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第十一章 慌ただしき日々。そして、続かぬ平穏。

第183話 一つ一つ片付けますかねぇ。⑥

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    ハイエルフの耳は結婚する相手でないと、触ってはいけないと言う衝撃の事実が発覚して、知らずに自ら地雷を踏み抜いた事を知る。

アルメイダの耳もたまにモフらせて貰っているが、大丈夫なのだろうか。心配になってきたよ。
いつかこっそりとアルに確認しなくては。
思いもかけぬ事態に固まっている内に教会の前に着いた。皆で下りると教会の中に入っていく。

    「こんにちは。どの様な御用でしょうか?」

初めて見るシスターから、挨拶をされる。

「司祭のフロイス殿はいらっしゃるかな?オオガミが来たとお伝えください。」
「はい、司祭様は居りますので、暫しお待ち下さい。」

そう言って奥に入って行く。暫くたつと奥から司祭殿とシーラが一緒に出てきた。

    「オオガミ様、昨日は祝宴にお呼び頂き有り難うございました。今日はどういったお話でしょうか。」
「あー、少し長くなるので、落ち着いて話せる所でお願いします。」
「ああ、気がつきませんで申し訳ありません。どうぞこちらへ。」

そう言って奥にある応接室に案内された。

    「さて、どういったお話でしょうか?」
「以前、初めて挨拶に伺った時にもお話ししましたが、大規模な孤児院の建物を建設していますが、あと僅かで完成するので、まずはその件についてなのですが。」
「いよいよ、出来上がるのですな?」
「ええ、そこで改めて確認なのですが、運営はお任せしても大丈夫ですね?」
「はい、お任せ下さい。私共で面倒を見させて頂きます。」
「お願いします。形としては伯爵家の管理の下、教会に業務委託という事になります。従って、当然ですがこの施設は非課税となります。またここで働く人の所得も非課税となります。私からの運営費は年間金貨五百枚です。収支報告書を提出してもらいます。どうしても、遣り繰りできないというのなら、私かこのサウルに申し出て下さい。まずは、予算内で収まるように、運営してください。宜しいですね。」
「承知しました。」
「孤児院については、こんな所です。今日は更に新しい事業についてご相談したいのですが。」
「おや、新しい事業とは何でしょうか?」
「はい、話の前に確認なのですが、教会の方で光属性魔法が使える方は、いますでしょうか?」
「はい、私や二人のシスターとシーラ殿が使えますが、それが何か?」
「はい、やはり教会にも独自の収入源が有れば運営も安定するかなと思います。また今の町の問題としてある、回復ポーション不足の助けにもなるかとおもいます。〈ヒール〉一回の料金をポーション一本分の値段か少し安めにすれば、冒険者達も利用し易いかと思います。また、町の人も利用し易いと思います。
魔力量を増やしたいなら、魔物狩りで家の騎士団が協力します。スキルや職業のレベルを上げるお手伝いをさせて頂きますよ。如何でしょうか?お考え頂けないでしょうか?」
「神から頂いた力で、お金儲けをするのはどうでしょうか?神はお怒りにならないでしょうか?」

フロイス司祭が心配気に訊ねてきた。

(ピロ~ン♪ユーガッタメール!メールが届きました。)

司祭様に一言断り、ステータス画面を表示すると、やはり神様からのメッセージだった。

    (オオガミ君や。その司祭に言ってくれるか。治療することで、お金を稼ぐことをワシが怒ることなどないと伝えてくれんかの。その事で人を助けられる方が大事じゃ。不必要に富を貪らねば、大丈夫じゃよ。            神より)

    「オオガミ様、急に黙り込んでいかがしましたか?」
「ああ、すみません。神様より今、連絡が有りましてね。神様のお言葉をそのまま伝えますね。」

    先程届いたメールの文章をそのまま伝えると、急に膝まずくと神への感謝を唱えていた。
お祈りが一通り済んだところで、フロイス司祭を椅子に座らせて話を続ける。

    「神様からの、許可も降りました。シーラも手の空いている時は手伝って貰えるかな?」
「皆様のお役にたてるなら勿論、お手伝いさせて頂きますわ。」
「では、フロイス司祭殿、治療院の運営も頼みますね。」
「はい、承知致しました。」

    「さて、最後の話なんですが、お願いが一つ有りましてね。」
「はて、何でしょうか?」
「そう、難しい事ではありませんよ。神官の服を一枚と、祭祀で使う白い仮面を一枚頂けないでしょうか?」
「ほう、神官の服と祭祀用の仮面ですか。宜しければ、何にお使いになるか教えていただけますか。」
「ええ、構いませんよ。ただ他言しないとお約束頂きますよ?」
「分かりました。他言しないと神にお誓いします。」
「有り難うございます、司祭殿。ご存知かも知れないが、スラム街に居る者で、働きたくても、体の欠損で働けない者がいることを。」
「はい、承知しています。その為に、働き口がなく、貧しい生活を強いられている事も。」
「これも、他言無用でお願いします。宜しいですか?」
「はい、他言はしないとお約束します。」
「実は私は、部分欠損を治す魔法〈パーフェクトヒール〉が使えます。」
「何ですと?!正神教の本山でも使える人は少ないと言われているのに、さすがに使徒様です。」
「訓練を積めば誰でも使えるようになりますよ。ただ、私が使えることは人々には知られたくありません。」
「何故でしょうか?知れ渡れば、皆貴方様を崇めあがめますのに。」
「それが嫌なんですよ。私は使徒であっても神様ではない。あくまで皆さんと同じ人なんです。他の人から崇められるのは正直言うと苦痛なんですよ。また、私の事を知られると国中から治療を求めて人が集まってくるでしょう。しかし、はっきり言って迷惑なんですよ。なので、誰にも私だと分からない形でスラム街の人の治療を行いたい。その為の変装です。修行で旅をしている、旅の神官がたまたま町に立ち寄ったと言う設定でお願いします。勿論、修行として行うので費用は一切貰いません。翌日には、また旅に出たということにして欲しいのです。実際、以前にもリヒトで同じ事をリヒトの司祭殿に協力してもらい、行ったことがあります。やはり、無料で治療して貰えると噂が立ち、教会に沢山の人が押し寄せてきたと、後で聞きました。私は神ではありません。全ての人に救いの手を差し伸べる積もりはありませんし、出来ません。それでも、町が栄える助けに繋がるなら、今回やっても良いかと思っています。」
「成る程。そう言う事ですか。分かりました。神官服や仮面をお譲りしましょう。それが救いの手になるのであれば、十分な理由でしょう。」

フロイス殿が予備の神官服と祭祀用の白い仮面を譲って貰った。

    (よし、これで労働力を増やすことができるし、僅かでも税収に繋がるな。)


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