上 下
347 / 572
第十四章 イーストン解放編

第278話 相談と一服。②

しおりを挟む
    サウルの淹れてくれたお茶を飲んで、一服した所で話の続きを始める。

    「さて、話を戻すがスメラギ家に会いに行き、戦いの大義となる書状を書いて貰った訳だが、それがこれだ。」

    そう言って、インベントリィからスメラギ家に書いて貰った書状を出して皆に見せる。

    「・・・・閣下これはもしかして・・・。」

    レナードが文章を読んでから呟くが最後まで言わずに黙る。同じように、書状を見たソニアはハッキリと言葉にだす。

    「あら、これって読みようでは、ショウ様を新しい統治者と認めたとも読めますわね。」
「やっぱ、そう思う?それで、困ったことが起きてきたわけだ。」
「コーチ、何が起きたのでしょう?」
「イーストンの民の気風らしいのだが、押し付けられた統治者を認めないってのがあるそうで、帝国に対してはそのお陰で反感を持ち続ける事になって、ある意味こちらとしては都合は良いが、イーストン西部の民は自分達の統治者は力が有るもので、実力によって西部を切り取った本人でなければ納得しないぞという風習らしい。そうなると、どうしても私が統治者とならざるを得ない状況になるらしい。まぁ、領地が増えるのはまだ良いが、その場所が飛び地で、本拠のツールよりも広いってのが問題なんだよ。しかも、王宮にはまだ話してない内にこんなことになったので、勝手するなと怒られそうだし。如何したものか。皆に相談なんだが?」
「あら、そんな事なら大丈夫と思いますわよ。明日、早速王宮へ報告に行けば、多分認められると思いますわよ。」
「ソニア、それ本当かい?」
「ええ、無断で実行は色々不味いでしょうが、事前に報告しておけば、イーストンの西部を領地として、認めて下さると思いますわよ。だってまだ頂いていない勲功が色々ありますからね。その分として認めて貰える筈ですわよ。」
「そうですわよ。コーチは王国の為に、今まで数えきれない功績を挙げているのですから、その位のこと認めて下さいますわよ。」
セイラまでが、そんなことを言い出す。

    「分かった、事後報告ではなく、明日昼過ぎに報告に上がろう。その結果で考えよう。」

    取り敢えず、明日王宮へ報告に伺い、その結果で今後をどう行動するか、考えることにした。

    「よし、書状の件は取り敢えず置いておくとして、明後日の朝にはヒラドの攻略を始めるぞ。レナード、そこで騎士団の出陣を命じる。まず、敵の戦力の要である、駐留軍を崩壊させる。やり方としては、一万の駐留軍のうち、七千人以上が奴隷兵との報告を受けている。そこでだ、その奴隷兵を隷属魔法から解き放つ。その上で、こちら側に寝返りさせる。ムラマサ達にそいつらを取り纏めさせて、残りの生粋の帝国兵は魔法で動けなくさせる。騎士団の皆には動けなくなった帝国兵の捕縛と魔法に抵抗して、まだ動ける者の対処をお願いする。良いね?」
「承知しました。」
「あと、食糧を確保したいので、輸送船や食糧庫の早期の確保もしたい。兵站を確保しないと、軍を維持できないからね。これらの捜索も頼むよ。」
「承知しました。」
「領事や駐留軍の首脳部は逃がさない様に注意してくれよ。」
「勿論です。」
「駐留軍を潰して、領事達首脳陣を確保したら、魔法で街の民衆に事情を説明して、ヒラドは帝国から独立したことを宣言する。以後、我らの手助けをしてくれる者を呼び掛けて、新たに行政府を作り直す。他の都市は、まずヒラドが治まってから、攻めることにする。一度に解放しても正直そのあとが手が回らないのが実情だからね。確実にここは行くよ。」
「成る程。了解です。」
一旦言葉をきって、解っているか、レナードの顔を見るが、大丈夫の様だ。

    「続けるよ。ヒラド解放後は、現地の民の力も借りて、街の統治機関を整備する。汚職役人はこの段階で全て淘汰する。まあ、捕まえて公開裁判だな。当人達は全て死んで貰うがね。」
「・・・・。」
「あのう、少し厳しいのではないでしょうか?」

シーラが、優しいことを言い出す。
だが、私はその意見を突っぱねる。

「悪いが見せしめだからね。厳しいのは当たり前さ。それでなければ、効果は無いからね。それに私はね、元々役人や権力者の犯罪が一番嫌いなんだよ。権力に近い者が、権力を傘にきて汚職を行うなんて言語道断だ。仕事が出来るとか以前の問題だよ。役人なんて者達は、自分で何らかの生産活動をしている訳ではない。言ってみれば、街の人の税金で食わせて貰っている身なんだから、街の為に仕事をするのが当然で、汚職をするなんて有ってはならない事だ。そうじゃないかい?」
「はい、そうですが・・・。」
歯切れ悪く返事するシーラ。
「・・・まあ、犯した罪の内容では、死罪でなくて他の刑罰にしても良いけど。ある意味、こっちの方が厳しいかもしれないがね。フフフ。」
『・・・・。』

一同、静まり返る。気分を改めて話を続ける。

    「ごほん。そして、統治機関の整備と同じく軍の整備も進める。当座の目標は兵数一万だ。一度には募集はしない。段階的に増やしていくつもりだ。ここまで整備できたら、他の街の攻略に手をつける。攻略自体は隷属魔法の解除以外は軍の指揮官に任せる。その時はサウスラーニの解放に手を出しているから、イーストンの後の事は任せることにする。取り敢えず、こんな所だ。質問はあるかい?」
「帝国からの援軍に対しては、どの様に?」
「その事だが、何万出してくるかは分からないが、イーストンに来るためには海を渡らないといけないわけだ。なので、船ごと海に沈んでもらうよ。どんなに兵数がいたとしても、船が無くてはイーストンには来られないからね。」
「成る程。判りました。」

レナードは何度も頷いて、納得している。

    「まあ、大まかな所はこんな感じだ。駐留軍をいかに手際よく無力化するかが要だな。決行は朝の八時だ。七時半にはイーストンへ騎士団は移動して置くように。駐留軍が散り散りになる前に一気にいく。頼んだぞレナード。」
「はっ!お任せください、閣下。」

    いよいよイーストン開放の下準備は整った。味方への根回しは済んだ。あとは王宮へ事情と段取りを説明して、理解頂かないといけないわけだ。あー頭痛いぜ!



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

最強執事の恩返し~大魔王を倒して100年ぶりに戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。恩返しのため復興させます~

榊与一
ファンタジー
異世界転生した日本人、大和猛(やまとたける)。 彼は異世界エデンで、コーガス侯爵家によって拾われタケル・コーガスとして育てられる。 それまでの孤独な人生で何も持つ事の出来なかった彼にとって、コーガス家は生まれて初めて手に入れた家であり家族だった。 その家を守るために転生時のチート能力で魔王を退け。 そしてその裏にいる大魔王を倒すため、タケルは魔界に乗り込んだ。 ――それから100年。 遂にタケルは大魔王を討伐する事に成功する。 そして彼はエデンへと帰還した。 「さあ、帰ろう」 だが余りに時間が立ちすぎていた為に、タケルの事を覚えている者はいない。 それでも彼は満足していた。 何故なら、コーガス家を守れたからだ。 そう思っていたのだが…… 「コーガス家が没落!?そんな馬鹿な!?」 これは世界を救った勇者が、かつて自分を拾い温かく育ててくれた没落した侯爵家をチートな能力で再興させる物語である。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

【完結】転移魔王の、人間国崩壊プラン! 魔王召喚されて現れた大正生まれ104歳のババアの、堕落した冒険者を作るダンジョンに抜かりがない!

udonlevel2
ファンタジー
勇者に魔王様を殺され劣勢の魔族軍!ついに魔王召喚をするが現れたのは100歳を超えるババア!? 若返りスキルを使いサイドカー乗り回し、キャンピングカーを乗り回し!  経験値欲しさに冒険者を襲う!! 「殺られる前に殺りな!」「勇者の金を奪うんだよ!」と作り出される町は正に理想郷!? 戦争を生き抜いてきた魔王ババア……今正に絶頂期を迎える! 他サイトにも掲載中です。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...