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第十二章 正しい貴族家のつきあい方。
幕間54話 とある分隊長の狂想曲。②
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「メイザースさん、もう一本お願いします!」
「ちっ、今日はやけにやる気じゃないか。その気なら相手してやるよ。」
「あざっす!」
俺はカイリー・ミノワ。ツール伯爵家の騎士だ。
この十の月から五人の部下を率いる分隊長となった。
先週は、アーサルトとスティンガーの各分隊と合同で北の魔の森で一週間の討伐訓練を行った。
そこで、人を動かすことが大変な事なのだと思い知る。
一日おきで部隊の指揮官役を交代しながらの戦闘訓練だった。
初めの三日は付き添いの副団長のライガさんから、ことごとくダメ出しをされた。まあ、何とかなってきたのが四日目以降からだった。
それでも、ライガさんから言わせると、五十点だそうだ。相変わらず厳しいぜ。
この訓練をやって、初めは人にやって貰うよりも、自分でやった方が早いのではないかと思うことが何度もあった。しかし、それでは訓練の意味がないので、そこはグッと我慢したよ。
隊長って、なってみて分かったが、こんなに我慢のいるポジションとは思わなかったよ。これなら、平の騎士の方が気が楽だよな。
訓練を開始してから四日目。今日は閣下と団長と何故かセイラ様が視察にいらした。
この日の指揮官はアーサルトだった。昼メシまでは、順調に指揮できていた様に見えたが、本人は全然納得出来ないと言っている。
元々アーサルトは、俺たち三人のなかで一番リーダーシップがあり、三人でいてもアーサルトが話を回していくことが多く、こう言うところでそれが出るのかと少し悔しくもある。
どちらかと言えば、俺やスティンガーは、他の人の事には興味はなく、俺は剣、スティンガーは魔法と、好きなことさえやっていられたら満足だった。その点アーサルトは、特に剣やまして魔法に執着する訳でもないのに、剣では 騎兵科でトップだった。
当時は、人の事なので気にもしなかったが、騎士団に入って才能の差を見せられると、最近は羨ましくなる時があるよ。
今日の昼メシは閣下がマジックボックスに色々な料理を入れて持ってきてくれたので、三日間の味気ない保存食でのメシではなく、いつもの兵舎で食べているような、旨いメシだった。連日の訓練と保存食で落ちてきていた士気も回復して、皆楽しそうにガヤガヤと賑やかに食べている。こういう細かい所に気がつくとは、流石閣下と言うところか。俺より年下とはとても思えないよな。さて、腹も一杯となったし午後も気合いを入れていこうか。
午後になり、何回か魔物のグループを倒して、魔石を取り出していたときだ。
「釣って来ました。オークが五匹。上位種が一匹居ます。注意してください。」
(上位種か、やってやれないことはないが、アーサルトはどう判断するかな?)
「上位種は俺が当たる。カイリー、戦列の指示を頼む。魔法分隊は上位種に集中攻撃をしてくれ、指示したら中断してくれ。その後は俺が直接当たるから。」
「了解だ。」
返事をした途端に森の中から四匹のオークとそのオークよりも二回り大きい体格の剣と木製の盾を持つオークが俺達を見つけると後ろにいたでかいオークがでかい声で吠えると、それが合図なのか、一斉にオーク達がこちらに走り出した。
「あれは、オークナイトだ。気を付けろよ。力もスピードもオークを越えるぞ。」
ライガさんから、注意が飛び、向かってくるオークに対して隊列に指示をだす。
「慌てるな。四匹しかいないんだ。一匹に対して二人以上で当たれよ。よし、向かい打て!」
出来れば俺も斬りかかりたかったが、まずは指揮をするために、一歩引いて隊列全体をみる。まあ、流石というか、当たり前と言うか、騎士団に入れるだけの力がある者ばかりなので、オーク程度では、皆慌てない。着実に四匹を倒していく。それを、確認してから、アーサルトの方を見ると、まさに戦闘中だ。
魔法攻撃を盾で防いだのか、木の盾がボロボロだ。
上体を庇っていたらしく、盾を上に掲げている所に、隙が出来た太腿に切りつける。
「ガァーッ。」
痛みに吠えながら、掲げていた盾を下ろして切られた太腿を庇おうと両手を下げたので、剣を持つ右腕を切り払う。
「ギャアー!」
悲鳴をあげて剣を取り落とした。チャンスと見ているとナイトの右側の首筋を狙った攻撃は盾で防がれてしまう。そこで止まらずに更に右側へ回り込む。盾が届かない位置から、首へ渾身の突きは見事に首に刺さり、そのまま横に払った。この突きは閣下から教わった突きで、確実に倒すための突きと言っていた。その切り口から血が吹き出して足下に溜まっていくと、オークナイトの巨体が沈んだ。
パチパチパチ。
手を叩く拍手の音がして、そちらを見ると拍手の相手は閣下だった。閣下に続きレナード団長もライガ副団長も拍手をしはじめた。
一頻り拍手をし終わると閣下がアーサルトに語りかける。
「アーサルト、良く仕留めたな。指揮もまぁ悪くない。騎士としてやっと一人前だな。だが、やっと騎士としてのスタートラインに着いただけだ。これからも精進するように。良いね?」
「はっ!有難うございます。今後も日々鍛練致します。」
頭を下げて、閣下からの言葉に礼をした。
(くそ、先を越されたか。絶対追い付いてやるぞ。負けないからな。)
その時、羨ましくはあったが、必ず追い付いてやるぞと、心に決めた。
「よし、魔石を取り出せ。斥候は周辺を警戒しろ。」
ライガ副団長の号令でオーク達から魔石が胸から取り出される。アーサルトが取り出した、オークナイトの魔石は、体の大きさに比例して、普通のオークよりも大きさが二回り程違う。ありゃ良い値段で売れるだろうな。初めて見たオークナイトの魔石は色がオークの物よりも赤黒っぽくて、同じオークなのにこんなに違うのかと驚く。
そんなことを考えていると、周辺警戒していた斥候の一人が慌てて走り込んできて、大声で報告する。
「オーガと思われる魔物が、血の臭いに引かれたのか、三匹こちらに接近中です。警戒してください。」
そのまま、団長達の方に走っていくのと同時に、森の中から赤黒い肌をして、上下の犬歯を剥き出しにした、額から一本または二本の角を生やしているプロレスラーのような体をしたオーガが出てきた。
コレがオーガか。名前は知っていたが、俺は初めて現物を見た。体格はいずれも三メートルを軽く越えている。その姿を見たら、初めて見たオーガの姿に身震いをしたよ。緊張のためか、体が動かなくなっていた。その時。
「全体、下がれ!!」
閣下の腹に響く声にハッとして、慌てて後退した。
オーガ達は、手に巨大な棍棒を持ちながらゆっくり進んでくる。どうしたら良いのか、頭の中がぐじゃぐじゃしている中、再び閣下の声が響いた。
「さて、誰がやる?誰もやらないなら、私が全て貰うよ?」
「お待ち下さい、閣下。その様に人がいない言われ様は心外ですな(笑い)。勿論私が行きます。」
「なら、俺も行かねぇとカッコつかねぇな(笑)。」
レナード団長とライガ副団長がそれぞれの武器を手にオーガに向かっていく。残りの一匹は俺が相手しようかと、前に出掛けた時俺の前に先にセイラ様が剣を抜いて飛び出していった。
「セイラ、やるなら付与魔法を掛けてやりなさい。決して力比べをしないようにね。」
「分かりましたわ、コーチ!」
止めるでもなく、そのままセイラ様にやらすとは、驚いたな。しかし、戦い方のアドバイスをしていたから、団長達みたいに全く安心して任せている訳ではないようだ。
(クソ!出遅れたか。仕方ない。戦いを見て勉強しよう。)
レナード団長は、盾を左手にしっかりと構えて前に詰めていく。オーガの大振りの攻撃に対して団長も慌てずにオーガの左側に回り込み棍棒を避ける。そして、踵に切りつけた。
『ブツン』と大きな音をたてて何かが切れる音がした。
「ガーッ!」
オーガは一声叫ぶと、左足で立てなくなったのか片膝立ちになる。後で閣下に教えてもらったが、アキレス腱という、踵の筋を切った為らしい。そこを切られると体の構造上まともに立つことは出来ないらしい。
立っていられなくなり、左膝を地に着け片膝になったオーガ。後は団長のしたい放題だ。最後には、喉を突かれた後に横に払い致命傷を与えて倒した。
副団長は、虎人族特有のスピードとパワーで相手のオーガを翻弄した。全く副団長の早さにオーガは対応仕切れていない。得意の連続攻撃を繰り出し、オーガが、受け損ねたミスを突いて、右肩を切り裂くと、返す刃で左肩も突いてから払い、切り裂く。両肩を切り裂かれて腕が上がらないオーガに対して副団長はニヤリと笑った後にオーガの首を切り飛ばした。オーガは首のないままに、その場に前のめりに倒れ込んだ。
最後のオーガはセイラ様に嫌な笑いを浮かべたが、いざ棍棒で打ちかかると攻撃は全て避けられる。何度も棍棒を振るうが、一向に当たらない。次第に焦ってきたのか、棍棒の振りが大振りになってきた為に、セイラ様は更に余裕で回避している。
遂に、頭に来たのか渾身の力を込めた一撃を振り下ろす。しかし、そんな大振りの攻撃は当たる筈もなく、セイラ様は余裕で回避したあとに、全力を込めた為に体の態勢が流れたオーガの隙を突いて、飛び込み剣を突きさす。突いた刃を横に払うと首の血管を断ち切ったのか噴水のように首から血が吹き出た。骨までは剣先が届いてなかったのか右手で首を押さえながら、最後の足掻きか左の拳で殴り掛かってきた。
それを後退して避け続けると、失血の為か、フラつきなからも拳で攻撃してくるが、全く先程までのスピードもパワーも無くなっていた。遂に敵の攻撃を見切り隙を見つけて再び首に突きをいれた。これが止めになったようでオーガは前のめりに倒れた。
「ふぅ、やりましたわ、コーチ!」
「うん、三人とも流石だね。特にセイラは我慢強くなったね。以前なら直ぐに頭に血が上って突っ込んだ所を敵に捕まって殺られていたのに、私も指導した甲斐があったよ。」
「ありがとうございます。コーチ。」
そう言って、ニコリと笑っている。
その様子を見て、俺も閣下に認められる様な戦い方が出来るよう、鍛え直そうと思った。
その後は、オーガの魔石を回収すると、これがまたデカイ。子供の拳程の大きさで、色は赤黒くオークナイトよりも赤い色が強かった。
その後、その日の訓練は終わりになり、魔物の死体を処理して、森から出た。
その途端に体から力が抜けて、躓きそうになる。
意識はしてなかったが、やはり強く緊張していたのだなと、我ながら驚いたな。
これを克服するには、強くなるしかないよな。そう、強くなるしかないんだ。
「ちっ、今日はやけにやる気じゃないか。その気なら相手してやるよ。」
「あざっす!」
俺はカイリー・ミノワ。ツール伯爵家の騎士だ。
この十の月から五人の部下を率いる分隊長となった。
先週は、アーサルトとスティンガーの各分隊と合同で北の魔の森で一週間の討伐訓練を行った。
そこで、人を動かすことが大変な事なのだと思い知る。
一日おきで部隊の指揮官役を交代しながらの戦闘訓練だった。
初めの三日は付き添いの副団長のライガさんから、ことごとくダメ出しをされた。まあ、何とかなってきたのが四日目以降からだった。
それでも、ライガさんから言わせると、五十点だそうだ。相変わらず厳しいぜ。
この訓練をやって、初めは人にやって貰うよりも、自分でやった方が早いのではないかと思うことが何度もあった。しかし、それでは訓練の意味がないので、そこはグッと我慢したよ。
隊長って、なってみて分かったが、こんなに我慢のいるポジションとは思わなかったよ。これなら、平の騎士の方が気が楽だよな。
訓練を開始してから四日目。今日は閣下と団長と何故かセイラ様が視察にいらした。
この日の指揮官はアーサルトだった。昼メシまでは、順調に指揮できていた様に見えたが、本人は全然納得出来ないと言っている。
元々アーサルトは、俺たち三人のなかで一番リーダーシップがあり、三人でいてもアーサルトが話を回していくことが多く、こう言うところでそれが出るのかと少し悔しくもある。
どちらかと言えば、俺やスティンガーは、他の人の事には興味はなく、俺は剣、スティンガーは魔法と、好きなことさえやっていられたら満足だった。その点アーサルトは、特に剣やまして魔法に執着する訳でもないのに、剣では 騎兵科でトップだった。
当時は、人の事なので気にもしなかったが、騎士団に入って才能の差を見せられると、最近は羨ましくなる時があるよ。
今日の昼メシは閣下がマジックボックスに色々な料理を入れて持ってきてくれたので、三日間の味気ない保存食でのメシではなく、いつもの兵舎で食べているような、旨いメシだった。連日の訓練と保存食で落ちてきていた士気も回復して、皆楽しそうにガヤガヤと賑やかに食べている。こういう細かい所に気がつくとは、流石閣下と言うところか。俺より年下とはとても思えないよな。さて、腹も一杯となったし午後も気合いを入れていこうか。
午後になり、何回か魔物のグループを倒して、魔石を取り出していたときだ。
「釣って来ました。オークが五匹。上位種が一匹居ます。注意してください。」
(上位種か、やってやれないことはないが、アーサルトはどう判断するかな?)
「上位種は俺が当たる。カイリー、戦列の指示を頼む。魔法分隊は上位種に集中攻撃をしてくれ、指示したら中断してくれ。その後は俺が直接当たるから。」
「了解だ。」
返事をした途端に森の中から四匹のオークとそのオークよりも二回り大きい体格の剣と木製の盾を持つオークが俺達を見つけると後ろにいたでかいオークがでかい声で吠えると、それが合図なのか、一斉にオーク達がこちらに走り出した。
「あれは、オークナイトだ。気を付けろよ。力もスピードもオークを越えるぞ。」
ライガさんから、注意が飛び、向かってくるオークに対して隊列に指示をだす。
「慌てるな。四匹しかいないんだ。一匹に対して二人以上で当たれよ。よし、向かい打て!」
出来れば俺も斬りかかりたかったが、まずは指揮をするために、一歩引いて隊列全体をみる。まあ、流石というか、当たり前と言うか、騎士団に入れるだけの力がある者ばかりなので、オーク程度では、皆慌てない。着実に四匹を倒していく。それを、確認してから、アーサルトの方を見ると、まさに戦闘中だ。
魔法攻撃を盾で防いだのか、木の盾がボロボロだ。
上体を庇っていたらしく、盾を上に掲げている所に、隙が出来た太腿に切りつける。
「ガァーッ。」
痛みに吠えながら、掲げていた盾を下ろして切られた太腿を庇おうと両手を下げたので、剣を持つ右腕を切り払う。
「ギャアー!」
悲鳴をあげて剣を取り落とした。チャンスと見ているとナイトの右側の首筋を狙った攻撃は盾で防がれてしまう。そこで止まらずに更に右側へ回り込む。盾が届かない位置から、首へ渾身の突きは見事に首に刺さり、そのまま横に払った。この突きは閣下から教わった突きで、確実に倒すための突きと言っていた。その切り口から血が吹き出して足下に溜まっていくと、オークナイトの巨体が沈んだ。
パチパチパチ。
手を叩く拍手の音がして、そちらを見ると拍手の相手は閣下だった。閣下に続きレナード団長もライガ副団長も拍手をしはじめた。
一頻り拍手をし終わると閣下がアーサルトに語りかける。
「アーサルト、良く仕留めたな。指揮もまぁ悪くない。騎士としてやっと一人前だな。だが、やっと騎士としてのスタートラインに着いただけだ。これからも精進するように。良いね?」
「はっ!有難うございます。今後も日々鍛練致します。」
頭を下げて、閣下からの言葉に礼をした。
(くそ、先を越されたか。絶対追い付いてやるぞ。負けないからな。)
その時、羨ましくはあったが、必ず追い付いてやるぞと、心に決めた。
「よし、魔石を取り出せ。斥候は周辺を警戒しろ。」
ライガ副団長の号令でオーク達から魔石が胸から取り出される。アーサルトが取り出した、オークナイトの魔石は、体の大きさに比例して、普通のオークよりも大きさが二回り程違う。ありゃ良い値段で売れるだろうな。初めて見たオークナイトの魔石は色がオークの物よりも赤黒っぽくて、同じオークなのにこんなに違うのかと驚く。
そんなことを考えていると、周辺警戒していた斥候の一人が慌てて走り込んできて、大声で報告する。
「オーガと思われる魔物が、血の臭いに引かれたのか、三匹こちらに接近中です。警戒してください。」
そのまま、団長達の方に走っていくのと同時に、森の中から赤黒い肌をして、上下の犬歯を剥き出しにした、額から一本または二本の角を生やしているプロレスラーのような体をしたオーガが出てきた。
コレがオーガか。名前は知っていたが、俺は初めて現物を見た。体格はいずれも三メートルを軽く越えている。その姿を見たら、初めて見たオーガの姿に身震いをしたよ。緊張のためか、体が動かなくなっていた。その時。
「全体、下がれ!!」
閣下の腹に響く声にハッとして、慌てて後退した。
オーガ達は、手に巨大な棍棒を持ちながらゆっくり進んでくる。どうしたら良いのか、頭の中がぐじゃぐじゃしている中、再び閣下の声が響いた。
「さて、誰がやる?誰もやらないなら、私が全て貰うよ?」
「お待ち下さい、閣下。その様に人がいない言われ様は心外ですな(笑い)。勿論私が行きます。」
「なら、俺も行かねぇとカッコつかねぇな(笑)。」
レナード団長とライガ副団長がそれぞれの武器を手にオーガに向かっていく。残りの一匹は俺が相手しようかと、前に出掛けた時俺の前に先にセイラ様が剣を抜いて飛び出していった。
「セイラ、やるなら付与魔法を掛けてやりなさい。決して力比べをしないようにね。」
「分かりましたわ、コーチ!」
止めるでもなく、そのままセイラ様にやらすとは、驚いたな。しかし、戦い方のアドバイスをしていたから、団長達みたいに全く安心して任せている訳ではないようだ。
(クソ!出遅れたか。仕方ない。戦いを見て勉強しよう。)
レナード団長は、盾を左手にしっかりと構えて前に詰めていく。オーガの大振りの攻撃に対して団長も慌てずにオーガの左側に回り込み棍棒を避ける。そして、踵に切りつけた。
『ブツン』と大きな音をたてて何かが切れる音がした。
「ガーッ!」
オーガは一声叫ぶと、左足で立てなくなったのか片膝立ちになる。後で閣下に教えてもらったが、アキレス腱という、踵の筋を切った為らしい。そこを切られると体の構造上まともに立つことは出来ないらしい。
立っていられなくなり、左膝を地に着け片膝になったオーガ。後は団長のしたい放題だ。最後には、喉を突かれた後に横に払い致命傷を与えて倒した。
副団長は、虎人族特有のスピードとパワーで相手のオーガを翻弄した。全く副団長の早さにオーガは対応仕切れていない。得意の連続攻撃を繰り出し、オーガが、受け損ねたミスを突いて、右肩を切り裂くと、返す刃で左肩も突いてから払い、切り裂く。両肩を切り裂かれて腕が上がらないオーガに対して副団長はニヤリと笑った後にオーガの首を切り飛ばした。オーガは首のないままに、その場に前のめりに倒れ込んだ。
最後のオーガはセイラ様に嫌な笑いを浮かべたが、いざ棍棒で打ちかかると攻撃は全て避けられる。何度も棍棒を振るうが、一向に当たらない。次第に焦ってきたのか、棍棒の振りが大振りになってきた為に、セイラ様は更に余裕で回避している。
遂に、頭に来たのか渾身の力を込めた一撃を振り下ろす。しかし、そんな大振りの攻撃は当たる筈もなく、セイラ様は余裕で回避したあとに、全力を込めた為に体の態勢が流れたオーガの隙を突いて、飛び込み剣を突きさす。突いた刃を横に払うと首の血管を断ち切ったのか噴水のように首から血が吹き出た。骨までは剣先が届いてなかったのか右手で首を押さえながら、最後の足掻きか左の拳で殴り掛かってきた。
それを後退して避け続けると、失血の為か、フラつきなからも拳で攻撃してくるが、全く先程までのスピードもパワーも無くなっていた。遂に敵の攻撃を見切り隙を見つけて再び首に突きをいれた。これが止めになったようでオーガは前のめりに倒れた。
「ふぅ、やりましたわ、コーチ!」
「うん、三人とも流石だね。特にセイラは我慢強くなったね。以前なら直ぐに頭に血が上って突っ込んだ所を敵に捕まって殺られていたのに、私も指導した甲斐があったよ。」
「ありがとうございます。コーチ。」
そう言って、ニコリと笑っている。
その様子を見て、俺も閣下に認められる様な戦い方が出来るよう、鍛え直そうと思った。
その後は、オーガの魔石を回収すると、これがまたデカイ。子供の拳程の大きさで、色は赤黒くオークナイトよりも赤い色が強かった。
その後、その日の訓練は終わりになり、魔物の死体を処理して、森から出た。
その途端に体から力が抜けて、躓きそうになる。
意識はしてなかったが、やはり強く緊張していたのだなと、我ながら驚いたな。
これを克服するには、強くなるしかないよな。そう、強くなるしかないんだ。
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