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第十四章 イーストン解放編

第276話 紛らわしい書き方はしないで下さい。

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    「仮面剣士様、貴方はスメラギ家から正式に叙された新たなイーストン西部地域を支配する御方となりました。書状には、そのように書かれております。以後は拙者は殿にお仕え致したく、お願い申し上げます。」
「拙者も同じくお仕え致します。どうかお許しを殿。」
「え?!」

    なんか当初の予定と違うんだけど。どうしましょ。

    「いやいや、これは私が統治者を決めて良いと、スメラギ家に代わって決めて良いと言う書状なのだよ。私が新たな『将軍』ではないんだけど。」
「いいえ、貴方こそが、新たな『将軍』です。今のイーストンに帝国からの独立を思い描く者はいても、実行する者はいないでしょう。全ては行動をし、勝ち取った者の物なのです。でなければ、イーストンの民が納得しません。」
「何もしてない者が、支配者になる事は、納得いきません。貴方様が切り取った土地は貴方様の土地です。イーストンの西部の民は実力者でなければ従いません。」
「と、取り敢えず、この件は後にしよう。まだ取り返してもいない訳だからね。いいね?」
「ご命令とあれば、従いまする。」
「殿のご下命に従いまする。」

(ちょっと、困ったぞ。統治者を探しても、納得しない者が出てきた。どうしたものか。)

    意外な展開に、正直困ってしまった。誰に相談したものか。
兎に角、決行日は決めた。明後日だ。人手は明日か当日ツールから連れてこないといけないな。騎士団を使うか。奴隷兵を解放したらそれを取りまとめないといけないしな。他の街を攻略する時は、その兵士を使おう。士気も上がるし。あと備蓄している食糧をこちらで確保して、兵士を維持出来る様にしないとね。何人兵隊に残ってくれるかが問題だけどね。七千の奴隷兵士の内、五千残れば有難い。少なくともイーストンの守備兵に三千は欲しいな。隊長としてムラマサ達三人を千人隊長にして、一週間の内に使える様に整備しないとね。敵を潰すのは私がやれば良いが、街を占領するには人手がどうしてもいるからな。出だしが勝負になるね。

    (ヒラドを攻略した後の手立てを考えているが、半分以上現実逃避だね。本心はやはり、どうしよう。変なことになっちまったなぁだ。)

   ( 私が『将軍』?!普通こんな怪しい仮面の人物を認めないだろうに。イーストンの人って、どうなってんの?!一旦ツールに帰って皆に相談だな。
もう、夕食の時間になるだろうから帰るか。)

    「ハットリ、モチヅキ。二人ともすまないが、今日は一旦帰る。明日またくるので、他の者が戻ったなら、決行は明後日になると言って置いてくれるか?」
「解りました。お言いつけの通りに致します。」
「承知しました。」
「では、後は頼む。〈リターン。〉」

    目に映る光景は、執務室に変わっていた。
机の上の呼び鈴を鳴らし、仮面を外し収納して待つと、ノックの後にサウルが入ってくる。

    「お帰りなさいませ、旦那様。今丁度、夕食の支度が整った所でございます。」
「もう、そんな時間かい。ありがとう。直ぐに着替えて向かうよ。それと、先日連れてきた、イーストンの家族はどうしているかな?」
「はい、皆様ご用意した一軒家に移られました。当座の生活費をお渡ししてあります。」
「なら、大丈夫かな。時たま見てやってくれるかな?」
「承知致しました。」
「じゃあ着替えてくる。」

    そう言いのこして、寝室に移動する。冒険者スタイルから普段着に着替えてから食堂に向かった。

    食堂には、既にいつものメンバーが揃っていた。

    「お待たせしたようだね。済まない。早速始めてくれ。」

    椅子に座りながら、メイドさん達に声をかけて、給仕が始まる。

    席順は、私がイーストンに行く少し前から正確に言うとディートリンデが来てから以前と少し変わった。
私の左手側には手前から、ソニア、セイラ、シーラの許嫁に続き、アイリスとアルメイダの五人が座る。
右手側には、手前にディートリンデ王女、レナード、サウル、の順だ。王女付き侍女のアリーシャは同席するように当初誘ったが、エルフの王宮では、使用人は主人達と同席して食事はとらないと強く断られ、この席順となったわけだ。彼女は、ウチのメイドさん達と一緒に食事をしている。
そんな中で、ソニアが聞いてくる。

    「ショウ様、今日はいつもより少しお帰りが遅かったようですが、何か事がありましたので?」
「イーストンでの事前の下準備がやっと一段落してね。その為に少し根回しをしていたら、いつもよりちょっと遅くなってしまったのさ。」
「ほう、閣下いよいよですか。」
「レナード、食事の後に、細かい詰の相談をしたいから、執務室に来てくれ?」
「承知しました。」
「そうだな、アイリスにも、少し話があるから、同席してくれるか?」
「わたし?分かったわ。」
「さて、食事の用意が整ったようだね。では、『いただきます』。」
「いただきますにゃ。」
私とアルメイダは合掌して、皆はそれぞれの神様へお祈りを済ませてから、料理に手をつける。

    今晩のメニューは、彩り野菜の酢豚擬きだ。うーん、銀シャリが欲しいおかずだね。あと、白身魚のフライにタルタルソースがのっており、これも人気の定番だ。ディートリンデ王女を見ると、凄い勢いで料理を食べている。細身なのに何処に入っているのか、不思議になるほどだ。
ウチの飯は、王宮で出されている物よりも、美味しいと言って、勢い良く食べている。
私も久々のタルタルソースを堪能させて貰いました。

「「いただきました(にゃ)。」」

食後の挨拶をして、皆一旦席を立つ。

    「サウル、済まないが、執務室にお茶を頼む。」
「承知しました。」
お茶を頼んだあと、執務室に移動する。

    執務机の椅子にすわり、待っていると、ノックの後に何故かソニア達許嫁ズとレナードとアイリスとディートリンデ王女が入ってきた。その光景に頭が痛くなりながらも、まず、ソニア達許嫁ズに顔を向けて、『何かな?』と絞り出す。

    「あら、いよいよイーストンで行動に移される様ですので、何かお手伝い出来ればと思いまして、詳しいお話をお聞きしたかったのですわ。」

予想通りの返事に、頭を悩ませる。そして、ディートリンデ王女に顔を向けて同じく聞く。

    「ディートリンデは、何故ここに?」
「わたくしは、アイリス様の護衛ですから、アイリス様の居られる場所にはどこでも同席しますわ。」
「一応、口外禁止の内容なので、席を外して欲しいのですが?」
「勿論口外は致しませんわ。仕事中に見聞きしたことは、口外しないのが護衛のお仕事のマナーとお聞きしていますから。」
 
    冒険者のルールを言っているようだが、どうしたものかと、頭を抱え、考え込む私だった。






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