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第十三章 何でも準備中が一番楽しいのさ。

第245話 ドワーフを見分けるだと?無理、私には出来ません。

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    翌日になり、王都にいる二人を迎えに行く。〈テレポート〉で王都の屋敷に早速飛ぶ。
執務室の机の上の呼び鈴を鳴らすとカインが部屋に入ってきた。

    「お帰りなさいませ、旦那様。」
「ああ、たたいま。早速だが、ソニアとセイラを迎えに行きたいから、馬車の用意をしてくれるかな?」
「はい、畏まりました。」

    そう返事をすると、馬車の用意をしにカインは部屋を出た行く。
椅子に座り、待っている間にふと思い付いた。

    それは王都にも帝国からの奴隷密偵がいるかもしれないということだ。いれば全部解放することで、帝国の情報収集力を落とせて、あわよくば、混乱させることが出来るかもしれないと。思い付いたが吉。早速手を打つことにする。

    「〈マップ表示・オン〉。〈サーチ・帝国からの奴隷密偵〉。」

    (おお!いるいる。流石王都を調べる為なのかな。・・・全部で四十四人か。いるねぇ(笑)。細かい説明は面倒だからな。解呪すると伝えて一方的にやってしまおう。)

    「〈マルチロック〉表示赤。〈テレフォン〉。この声が聞こえる者達よ。これからお前達の隷属魔法を解呪して自由にしてやる。その後は己が思うように動け。〈マルチロック〉〈ディスペル〉。」

    言うだけ言うと、一方的に解呪する。
マップを見ると赤い光点が皆白い光点になり、一斉に慌ただしく動き出している。

(さて、この後どうなることやら。あとの事は知りませ~ん。(笑))

    こんなイタズラの様な事をやっていると、カインが馬車の用意が整ったと言ってきた。

    玄関先の馬車に乗り込み、お城へ向かうように伝える。
十五分程で城に着くと、馬車には待ってて貰い、城のいつもの応接室に通される。

    ソファーに座って待っていると、陛下と王妃様、そしてソニアが連れだって皆笑いながら部屋に入ってきた。
立ち上がり、頭を下げて迎える。

    「よいよい。頭を上げて座ってくれ。」

陛下はそう言うと、ソファーに座るように勧めてくれた。
互いに座ると陛下から話しかけてくる。

    「オオガミ、有難う。ソニアの体、確かに完治していた。すっかり元気になって、とてもあの病に臥せっていた娘とは思えない程元気だ。逆に、ちと元気が有りすぎるようでもあるな。(笑)」
「嫌ですわ、お父様。元気が有りすぎるなんて。ショウ様にわたくしが、お転婆みたいに思われてしまいますわ。」
「いやいや、流石私と王妃の娘。元気になったら王妃にそっくりなのでな。はははは。」
「貴方。それは、私もお転婆だと言うのですか?」

王妃様が口許は笑っているが、目が笑っていない顔で陛下に問い質す。

「いやいやいや!ソナタはいつまでも明るく美しいと言っているのだよ。」
「あら、やだ。人前で何を言ってるのかしら、この人は。」
「は~。朝から、お熱いことで。」

いつまでも、ラブラブな陛下夫妻に呆れてしまう。

「コホン。あー、また娘を連れてきてくれるかな?妃も喜ぶのでな。」
「オオガミさん。有難う。ソニアとは色々と楽しいお話が出来て楽しかったわ。また時期を見て連れて来て下さると、嬉しいわ。」
「承知致しました。また機会をみて、お連れしますね。次は遅くても新年のご挨拶の頃になるかと思います。」
「うむ、よろしく頼むぞ。」

    この後、別れの挨拶して、ソニアと共に次のセイラを迎えに公爵邸に馬車を走らせる。


    公爵邸では、馬車を屋敷に返して公爵に面会すると、公爵邸でも再びセイラを連れて来る事を約束させられる。その後その場から〈リターン〉でツールに皆で戻った。時刻はもう少しでお昼になるところであった。

    午前中をかけて、ソニアとセイラを迎えに行って来た。
    陛下夫妻も公爵夫妻も、また娘を連れてきて欲しいと約束させられる。まぁ、許嫁とはいえ普通は結婚までは、娘は親元にいるのが普通だ。
幾ら神様から私に助力するように言われていても、娘の身を心配するのは親として当然の事だろう。ましてや、ソニアは最近まで、熱を出してベッドで寝ている生活だったのだから、余計にその身を心配するのだろうね。

    結婚まで、三年ちょっとだが(意外と短いことに、少し焦るが。)、その間は時期を見て度々実家に帰らせる様にしよう。


    久しぶりに全員揃って昼食をとり、やはり大勢いた方が賑やかで、食べる料理も一味違って感じられる。
    ちなみに、昼のメニューはグラタンと白パンにサラダと野菜スープ付きだ。

    最近少しずつ日中の気温が下がってきている為か、温かい料理が美味しく感じられるようになってきた。グラタンも熱くて、上にかけてあるチーズがオーブンで焼かれたためか焦げていて美味しくなっている。熱いホワイトソースを皆ハフハフしながら食べていたな。

    さて、午後はエチゴヤに行かないとな。
しかし、こんなにマメに働く貴族って、私だけかもしれないな(笑)。
正直ちょっと前までなら、貴族ならもっと仕事しなくて良いように思っていたが、とんでもない。これなら冒険者の方が楽だったな。とにかく、あらゆる事が軌道に乗るまでは我慢しないとね。

    机の上の呼び鈴を鳴らすと、サウルが部屋に入ってくる。

    「お呼びでしょうか、旦那様?」
「済まないが、兵舎の工事現場の視察とエチゴヤに用があるので、馬車の用意を頼むよ。私は酒蔵にいるから呼びに来てくれ。」
「畏まりました。」

    一礼してサウルが用意に向かう。私も『穴堀屋』のガンテツさん達、ドワーフ達に渡すエールを用意する為に酒蔵に向かう。

    私がイーストンに行っている間に渡すエールも冷えたエールにする為に、酒蔵にあるエールの樽の全てにクズ魔石を使って、〈エンチャント〉で〈冷却〉を樽に付与していく。一通り済ますと、今週渡す分のエールの樽ともう一樽余分にインベントリィにしまい込む。
一段落した頃に、サウルが馬車の用意が出来たと、酒蔵に伝えに来た。

    「旦那様、馬車のご用意が出来ました。」
「うん、ありがとう。」

礼を言い、馬車のある玄関口に向かう。

    早速馬車に乗り込み、まずは工事現場に向かって貰う。

    「ガンテツ親方~!!」

    正直に言おう。何人ものドワーフが働いているなかで、いまだにガンテツ親方を識別する自信が私にはない。

(だってしょうがないよな。皆似たような髭を生やして、髪型も同じだし、精々着ている服で見分けるしかないよな。)

なので、いつも大声で親方を呼んで、向こうから来て貰っているのだ。今回も現場の方から、エッホエッホと短い足を高速で動かして、親方が走ってきた。
私の前で止まると、私の肩や背中をバンバンと叩いて、相変わらずの大声で話しかけてくる。

    「おお、伯爵の坊主じゃないか。エールを届けにきてくれたのか?」
「ええ、そうですが、そろそろ私の名前覚えてくれませんか?いつまでも伯爵の坊主でもないでしょうに?」
「ガハハハ!細けぇ事は気にするな。気を使いすぎると禿げるぞ坊主。」
「止してくださいよ。まだ私は十五歳なんですから(笑)。」
「まぁ、人間種は人生短いからな、イチイチ細けぇ事気にしていると、人生終わっちまうぞ。」
「ふぅ・・・、もう良いです坊主で。今週のエールです。ここに置けば良いですか?」
「ああ、ここに置いといてくれ。今日のも冷えたエールだろうな?」
「ええ、全て冷やしてありますよ。親方、そろそろ寒くなってきたけどまだ冷やしたエールで良いのかな?」
「おう、温いのはもうダメだ。キリッと冷えたエールでないと、もう野郎共が暴れだしかねないからな(笑)。」
「マジっすか?」
「おう、大マジだ。」
「工期まで、あと二ヶ月弱ですが、エールを切らさないように毎週持ってきますよ。あと、頼みたいことが有るんですが。」
「頼み?何だ坊主。改まって。」
「今やってもらっている国軍の兵舎が終わったら、次に家の騎士団の兵舎四棟の建築をお願いしたいのですが?」
「お、新しい依頼かい?構わないぜ。特に今の仕事の後は空いているからな。どの位の大きさの兵舎を作れば良いのかな。」
「国軍の兵舎の一部屋よりは少し大きめに部屋を頼みます。一棟に二百人入れる部屋と、一階に厨房と食堂、大浴場を入れて下さい。各階にトイレを三つずつ設けて下さい。後は任せますよ。」
「うーん、そうなると工費は白金貨五枚って所だな。勿論エールの差し入れ付きだ。」
「分かりました。それで頼みます(笑)。」
「じゃ、ちょっと待っていろ。契約書を作らねぇとな。」

    そう言うと、親方は契約書を取りに寝泊まりに使っている丸太小屋に行き、戻って来た時には、手に契約書と羽ペンとインク壺を持って戻ってきた。

(羽ペンか。・・・使いずらいんだよねぇ、あれって直ぐにペン先がダメになるし。万年筆か金属製のペン先でも作ろうかな。)

    その場で契約書を作り、白金貨を五枚渡して契約を交わす。

    「親方、今の工事はいつ頃には終わるのかな?」
「そうさな。あと、四棟で約束の五十一棟と厩舎と倉庫が出来上がるからな。遅くとも、今月中には出来上がるぞ。」
「予定よりも一月も早く出来上がるんですね。」
「当然だ。仕事は丁寧に迅速にがウチのモットーだからな。チンタラチンタラやっていても、良い仕事とは限らないさ。ここが終わったら、すぐにさっきの仕事に移るからな。四棟なら年内には仕上がると思うぞ。」
「私は、これから領外に暫くは仕事で出ているので、工事については、家宰のサウルに申し付けておくので、建てる場所とか分からない事はサウルに聞いてください。勿論、工事期間中は、毎週冷えたエールを差し入れますので、宜しくお願いします。」
「おう、任せろ坊主。きっちりと仕上げてやるよ。ガハハハ。」

    (だから、笑いながら背中をバンバン叩かないでほしいな。痛いし・・・。)

    取り敢えず、要事の一つが片付いたので、次の要事の『エチゴヤ』へ向かうべく再び馬車に乗る。


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