上 下
331 / 572
第十四章 イーストン解放編

第262話 さっさと約束を果たそうか。

しおりを挟む
    収穫祭の翌日、 再びイーストンのヒラドに戻り、当初の予定通りにサウスラーニに渡って、帝国内に囚われている将軍家の末っ子を解放する為の作戦に移る。

    ヒラドにはイーストンの三人組とサウスラーニの二人、最後にレナードに付いてきて貰った。本当は一人で動こうかと思っていたが、一人はダメと許嫁ズに言われて、レナードが着いてくることになった。

(チッ。私はAランク冒険者なんだがなぁ。)

    『転送の鏡』を通り抜けた後、鏡をインベントリィにしまいこむ。

    「さて、キャプテンに会いに行きますかね。イチモンジ殿、人質の解放に向かいますから、一緒に来てください。他の二人はヒラド以外の土地の情報を集めておいてくれるかな?特に反乱勢力のリーダー達についてや、兵力や指揮官の能力性格についてね、それによって今後の行動が決まって来るから頼みますよ。あとオサフネ殿、人質を助けたあとは、次の行動は君の家族の救出になるから、今の内から移動できるように準備もしておくように。頼んみますね。」
「承知です。」
「じゃあ行こうか。」

三人を引き連れて、商会のある母屋に移動する。

    「閣下、お待ちしていましたよ。早速、出港したいので、早く船に乗船して下さい。」
「済まないね。遅れたか?早速乗船するよ。」

    キャプテンに急かされて港に移動して、イーストンに来るときに乗った船に再び乗船する。

    「閣下、イーストンに来た時とは、随分と人数が減ったようですね。」
「まあ、これからは帝国本国に潜入工作するからね。いろんな意味で目立つ人には遠慮して貰ったよ。」
「成る程。そうでしたか。」
「それでキャプテン。いつ頃サウスラーニの港に着くのかな?」
「今からですと、午後の三時頃にシャングー港に到着かと。」
「うん、分かったよ。その間は任せるから、何か事件があったら、呼んでくれるかな?」
「はい、承知しました、閣下。」

    船倉の自分の部屋に戻り、ハンモックに横になりながら、周辺のマップを表示する。

    「〈マップ表示・オン〉。」

    神様からの強化によって、表示エリアが広くなった為に、まだイーストンの港だが、マップの縮尺を最小にすると、東大陸の端がマップの西端に表示されている。サウスラーニの港は表示されている場所からもう少し西のようだ。

    「〈サーチ・クロイセン帝国海軍〉。」 

    (ほほう、ここが帝国の海軍基地か。さて、どうするかな?今、〈メテオ〉を一発落として損害を与えるのも手だか、魔法のせいで津波が来たら船に損害が発生する可能性があるし。使うならもっとサウスラーニに近付いてから、魔法を使うべきかな。)

    マップを見て、あれこれ考えていると、船が動き出すのを感じる。
サウスラーニでの行動の打ち合わせをするために、メーガンの船室に向かう。

    「ちょっと失礼するよ。」
「これは閣下、如何されましたか?」
「ちょっとサウスラーニの事を聞きたくてね。シャングーって街、どんな所なのかな?」
「シャングーですか?彼処あそこは、王都に次いで二番目に大きな港町ですね。サウスラーニ主要五都市の内の一番東に位置する街ですね。」
「そうすると、帝国の帝都クロイツェルまでどの位の距離があるのかな?」
「そうですね。シャングーから馬だと、四、五日程ですかね。」
「帝都に向かうまでに、気を付ける場所は?」
彼処あそこからだと、旧国境にアシュラミ砦いう関所が有ります。そこを抜ければ次は帝都の城門までは問題ないはずです。ただ、アシュラミ砦では人の出入りは厳しくチェックしているので、何かしらの通る抜ける手だてがないと・・・。」
「ああ、それは何とかするよ。」
「それに、足の馬ですが、馬は帝国軍に全て優先的に徴発されてしまっており、多分借りられないと思いますよ。」
「何?そうか。それは何とかしないとな。他に注意点は?」
「街道沿いは、盗賊が多いですね。もとサウスラーニ兵士や農民崩れや冒険者崩れが盗賊団を組んで、旅人を襲っているそうです。」
「帝国の衛兵や騎士団は盗賊達を何故取り締まらないの?」
「取り締まるなんて。アイツらはもっと悪どい奴らですよ。盗賊のふりして、商人を襲ったりしていますからね。ある意味盗賊よりも質の悪い奴らですよ。」
「なにぃ?!守るべき衛兵や騎士団が盗賊を捕まえるのではなく、率先して盗賊行為をしているのか。許せんな、そいつらは。」
「はい、なので街道で帝国兵と出会ったら注意して下さい。」
「わかった。ありがとう。」

    その後は、メーガンと次に会う場所の相談をして、自分の船室に戻り、昼に非常食を食べると、一寝入りする。

    「閣下、起きてください。目的地に着きましたよ。」

    レナードに起こされて、目覚める。大陸の南に来たせいか、船室にいても蒸し暑さを感じる。船室から出て、レナードとイチモンジを連れて甲板に出る。甲板で渋い顔で入港手続きをしているキャプテンを見つけると、手続きが終わった頃に近付いて話しかける。

    「渋い顔でどうした?」
「ここの港も入港料が値上げしてましてね。この調子で値上げされると商売上がったりですよ。閣下、何とかしてくださいよ。」
「まあ、一年以内には動きがあるよ。」
「そうですか?まあ、ウチが潰れる前までには頼みますよ?」
「任せておけ。」

    そんな会話をしている内に、接岸が終了して、渡し板が掛けられる。
    レナードとイチモンジを連れて船から降り、早速街から出るために北口の城門に向かった。男三人組の為か、冒険者カードを見せることで、スンナリと街から出る事が出来だ。
城門を抜けると、門から少し離れた場所で一旦止まる。

    「レナードとイチモンジ殿はここで待っていてくれるか?馬を連れてくるから。」
「馬ですと?何処から借りてくるのですか?」
「ああ、家の馬を連れてくるんだよ。まあ、ちょっと待っていてくれるかな。レナード、あとの説明宜しくな。」

周りの風景や念の為にマップで位置を確認してから、移動をする。

「〈リターン〉。」

    目の前の景色が歪み次には執務室の中に変わっている。
執務机の呼び鈴を鳴らす。
暫く待つとサウルが入ってきた。

    「お帰りなさいませ、旦那様。何かご用でしょうか?」
「馬を三頭用意してくれるか?」
「は?三頭でございますか?」
「うむ。次の目的地までの足が必要でな。」
「成る程。承知しました。ご用意出来たらお呼び致しますね。」

    そう言って、部屋を出ていった。そして、十分程で部屋に戻ってくると、馬の用意が出来たというので、早速玄関口に移動する。

    立派な軍馬三頭を引き連れた馬番が待っている所に寄っていく。

    「ご苦労様。有難うね。」

そう、伝えて馬の手綱を握り、馬と共に〈テレポート〉をする。

    「閣下、お待ちしていました。」
「伯爵様、一体どうやって馬を??」
「あれ?レナードからまだ聴いてないの?」
「いえ、待っていれば分かると言われて。」
「そう、まあ良い。私は時空間属性の〈テレポート〉という魔法が使えてね。一度行った場所には自由に移動できるのだよ。」
「なんと、伝説の転移魔法をですか。それで納得しました。『若』を助け出したあと、どうやって逃げるのか、不思議でしたが納得です。」
「当然だけど、口外しないでね?分かったね?」
「勿論承知です。恩人に恩を仇で返す様なことはしません。剣に懸けて誓います。」
「うん、よろしく。じゃあ、早速出発しようか。」

    各自馬に乗り、北に向かって伸びる街道を帝都のクロイツェルに向かって馬を走らせ始める。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

【完結】転移魔王の、人間国崩壊プラン! 魔王召喚されて現れた大正生まれ104歳のババアの、堕落した冒険者を作るダンジョンに抜かりがない!

udonlevel2
ファンタジー
勇者に魔王様を殺され劣勢の魔族軍!ついに魔王召喚をするが現れたのは100歳を超えるババア!? 若返りスキルを使いサイドカー乗り回し、キャンピングカーを乗り回し!  経験値欲しさに冒険者を襲う!! 「殺られる前に殺りな!」「勇者の金を奪うんだよ!」と作り出される町は正に理想郷!? 戦争を生き抜いてきた魔王ババア……今正に絶頂期を迎える! 他サイトにも掲載中です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...