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第十三章 何でも準備中が一番楽しいのさ。

第227話 お出かけするにも準備がいるのさ。

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    イーストンへの潜入工作を決めた翌日。

    私は食後に執務室にこもり、潜入の為の必要事項を纏めている。

    昔の冒険者だった頃のように、思い付いたら即行動とはいけないのが、今の私の現実だ。やはり領主貴族なんて者になると、好きに行動出来なくなるのよね。

    まず、イーストンに行く為には陸路と船による海路の二つある。しかし、陸路では、どうしても王国の南にあるクロイセン帝国の領内を通らなくてはならない。

    まあ、私のことなど知る者はいないだろうが、リスクが高いのは変わらない。    
    そうなると、海路ということになるが、船となればパーシモン商会か、自前の元海賊を使うかになる。しかし、イーストンまでの航路を知っているかとなれば、海賊は難しいだろうな。なら、パーシモン商会の一択だ。これでパーシモン商会もイーストンまでの海路を知らないなら陸路になる。移動時間がかかるから、早目に出かける必要が出てくる。午後にキャプテンに確認しに行くか。

    次に随行人だが、人数はどうしたものか。当然ムラマサ達三人は連れていくが、多すぎると目立ってしまうし少ないと手が足りなくなる。反乱決行の時には、私が魔道具を使って移動させるにしても、それまでの期間の活動の手伝いをしてもらったり、使いに行って貰ったりして貰いたいからな。それを考えると、三から五人は欲しい所だな。
    情報部からは何とか五人出して貰えるので後は、ハン・リーはイーストン出身だから土地勘があると思うので是非連れていきたい。ムラマサみたいにハン・リーの父親のことを知るものが、信用して味方について貰えるかも知れないからね。まあ、そうなれば儲けものだがね。
    早速、レナード団長に相談と留守にするから、事情をサウルにも通さないとな。呼ぶか。

    呼び鈴を鳴らすと、少しして、ノックの後に入った来た。

    「お呼びでしょうか、旦那様?」
「うん、レナード団長を呼んでくれるか、サウルにも同席して貰えるかな。少し話があるから。それに紅茶三人分頼むよ。」
「承知しました。」
一礼してサウルが出ていく。

    待つ間に、未決の箱に貯まっている決済書類を一枚手に取る。内容は以前に報告会であった内容とさほど変わらないが、収支については詳しい数字が書かれている。人員の増加が有った割には、大幅な黒字決済だ。理由としては、塩の収入が予想よりも大幅に伸びた事。公営の戸建て住宅の販売等が人口増加に伴って好調な点だ。

    また、スラムで働けずに困窮していた人達が、少しずつ様々な仕事に就く様になったり、住まいは公営の低額長屋に移動させてスラムから移した。まだ体力的に動けないものは、リハビリの間、孤児院に一時的に収容し教会に面倒を見てもらい、リハビリ回復後は就業の面倒をみる事となっている。スラムだった地区には、人は既に住んでいなくてそこに有った建物は、ほぼ解体と地ならし浄化がすんだので、一般向けの戸建住宅の建設を進めるとあるね。

    最後に十の月の末に収穫祭を執り行うので、出席してくれと書いてあるな。ま、なんとかなるか。イーストンについた頃だから、〈テレポート〉で一度戻っておくのも、良いかな。
うん、順調順調。サインをして、既決の箱に入れてと。。

    コンコン♪
    「はーい、どうぞ。」

    扉が開くと、トレイを持ったサウルとレナード団長が一緒に入ってくる。
椅子から立ち上がり、サウルとレナード団長にソファーをすすめる。私も彼等の対面に座る。

    サウルはお茶を淹れて我々の分と自分の分をテーブルに置いて、自らもソファーに座る。
    淹れて貰った紅茶の香りを楽しみ、一口飲むと相変わらずの旨さだった。

    「それで、閣下お呼びの要件は?」
「うん。実はね、以前からウチにきているイーストンやサウスラーニの人達の事で、彼等の国へ潜入工作に出掛ける件でね。早ければ一週間後遅くても二週間後には出かけるつもりだ。」
「閣下ご自身が行かれなくても良いのでは?」
「いや、私が行かなくては、間に合わなくなるからね。」
「間に合わなくなるとは、何にですか、旦那様?」
「前にも言ったが、どうやらクロイセン帝国がウェザリア王国に再進攻する為に、軍備の再編をしている。あと、一~二ヶ月の内に攻めてくるだろう。    そうなる前に、帝国内で反乱騒ぎを起こす。そうなれば、ウェザリアに攻めてくる余裕はなくなる。前回三万の兵力を失っているからね。戦争しながら国内の反乱を鎮めるだけの余裕は無いだろうな。つまり、ウェザリアは防戦の準備はするだろうが、実際に戦う必要がなくなるだろう。その為にも、出来れば、来月中には事を起こさせたいからね。その為には人任せには出来ないよ。」
「旦那様、承知致しました。お留守の間の事は私にお任せ下さい。ただ、時々はお戻り頂けますか?」
「ああ、有り難いことに私は〈テレポート〉が使えるからね。まず、イーストンに着いて拠点を決めた後に一度は戻るよ。収穫祭には出席したいしね。もし、出席出来ないときは、私の名義でエールを差し入れしといてくれ。」
「承知しました。振る舞い酒ですね。準備しておきます。」
「うん、頼むよ。」
「閣下、どうしても行かれるなら、護衛に何人か着けましょう。」
「なら、人族の男だけ三人で、一人はハン・リーを入れてくれ。」 
「ハン・リーですか。なぜ?」
「あいつは、イーストン出身なんだよ。」
「成る程。分かりました。あと二人は誰に?」
「うーん、レナードこれる?」
「は、ご命令とあればお供させて頂きます。」
「宜しく。あと一人はレナードに任すよ。我々の他に、イーストンから来ている三人も同行するから。」
「承知しました。それでは閣下を入れて全部で七名ですね。」
「そうだね。それから、サウル。」
「はい、何でございましょう?」
「転送の鏡を作って後で渡すから、何か緊急の事があれば、それで知らせて。それと、大きな姿見の鏡の板を二枚用意してくれるかな?」
「姿見でございますか?はい、ご用意致しますが、何にお使いで?」
「うん、転送の鏡の本来の使い方をしようかと思ってね。頼んだよ。」
「はい、承知致しました。」
「あと、明日だけど、朝から外出するから一日宜しく。」
「外出といいますと、どちらへ?」
「うん、久々に訓練を兼ねて、採集をしにね、魔の森に行ってくるよ。」
「閣下、魔の森ですと?なら護衛に誰か着けましょう。」
「いや、ちょっと奥に行くから、いても邪魔。悪いけどね。」
「ならば、私とライガならどうでしょうか?」
「まあ、いいか。正直言って一人の方が行動がしやすいのだけどねぇ。」
「例え、お邪魔だとしても、閣下をお一人だけで行動させるわけにはいきませんので。」
「なら、完全武装で出発出来るように。準備しおいて。」
「分かりました。」
「という事で、明日は朝食後直ぐ出るから、馬車の用意しておいてくれるかな?」
「承知致しました。」

    こうして、以前から考えていた、米の採集に出かけることを決めたのである。

(いよいよお米との対面だ。土鍋か飯ごうを作らないとな。先は長いぜ。)


 
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