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第 八章 領主就任と町の掃除。

第118話 領地のお掃除は大変だね。

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    只今、ツールに到着した当日の夜中の一時過ぎです。
何故この時間に起きているかといえば、先手必勝で代官のアシリー・アクダイクンの犯罪の証拠を掴むためだ。

    闇ギルドの支部長を確保はしているが、アシリーがシラを切る事もあるので、明確な証拠を突き付けないと認めないだろうからね。あの手の男は図太いから。記憶にございませんなんて言われたら、どこの政治家だよと物理的に突っ込みしてしまいそうです。

    等という理由から、今私の目の前に代官館があります。一応守衛が二人、門を守っているのですが規律がなっていない様で、酒で酔っぱらっているようだ。

    私は冒険者スタイルに着替えて、既に自分自身に〈スルーサイト〉をかけており、マップ表示をオンにして、犯罪の証拠や隠し財産がどこにあるか、〈サーチ〉で調べ上げている、万全の状態だね。

    「〈マルチロック〉〈スリープ〉。」

代官館の住人全てに、スリープをかけて、マップで動くものが居ないのを確認してから館に侵入した。表玄関はさすがに閉まっていたが、台所口は開いていたので、有りがたく入らせて貰ったよ。
マップを拡大して、真っ直ぐに証拠の隠されている部屋に向かった。

    その部屋の前で、中の様子の気配を探り、マップに動く者が居ないことを確認して入ると、そこは代官の寝室だった。流石に寝入っているね。

「〈サーチ・犯罪の証拠〉。」

これもお決まりの、絵画の所から反応があった。
〈鑑定〉を使って罠が仕掛けられていないか、確認してから、隠し金庫を開けると、帳簿や手紙や受け取り証等の書類や代官の給金では貯まるはずの無い額の金貨や白金貨、宝石、金の延べ板。大きな魔石などかなりの財産があった。勿論全て没収だ。隣の執務室からも反応があるので向かうと、領主屋敷の執務机よりも明らかに立派な机が置かれている。椅子も上等で、これではどっちが領主の部屋かわからない位だよ。
取り敢えず、反応がある箇所を調べては全て押収していった。
まあ、唯一心が痛まなかったのは、代官に家族が居ない事だったな。

    再び代官館の外に出ると、今日の九時に家に来るのを楽しみにして、次の獲物に取り掛かった。
次は闇ギルドツール支部の掃除だな。


    「〈マップ表示・オン〉〈サーチ・闇ギルド支部と闇ギルドのメンバー〉。」

ほう、こんな所に支部があるとはね。早速、掃除に行きましょうか。

    そこは、裏通りにあるうらぶれた飲み屋だった。

「〈マルチロック〉。」

赤く反応がある者を全てロックしてから中に入る。
中に入ると、途端に周りから視線を向けられる。

    見るからに人相の悪い男が寄ってきて、睨み付けながら言う。

「小僧、ここはお前なんかが来るところじゃないぞ。とっとと出ていけ。さもないと、痛い目に会うぞ。」
「いえ、用が有りましてね。領主として、この町の闇ギルドを抹消しに来たんだよ。」
「なんだと小僧。何故ここの事を、死にたいようだな。死ねや。」

男が懐から短剣を取り出して、襲い掛かって来た時にポツリと一言。

「〈スタン〉。」

途端に、酒場の中にいた闇ギルドのメンバーは全員麻痺してその場に倒れこんだ。
一人が、呂律の回らない口でいう。

「てめえ、な、何、者だ?」
「私かい?私は今日からツールの町の領主に就任した、ツール伯爵のオオガミさ。
    まあ、裁判なんて面倒臭いから、今麻痺している奴は即刻死刑な。この世から消えてしまいな。〈マルチロック〉〈ワームホール〉。次は真っ当に生まれ変われよ。変れたらだけどな。」
「た、助けて、ヒッヒー!身体が沈む!」

男達は叫びながら、床に広がる暗黒の闇に落ちて行った。酒場には誰もいなくなり、静まり返える。
代わりに、頭の中で職業やら魔法属性レベルが上がったとアナウンスがある。取り敢えずスルーしておく。

    「〈サーチ・犯罪の証拠〉。おお、奥の部屋に反応があるね。」

    カウンターの後ろにある扉から一本道の廊下を進み、目の前に扉を見つけた。

「〈サーチ・罠〉表示黄色。」

扉には罠はなく、反応は部屋の中からあった。
当然部屋には誰もいなくて、無人だったが、魔法の灯りが無人の部屋を照らし出していた。罠と証拠の反応は同じ所から有ったので、早速回収する。

「〈鑑定・隠し金庫〉。」

(鑑定結果・罠が仕掛けられているよ。毒が塗られたナイフが飛び出てくるタイプだね。以前と同じ方法で解除出来るよ。)

「なら、〈ピュリフィケーション〉〈クリーン〉。これでいいな。」

絵を壁から外して、金庫の正面から外れてから、金庫の扉を開ける。途端に、中からナイフが飛び出していった。それを見届けてから、金庫の中を確認する。

    「おーおー、色々あるねぇ。流石に港町だけあるね。密貿易や違法人身売買の販売リスト流石にあったよ。他に裏の暗殺依頼者のリスト。手を組んでいる海賊や商会のリストまであるか。お、代官の名前もバッチリあるね。証拠はこれで完璧だね。では、帰りますか。〈リターン〉。」

    呪文を唱えた次には、私は屋敷の執務室にいる。
時空間属性魔法〈リターン〉は、予め帰還の目標として設置された魔法ポイントに向けて瞬間移動する魔法だ。〈テレポート〉とは違って、目印となるポイント一ヶ所にしか移動できないのが、〈リターン〉である。その分必要魔力が〈テレポート〉よりも少なくてすむのだが。

    マントや鎧、剣を外して、インベントリィにしまった。執務室の横の扉から寝室に入ると、驚いて立ち止まる。アイリスとアルメイダがベッドの上で起きていて、こっちを見ていたからだ。

    「おや、まだ寝てなかったのかい。もう遅いから、早く寝なさい。」
「うー、眠いにゃ。早く一緒にねるにゃ。」
「ショウ、貴方の用事は済んだの?」

アイリスの目をじっと見て誤魔化せないと判断した。

「ああ、町の屑は掃除してきたさ
。あとは、朝にくるバカ者と一緒になって甘い汁を吸っていた、商人どもを纏めて始末すれば終わりさ。証拠も証人も居るしね。さあ、明日は朝からバタバタするから、もう寝ようぜ。」

    朝が待ち遠しいねぇ。明日からはこの町は〈新生ツール〉になるからね。














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