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第 二章 冒険者ギルドとやっぱりのお約束

幕間 3話 あるギルマスの回顧録②。

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    俺は、リヒトの街の冒険者ギルドのギルマスをやっているゲオルグだ。この話は街が危うく滅ぶかも知れなかった、ゴブリン・オークの街への襲撃事件の話だ。事は事件の二日前から始まる。

    「ええっ?!、も、もう一回言ってくれ!」
「だからギルマス、この街に、ゴブリンとオークの大集団が向かって来ているんだよ。」

    その日の昼過ぎに、猟師のハンスが緊急の話があると、ギルドに駆け込んできた。

「マジか?」
「ああ、この目で確かめて来た。狩りの為森の奥まで入ったら、ゴブリンの集団が行進していてその後をオークの集団が続いていた。少し確認したらざっと先頭集団だけで五百以上はいたぞ。後続も考えると千以上はいるだろう。」
「マジなのか。場所は?」
「街の北側の大森林だ。まだかなり奥だが、二日もすれば街からもゴブリンとオークが見えるだろう。」
「間違いないんだな?」
「ああ、アマテル様にかけて間違いないさ。」
「判った。情報ありがとうよ。早速領主様に報告して対策をたてる。」

    俺は、すぐにも領主館に行き、リヒト侯爵に緊急の面会を求めた。
冒険者ギルドのギルマスが緊急の話ということで、直ぐに面会に漕ぎ着けた。

    「やあ、ゲオルグ君久しぶりだね。で、緊急の話があると言う事だが、一体何事だい?」
「領主様、落ち着いて聞いて下さい。実は先程猟師から街の北側の森林地帯の奥でゴブリンとオークを先頭に魔物の大集団が街に向かって来ているとの報告が入りました。二日もすれば街からも集団を見ることの出来る距離だそうです。」
「本当かい、それは?」
「はい、猟師もアマテル様にかけて間違いないと、言い切りました。」
「このタイミングで来るとは困ったな。」
「え、何かお困りで?」
「ゲオルグ君、実は今家の騎士団長のラルフ君以下二千人の騎士が最近増えていると報告のあった、盗賊の討伐と街道警備の為出払っているのだよ。今残っている騎士は二個中隊の千でしかも編成してまだそんなに経ってないんだよ。」
「それはまた困ったな。うちからも、迎撃に人を出しますが、最悪籠城戦も覚悟しないといけませんな。とにかく、街の外に出ている騎士達には早急に街に戻って貰いましょう。連絡をお願いします。」
「そうだね。早速知らせて戻らせよう。セバス?」
「はい、ご主人様。」
「騎士団に行って、ラルフ達騎士団に至急街に帰って来るように伝令を出せと伝えてくれ。」
「畏まりました。」

その日は夜遅く迄対策を領主様と話し合った。

    翌日、早朝にギルドの職員を使って街中に魔物の襲撃を知らせた。襲撃当日は家の鍵を閉めて、領主様の屋敷前の庭に避難せよと、伝えていく。一部パニックになる者も出たが、概ねこちらの指示通り動いてくれたのは有り難かった。

    ギルマスの部屋からギルドの受付のある階下に下りていくと、話を聞いた冒険者達が詳しい事情を知りたくて大勢集まっている。

    「皆、静かにしてくれ。今から魔物の襲撃について話す。質問は後にしてくれ。まずは、状況説明をするから。」

そう前置きしてから話す。

「聞いている者も多いと思うが、今この街に向けて魔物の大集団が向かっている。確認出来ている所でゴブリンとオークの集団らしい。    
    上位種であるジェネラルやリーダーはまだ確認されていないが、集団の規模から居てもおかしくないと考えている。
    現在集団は北の森林地帯をこの街に向かって移動している最中だ。おそらく明日中には街の北側の平原に確認出来るだろう。
    そこで我々冒険者ギルドは、この街リヒトの領主様であるリヒト侯爵からの要請で魔物の迎撃に参加する。侯爵家の騎士団が迎撃の中心になるが、ランクD以上については緊急強制依頼だ。迎撃に参加する。断ればギルド資格の剥奪だ。報酬は各人金貨一枚だ。安くて済まんが日頃お世話になっている街の存亡に関わる事だ。皆の協力に期待する。あとランクE以下の者も万が一、街中に入ってきた魔物の迎撃に街の衛兵と共に当たってもらう。明日朝、北門に集まれ。
    取り敢えず、この後ランクD以上の者はギルドの訓練場に集まってくれ。まだ、冒険者ギルドに来ていない冒険者がいたら、至急状況を説明して明日の朝には必ずギルドに来るように言ってくれ。以上だ。」

    俺の話が済んだ途端そこかしこで私語か始まったが、俺は対策の説明のため奥の扉から訓練場に向かった。
途中視界のすみであのオオガミが外に出て行こうとしていたので呼び止めた。

    「オオガミお前はこっち来い。」

    それでも知らん顔して行こうとする。

    「何処へ行く。お前も迎撃に参加だ。一緒に訓練場に来い。」
「・・・マスター、俺はEランクで最近冒険者になったばかりの新人なんだけどな。」
「お前の腕は俺が良く知っている。腕が立つのに遊ばせておく余裕は今回はない。お前も日頃、街の人に世話になっているんだから手を貸せ。」
「まあ確かに・・・。解った。手を貸そう。」
渋るオオガミを連れて訓練場へ向かった。

    流石に集まっている中髙ランクの者はパーティーごと揃っている。どいつもベテランで頼もしい奴等だが魔法使いが若干少ないのが気になるな。初撃に魔法で雑魚は片付けたかったのだがな。これでは、長期戦を覚悟しないとな。

    「皆、改めて礼を言う。今数えた所、百八十人程いる。これを六十人ずつABCの三つの班に分ける。現地ではA班をAランク『黒狼の牙』リーダーのジークが、B班はBランク『西風団』リーダーのハインツが。C班は俺がリーダーになる。あと別班として魔法使いは纏まって行動することになる。
    後方に設置される本部から全体の状況を各リーダーに伝達するので、リーダーは各班を指揮して決して敵に対して突出しないように注意してくれ。
    後方本部は回復要員を集めて戦力の回復につとめてくれ。では、班分けするぞ。A班は、・・・」

各班の編成を伝えていく。
一通り話し終えてから、オオガミに呼び掛ける。

「お前は俺と一緒だ」

    「皆集まってくれ。これから俺たちの役割を話す。C班は基本遊撃だ。ABの両方で戦線を固め、状況に応じてC班が援護する形だ。
    まず、戦闘開始時に魔法使い達の範囲魔法を使って数を減らす。接敵するまで繰り返す。とにかく初撃で、どれだけ数を減らせるかで後が楽になるからな。
    敵正面は侯爵様の騎士団五百が当たる。我々はその左右にA、Bそれぞれが担当する。
    明日は朝八時にギルドに集合してくれ。新しく判った情報は朝その時に伝える。あとオオガミ、お前はこの後少し残れ。他は以上だ、解散してくれ。」

    一通り説明が終わったので皆それぞれ準備等のため帰っていく。オオガミに向かって近寄りながら、話しかけた。

    「悪いな。本来ならEランクのお前は街中で待機してもらい、万が一街に侵入してきた敵の対処をしてもらう所なんだが、お前ほどの腕を遊ばせるのは勿体無いからな。ただ、こちらも無理を頼む訳だから、見返りとして冒険者ランクをCに上げてやる。報酬は他の奴等の手前増やせないが、ランクなら俺の権限で上げてやれるからな。済まんが、手を貸してもらうぞ。」
「まあ、強制依頼と言われれば、どのみち仕方ないですしね。」
「済まんな。明日は期待している。」

    正直、実戦でどれだけの力を発揮してくれるかは分からないが、今は少しでも戦力が欲しい。明日は厳しい戦いになりそうだな。



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