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第十一章 慌ただしき日々。そして、続かぬ平穏。
幕間47話 とある新人騎士達の狂想曲。⑨
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俺はアーサルト・オグマ。ツール伯爵家騎士団の騎士だ。
昨日は海賊『白鯨団』を討伐した。今日は流石に休みかと思っていたら、とんでもない。ウチの閣下は甘くないようだ。
残り二つある海賊団のうちの、黒鴎団の討伐だそうだ。
はぁ、全くウチの閣下も団長も人使いが荒いよな。
そんな事をカイリーやスティンガーと船上で愚痴っている内に、目的地まであと僅かに近づいた。
今日は二番船に俺は乗っている。この船には、ドレイクキャプテンの妹のマリンさんが船長で乗っている。日焼けはしているが、水夫に指示を出す凛々しい姿は格好良かったな。そんな姿に見とれていた俺達を見てライガ副団長は呆れながら言う。
「お前達、敵地に向かっている時に余裕だな。良いだろう。そんなに余裕なら、アーサルトとカイリーは先頭に立て。スティンガーもノルマとして二人な。出来なかったら、俺が近接訓練の相手だ。」
『ええーっ!』
「文句をいうなら、ノルマ増やすぞ。」
「申し訳ありません、副団長殿。二人きっちりと倒します。」
そんなやり取りをしていると、監視員がマリン船長に報告する。
「お嬢!目的地まであと二キロです。依然相手に動きはありません。」
「了解!ライガさん。もうそろそろ、目的地だよ。準備して下さいね。」
「承知した。団員は下船の用意をしろ。強化魔法を使用しろ。」
おれも、最近使えるようになった〈自己強化〉の魔法をかける。ウチの騎士団では必須だ。
スティンガーが俺とカイリーに〈シールド〉と〈エンチャント・ウインド〉〈エンチャント・ファイア〉をかけてくれた。
「スティンガー悪いな、有難う。助かるよ。」
スティンガーに礼を言うと、笑いながら言い返してきた。
「礼は要らないよ。これも魔法使いの僕の仕事だからね。他の人にもかけてくるから、また後でね。」
そう言うと、移動していった。
「カイリー、スティンガーの奴、前よりも頼もしくなったよな。」
「ああ、学生の頃に比べると、段違いだな。」
「これも閣下の指導の賜物かな?」
「多分そうだろうな。アイツ、閣下に対しては師匠のように思っているからな。」
「ああ。やっぱここは正解だな?」
「ああ、その通りだ、アーサルト。」
港の桟橋に渡し板がかけられて団員が下船をしていく。
目の前には、海賊『黒鴎』が武器を持って集まってきている。
「お前らは何者だ?」
海賊の頭らしき、太った赤い髪と髭の男が大声で叫んできた。
「我々はツール伯爵家騎士団。要件は言わずともわかるだろ?」
レナード団長がそういい返す。
「クソッ!どおしてこの場所が分かったんだ?仕方ねぇ。野郎共生きて返すな。殺っちまえ!」
『うぉー!』
海賊達が一斉に吠えて、武器を振りかざして突撃してきた。
「アーサルトとカイリー。二人とも俺の後に続け!」
ライガ副団長がそう言い切ると大剣を引っ提げて、敵陣に突っ込んでいく。
俺とカイリーもその後を剣を持って続く。
切りかかってくる、海賊のスピードの遅さに驚き、俺の剣の方が先に相手に斬りつけた。海賊の右腕を斬り着けたあと、返す刃で喉を切り裂いた。倒れたのを後ろ目に確認して、次の相手にかかる。
次は短剣使いだ。確かに少し動きは速いが、それでも怖いとは思わなかった。剣筋がはっきりと見えているからな。相手の切り込みを避けて斬り着けようとしたら、背筋が急にゾワッとしたので、思わず大きく横に避けた。
すると、先程までいた場所を大剣の刃が勢い良く通って行くのを見た。
いつの間にか、後ろに敵が回り込んでいたのだ。
危なかった。一瞬恐怖に鳥肌が立った。
以前閣下に言われた〈気配察知〉を鍛えておいて良かった。以前のままなら、斬られていたな。
ふ、流石に閣下だ。俺に必要な事をきちんと指導してくれる。また一つ強くなれた気がするぜ。
後ろから大剣で斬り着けてきた男の首を逆払いで切りつけ倒す。背後から攻撃してきた男の影から、先程の短剣男が攻撃をしてきたが、事前に気配で判っていたので、前に出ながら攻撃を避け剣で相手の喉を切り裂く。ヒューと呻きながら、血溜まりの中に沈む。
よくよく見ると、後ろからの攻撃者は海賊の頭だった。
頭の中で何回目かのチャイムが鳴り、アナウンスかあって、色々と上がったことがわかる。
「やったな!お手柄だぞ、アーサルト。」
ライガ副団長が声をかけてきて、肩を叩く。夢中になって戦っていたら、敵の頭を倒していたようだ。
「畜生!先を越されたか。でも、おめでとうアーサルト。」
カイリーからも悔しげにだが誉められると少しずつだが、実感が湧いてきた。何か以前とは比べ物にならない位俺は強くなってきている。
嬉しくなって来たその時、頭の中で閣下の冷たい声が聞こえた。
『また、自惚れるのか?』
それまで、嬉しかった気持ちは一気に冷えて過去のものになった。
俺は、もう二度と自惚れない。そう、あの時にそう決めたのだから。
この後は、残敵がいないことを確認したら、何時ものようにお宝を探し、戦場掃除をして、地面に掘った穴に死体を纏めて放り投げ、浄化してから埋め直した。
戦利品の船はここでは二隻だった。
「よし、上陸しろ!」
メイザースさんの掛け声で、三番船の騎士達は海賊のアジトに乗り込んだ。
そう。三日連続の海賊の討伐だ。流石閣下、甘くねぇーわ。
今日は海賊『青海蛇団』のアジトだ。流石に三度目ともなると、騎士団全員慣れたのか、落ち着いたものだ。変に意気込んでいたり、浮わつくよりはマシだけどね。
「お前らは何者だ?」
お決まりのセリフが敵の頭から放たれる。
「私達はツール伯爵家騎士団だ。騎士が海賊にする要求は判るよな?」
団長も少し手抜きな話し方をしているな。
「そうか、赤鯱、白鯨、黒鴎等の音信が無くなっていたのは、やはりお前達のせいか。ならば、悪いが抵抗させて貰うぜ。野郎共、こいつらをヤッちまえ!」
頭の一言で、手下達が武器を振りかざしてきた。
メイザースさんを先頭に俺達は襲い掛かってきた海賊達を片っ端から切り捨てていく。
「この野郎、死ねや!」
そう、喚きながら海賊が両手にそれぞれ斧を持ちながら迫ってきた。
斧の二刀流は、騎士団のブルーノさんとの模擬戦で散々にやっているので、慣れていたのもあるが、ブルーノさんに比べると明らかにスピードと技と力が劣っているのか判る。
盾で相手の斧を受け止めて、そのまま相手の斧を右側に押し込み、もう一方の斧の攻撃を防ぐと、がら空きになった、相手の右側の首筋に向けて剣を突き出す。首を貫かれた海賊は、崩れ落ちて倒れた。その横から斬り着けてきた海賊の攻撃は、最近常に働かしている〈気配察知〉のお陰で、気がついており余裕で避けた。
その海賊に向き直ると、相手は俺と変わらない年の頃の若者だった。何を考えて海賊になったのかは知らないが、いずれはこの様な目に合うと分かっていたはずだ。思わず相手に同情をした。
そんな事を思った時に閣下の声がまた頭の中で響いた。
『如何なる者であろうと、武器を持って向かって来る者は敵である。相手に一片の情けをかけると言うことは、相手に対しての隙となる。つまりは自惚れだ。自戒をするなら、敵を倒した後にしろ。でなくば、戦場で死ぬのはお前だ!』
閣下の声が、俺を冷静にした。そうだ、こいつは、剣を持って俺に対している。死にたくないなら、剣を捨てて降伏すれば良いのだ。しないと言うことは、戦う意志があるのだ。同情は戦士に対しての侮辱だと思い直し、改めて全力で切り捨てた。
二人倒した所で、周囲を見ると、カイリーが丁度敵の頭と戦っている。その他は全ての戦闘が終わっていた。
カイリーは元々の速さに加えて、これまでの訓練によってより一層のスピードを身に付けていた。相手の頭はそのスピードについていけていないようだ。カイリーの連続攻撃に対応が出来ずに、心臓を一突きされて倒れた。
カイリーに皆から良くやったと、声がかけられる。
俺も近寄って、カイリーにおめでとうと言うと、カイリーがニコニコしながら有難うと返したあと、急に笑顔から何時もの冷静な顔つきに変わった。
「カイリー、急に顔つきが変わったがどうした?」
「いや、アーサルト。何故か不意に閣下の言葉が聞こえてな。『お前はまた、自惚れるのか?』ってね。その声を聞いたら、急に嬉しかった気持ちから覚めたよ。」
「何、お前もか?俺も昨日同じ事があったよ。」
「そうか、俺と同じ事があったのか?」
カイリーは俺の言葉を聞いて嬉しそうに笑い始めた。そして俺に言う。
「互いに、こんな所で自惚れていられないよな。もっと修練して、強くならないとな。」
「ああ、閣下並みに強くならないとな?」
「アーサルト、それは人間には無理だと思うぞ。」
「何気にお前も閣下に対して酷いことを言うな。まあ、確かにそうだけどな。」
「お前ら、暇ならさっさと残敵がいないか探索してこい。ツールに帰るまでが、戦闘だぞ。閣下の言葉を忘れたか?動け!」
メイザースさんに怒鳴り付けられて、慌てて探索を始めた。
この後も、戦場掃除をして、お宝を確保した。死体を埋めた時にあの若い海賊を思い出して、次はまっとうな人間に生まれ変われと祈りを捧げた。ここでも、海賊船を二隻確保した。
こうして、ツールの近隣の海賊で大きい所は全て潰した。中小規模の海賊はまだいるだろうが、その位の規模なら、冒険者ギルドの護衛依頼で集める人数で対応出来るだろう。さて、閣下からの特別報酬が楽しみだな。実は最近、町の『エチゴヤ』という店で売り出しているクッキーや、『カフェエチゴヤ』で販売している、定食や料理がこれまた旨いのだ。報酬でまた食いに三人で行こうと思う。
帰りの船上で、海を見ながらそんな事を考えていた。
昨日は海賊『白鯨団』を討伐した。今日は流石に休みかと思っていたら、とんでもない。ウチの閣下は甘くないようだ。
残り二つある海賊団のうちの、黒鴎団の討伐だそうだ。
はぁ、全くウチの閣下も団長も人使いが荒いよな。
そんな事をカイリーやスティンガーと船上で愚痴っている内に、目的地まであと僅かに近づいた。
今日は二番船に俺は乗っている。この船には、ドレイクキャプテンの妹のマリンさんが船長で乗っている。日焼けはしているが、水夫に指示を出す凛々しい姿は格好良かったな。そんな姿に見とれていた俺達を見てライガ副団長は呆れながら言う。
「お前達、敵地に向かっている時に余裕だな。良いだろう。そんなに余裕なら、アーサルトとカイリーは先頭に立て。スティンガーもノルマとして二人な。出来なかったら、俺が近接訓練の相手だ。」
『ええーっ!』
「文句をいうなら、ノルマ増やすぞ。」
「申し訳ありません、副団長殿。二人きっちりと倒します。」
そんなやり取りをしていると、監視員がマリン船長に報告する。
「お嬢!目的地まであと二キロです。依然相手に動きはありません。」
「了解!ライガさん。もうそろそろ、目的地だよ。準備して下さいね。」
「承知した。団員は下船の用意をしろ。強化魔法を使用しろ。」
おれも、最近使えるようになった〈自己強化〉の魔法をかける。ウチの騎士団では必須だ。
スティンガーが俺とカイリーに〈シールド〉と〈エンチャント・ウインド〉〈エンチャント・ファイア〉をかけてくれた。
「スティンガー悪いな、有難う。助かるよ。」
スティンガーに礼を言うと、笑いながら言い返してきた。
「礼は要らないよ。これも魔法使いの僕の仕事だからね。他の人にもかけてくるから、また後でね。」
そう言うと、移動していった。
「カイリー、スティンガーの奴、前よりも頼もしくなったよな。」
「ああ、学生の頃に比べると、段違いだな。」
「これも閣下の指導の賜物かな?」
「多分そうだろうな。アイツ、閣下に対しては師匠のように思っているからな。」
「ああ。やっぱここは正解だな?」
「ああ、その通りだ、アーサルト。」
港の桟橋に渡し板がかけられて団員が下船をしていく。
目の前には、海賊『黒鴎』が武器を持って集まってきている。
「お前らは何者だ?」
海賊の頭らしき、太った赤い髪と髭の男が大声で叫んできた。
「我々はツール伯爵家騎士団。要件は言わずともわかるだろ?」
レナード団長がそういい返す。
「クソッ!どおしてこの場所が分かったんだ?仕方ねぇ。野郎共生きて返すな。殺っちまえ!」
『うぉー!』
海賊達が一斉に吠えて、武器を振りかざして突撃してきた。
「アーサルトとカイリー。二人とも俺の後に続け!」
ライガ副団長がそう言い切ると大剣を引っ提げて、敵陣に突っ込んでいく。
俺とカイリーもその後を剣を持って続く。
切りかかってくる、海賊のスピードの遅さに驚き、俺の剣の方が先に相手に斬りつけた。海賊の右腕を斬り着けたあと、返す刃で喉を切り裂いた。倒れたのを後ろ目に確認して、次の相手にかかる。
次は短剣使いだ。確かに少し動きは速いが、それでも怖いとは思わなかった。剣筋がはっきりと見えているからな。相手の切り込みを避けて斬り着けようとしたら、背筋が急にゾワッとしたので、思わず大きく横に避けた。
すると、先程までいた場所を大剣の刃が勢い良く通って行くのを見た。
いつの間にか、後ろに敵が回り込んでいたのだ。
危なかった。一瞬恐怖に鳥肌が立った。
以前閣下に言われた〈気配察知〉を鍛えておいて良かった。以前のままなら、斬られていたな。
ふ、流石に閣下だ。俺に必要な事をきちんと指導してくれる。また一つ強くなれた気がするぜ。
後ろから大剣で斬り着けてきた男の首を逆払いで切りつけ倒す。背後から攻撃してきた男の影から、先程の短剣男が攻撃をしてきたが、事前に気配で判っていたので、前に出ながら攻撃を避け剣で相手の喉を切り裂く。ヒューと呻きながら、血溜まりの中に沈む。
よくよく見ると、後ろからの攻撃者は海賊の頭だった。
頭の中で何回目かのチャイムが鳴り、アナウンスかあって、色々と上がったことがわかる。
「やったな!お手柄だぞ、アーサルト。」
ライガ副団長が声をかけてきて、肩を叩く。夢中になって戦っていたら、敵の頭を倒していたようだ。
「畜生!先を越されたか。でも、おめでとうアーサルト。」
カイリーからも悔しげにだが誉められると少しずつだが、実感が湧いてきた。何か以前とは比べ物にならない位俺は強くなってきている。
嬉しくなって来たその時、頭の中で閣下の冷たい声が聞こえた。
『また、自惚れるのか?』
それまで、嬉しかった気持ちは一気に冷えて過去のものになった。
俺は、もう二度と自惚れない。そう、あの時にそう決めたのだから。
この後は、残敵がいないことを確認したら、何時ものようにお宝を探し、戦場掃除をして、地面に掘った穴に死体を纏めて放り投げ、浄化してから埋め直した。
戦利品の船はここでは二隻だった。
「よし、上陸しろ!」
メイザースさんの掛け声で、三番船の騎士達は海賊のアジトに乗り込んだ。
そう。三日連続の海賊の討伐だ。流石閣下、甘くねぇーわ。
今日は海賊『青海蛇団』のアジトだ。流石に三度目ともなると、騎士団全員慣れたのか、落ち着いたものだ。変に意気込んでいたり、浮わつくよりはマシだけどね。
「お前らは何者だ?」
お決まりのセリフが敵の頭から放たれる。
「私達はツール伯爵家騎士団だ。騎士が海賊にする要求は判るよな?」
団長も少し手抜きな話し方をしているな。
「そうか、赤鯱、白鯨、黒鴎等の音信が無くなっていたのは、やはりお前達のせいか。ならば、悪いが抵抗させて貰うぜ。野郎共、こいつらをヤッちまえ!」
頭の一言で、手下達が武器を振りかざしてきた。
メイザースさんを先頭に俺達は襲い掛かってきた海賊達を片っ端から切り捨てていく。
「この野郎、死ねや!」
そう、喚きながら海賊が両手にそれぞれ斧を持ちながら迫ってきた。
斧の二刀流は、騎士団のブルーノさんとの模擬戦で散々にやっているので、慣れていたのもあるが、ブルーノさんに比べると明らかにスピードと技と力が劣っているのか判る。
盾で相手の斧を受け止めて、そのまま相手の斧を右側に押し込み、もう一方の斧の攻撃を防ぐと、がら空きになった、相手の右側の首筋に向けて剣を突き出す。首を貫かれた海賊は、崩れ落ちて倒れた。その横から斬り着けてきた海賊の攻撃は、最近常に働かしている〈気配察知〉のお陰で、気がついており余裕で避けた。
その海賊に向き直ると、相手は俺と変わらない年の頃の若者だった。何を考えて海賊になったのかは知らないが、いずれはこの様な目に合うと分かっていたはずだ。思わず相手に同情をした。
そんな事を思った時に閣下の声がまた頭の中で響いた。
『如何なる者であろうと、武器を持って向かって来る者は敵である。相手に一片の情けをかけると言うことは、相手に対しての隙となる。つまりは自惚れだ。自戒をするなら、敵を倒した後にしろ。でなくば、戦場で死ぬのはお前だ!』
閣下の声が、俺を冷静にした。そうだ、こいつは、剣を持って俺に対している。死にたくないなら、剣を捨てて降伏すれば良いのだ。しないと言うことは、戦う意志があるのだ。同情は戦士に対しての侮辱だと思い直し、改めて全力で切り捨てた。
二人倒した所で、周囲を見ると、カイリーが丁度敵の頭と戦っている。その他は全ての戦闘が終わっていた。
カイリーは元々の速さに加えて、これまでの訓練によってより一層のスピードを身に付けていた。相手の頭はそのスピードについていけていないようだ。カイリーの連続攻撃に対応が出来ずに、心臓を一突きされて倒れた。
カイリーに皆から良くやったと、声がかけられる。
俺も近寄って、カイリーにおめでとうと言うと、カイリーがニコニコしながら有難うと返したあと、急に笑顔から何時もの冷静な顔つきに変わった。
「カイリー、急に顔つきが変わったがどうした?」
「いや、アーサルト。何故か不意に閣下の言葉が聞こえてな。『お前はまた、自惚れるのか?』ってね。その声を聞いたら、急に嬉しかった気持ちから覚めたよ。」
「何、お前もか?俺も昨日同じ事があったよ。」
「そうか、俺と同じ事があったのか?」
カイリーは俺の言葉を聞いて嬉しそうに笑い始めた。そして俺に言う。
「互いに、こんな所で自惚れていられないよな。もっと修練して、強くならないとな。」
「ああ、閣下並みに強くならないとな?」
「アーサルト、それは人間には無理だと思うぞ。」
「何気にお前も閣下に対して酷いことを言うな。まあ、確かにそうだけどな。」
「お前ら、暇ならさっさと残敵がいないか探索してこい。ツールに帰るまでが、戦闘だぞ。閣下の言葉を忘れたか?動け!」
メイザースさんに怒鳴り付けられて、慌てて探索を始めた。
この後も、戦場掃除をして、お宝を確保した。死体を埋めた時にあの若い海賊を思い出して、次はまっとうな人間に生まれ変われと祈りを捧げた。ここでも、海賊船を二隻確保した。
こうして、ツールの近隣の海賊で大きい所は全て潰した。中小規模の海賊はまだいるだろうが、その位の規模なら、冒険者ギルドの護衛依頼で集める人数で対応出来るだろう。さて、閣下からの特別報酬が楽しみだな。実は最近、町の『エチゴヤ』という店で売り出しているクッキーや、『カフェエチゴヤ』で販売している、定食や料理がこれまた旨いのだ。報酬でまた食いに三人で行こうと思う。
帰りの船上で、海を見ながらそんな事を考えていた。
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