな。お金ないけど、診てくれるってさっき言っていたし、頼んでみよう。
「司祭様。本当にお母さんの病気治してくれるの?」
振り向いた司祭様は白い仮面を被っていました。わたしビックリしてしまい、思わずすくんでしまいました。でも、お母さんを治してもらいたいので、怖いのを我慢してお願いしました。
「ああ、任せなさい。お嬢ちゃんのお母さんはどこかな?」
しゃがみ込んで、そう私に聞いてきたので、お母さんが寝ているところに案内したの。
テントの中に入ると、司祭様は周りを見回し、何か呟くとテントの中がいきなりピカッて光って驚いたよ。
それからお母さんの寝ているベッドに近付いて、また何かブツブツ言うと、今度はお母さんの右腕がピカピカ光出して、眩しかったです。
何度か光った後に、一番眩しく光った後に、顔色が良くなったお母さんが二日ぶりに目を覚ましたの。
「お母さん!お母さん!」
「・・・・ネル?!え、貴方は誰なの?どうしてここに?」
お母さんは目を覚ましたけど、私を背中に庇って司祭様に聞いていたの。
「私は正神教会の者だ。修行の旅をしている。この町に着いたのでな、修行の治療行為を行っている。お前の娘がお前を治して欲しいと私に訴えたのでな、治療を施した所だ。あのままでは、腕の怪我の毒によって熱を出して死んでいただろう。」
「え、腕?!あああ、私の腕が元に戻ってる!」
「お母さん、治ったの?」
「ええ、ええ。お母さんの怪我は治ったのよ。」
良かったよ。お母さん治って。自然と涙が出てきた。お母さんと抱き合ってよろこんでいた。
「お母さん。腕は治ったが、体力が落ちているし、娘さんを見ても、食べてない様で、栄養が足りていないようだ。この紹介状を渡すので教会に行き司祭殿に見せなさい。こんな不衛生なテント暮らしではなく、住まいも仕事も紹介してもらえて子供の面倒も見て貰えるようになる。あと、暫くの間の生活費にこれも受け取りなさい。」
司祭様はそう言って、紹介状と袋を渡してきた。
「治して貰うだけでも、ありがたいことなのに、このお金は受け取れません。」
「これは、たまたま神のお情けが下された物だと思いなさい。貴女はこの子をしっかりと育てる使命があります。その為のお金です。遠慮無く受け取りなさい。」
司祭様は、そう言ってお母さんに袋を握らせていたわ。
お母さんは、まるで神様にお祈りをするように司祭様を拝んでいたわ。どこから出したのか判らないけど、肉串を一本ずつ出して、お母さんと私に渡してくれたの。
今まで食べた中で、一番美味しかったです。
その後も、司祭様は同じテント村の人達を次々に治して行ったの。
怪我や病気をしていた人全てを治して、町の中に戻られて行ったわ。
その日は、町ではお祭りだったみたいで、お母さんと久しぶりにお腹いっぱいになるまで食べ物を食べました。
何日ぶりかな。お母さんから、あの司祭様に感謝しないとねと言われました。明日、教会に渡された手紙を持って行くとお母さんが言うので、あの司祭様に会えるかな。お顔は仮面で分からなかったけど、声は優しいお兄ちゃんだったな。また会えたら、お礼を言わないとね。結局私、あの後に『ありがとう』って言えなかったから。今度は忘れずにキチンと『ありがとう』っていうんだ。
「お母さん、行ってらっしゃい。」
「養護院の先生たちの言うことをしっかり守るのよ。」
「うん、わかった。」
私の名前はネル。今年で八歳です。お母さんは、キリです。お父さんは私が二歳の時に冒険者っていうお仕事をしていて、そのお仕事の最中に死んでしまったそうです。
小さい時だったので、お父さんの顔は覚えていないの。
私達は、現在町の城壁の中にある、お家に住んでいます。ちょっと前までは、城壁の外にあったテント村に住んでいました。
お母さんは、その時は大きな怪我をしていて、熱を出し寝込んでいました。元々は町からずっと南にある村から、この町の噂を聞いてお母さんと一緒にやって来ました。
お母さんは、この町は今景気が良いから、お仕事があってお金を稼げると言って、村を出てきました。
景気ってなんだろう?お母さんに聞くと、町全体が賑やかになっている事だと笑って教えてくれました。
ただ、この町に着く直前に、お母さんが狼に襲われた私を助けるために、右腕を噛み千切られてしまい、町に着いて直ぐに熱を出して寝込んでしまいました。
私一人では食べ物も用意出来ません。お腹が空いていたけど、お母さんの看病もしないといけないので我慢していました。そんな日のことです。
「私は修行の旅をしている正神教の司祭です。このテント村の中で怪我や病気、何らかの理由で体が欠損している者がいるなら、私の所に連れてきなさい。動けないようなら私をその者の居る場所に連れていきなさい。神のお慈悲で全て治療して差し上げる。勿論、お金は一切いらない。私の信仰の為の修行なのでな。誰か困っておる者は居らぬか?」
テントの中で、お母さんを見ていたら、テントの外でそう叫ぶ男の人の声が聞こえた。何事かとテントの外に出ると、教会の人が着ている服を着た人がこちらに背中を見せながら大きな声を出しているの。お母さんを治して貰えるのかな。お金ないけど、診てくれるってさっき言っていたし、頼んでみよう。
「司祭様。本当にお母さんの病気治してくれるの?」
振り向いた司祭様は白い仮面を被っていました。わたしビックリしてしまい、思わずすくんでしまいました。でも、お母さんを治してもらいたいので、怖いのを我慢してお願いしました。
「ああ、任せなさい。お嬢ちゃんのお母さんはどこかな?」
しゃがみ込んで、そう私に聞いてきたので、お母さんが寝ているところに案内したの。
テントの中に入ると、司祭様は周りを見回し、何か呟くとテントの中がいきなりピカッて光って驚いたよ。
それからお母さんの寝ているベッドに近付いて、また何かブツブツ言うと、今度はお母さんの右腕がピカピカ光出して、眩しかったです。
何度か光った後に、一番眩しく光った後に、顔色が良くなったお母さんが二日ぶりに目を覚ましたの。
「お母さん!お母さん!」
「・・・・ネル?!え、貴方は誰なの?どうしてここに?」
お母さんは目を覚ましたけど、私を背中に庇って司祭様に聞いていたの。
「私は正神教会の者だ。修行の旅をしている。この町に着いたのでな、修行の治療行為を行っている。お前の娘がお前を治して欲しいと私に訴えたのでな、治療を施した所だ。あのままでは、腕の怪我の毒によって熱を出して死んでいただろう。」
「え、腕?!あああ、私の腕が元に戻ってる!」
「お母さん、治ったの?」
「ええ、ええ。お母さんの怪我は治ったのよ。」
良かったよ。お母さん治って。自然と涙が出てきた。お母さんと抱き合ってよろこんでいた。
「お母さん。腕は治ったが、体力が落ちているし、娘さんを見ても、食べてない様で、栄養が足りていないようだ。この紹介状を渡すので教会に行き司祭殿に見せなさい。こんな不衛生なテント暮らしではなく、住まいも仕事も紹介してもらえて子供の面倒も見て貰えるようになる。あと、暫くの間の生活費にこれも受け取りなさい。」
司祭様はそう言って、紹介状と袋を渡してきた。
「治して貰うだけでも、ありがたいことなのに、このお金は受け取れません。」
「これは、たまたま神のお情けが下された物だと思いなさい。貴女はこの子をしっかりと育てる使命があります。その為のお金です。遠慮無く受け取りなさい。」
司祭様は、そう言ってお母さんに袋を握らせていたわ。
お母さんは、まるで神様にお祈りをするように司祭様を拝んでいたわ。どこから出したのか判らないけど、肉串を一本ずつ出して、お母さんと私に渡してくれたの。
今まで食べた中で、一番美味しかったです。
その後も、司祭様は同じテント村の人達を次々に治して行ったの。
怪我や病気をしていた人全てを治して、町の中に戻られて行ったわ。
その日は、町ではお祭りだったみたいで、お母さんと久しぶりにお腹いっぱいになるまで食べ物を食べました。
何日ぶりかな。お母さんから、あの司祭様に感謝しないとねと言われました。明日、教会に渡された手紙を持って行くとお母さんが言うので、あの司祭様に会えるかな。お顔は仮面で分からなかったけど、声は優しいお兄ちゃんだったな。また会えたら、お礼を言わないとね。結局私、あの後に『ありがとう』って言えなかったから。今度は忘れずにキチンと『ありがとう』っていうんだ。
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