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第 七章 ツール移動準備とやはりあったお約束。

第 98話 領地に向けて出発とまたお約束の影③。

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    時は少し遡り、王都の屋敷を拝領しそこに住み始めた頃に俺の執務室でレナードとサウル相手の話から始まる。

    「レナード、サウル、これからの予定を相談したいんだが、ちょっといいかな?」
「はっ、閣下なんでしょうか?」
「何なりと。」
「うん、屋敷も貰ったし人も雇った。王都で暮らす分には困らない形は整ったが、ツールへ移動する為の準備もしないといけないし、勿論ツールの屋敷の準備もしないといけないからね。それにセイラやシーラ、メイド達女性が多い移動になるので、護衛も要るだろうし、馬車や馬、移動中の食料糧秣や水、夜営の道具といった旅の用意がいる。そこでまず護衛の為の騎士を十五~二十名程雇いたい。強さもだが、戦闘馬鹿はいらないので真面目な者を頼む。給料は月金貨二枚寝食、装備付きで集めて貰いたい。出来れば将来の騎士団の幹部になれそうな者を頼むよ。人種は問わない。やってもらえるかな、レナード?」 
「男女は問いませんか?閣下。」
「ああ、問わない。潰れた貴族家に仕えていた者でも良いよ。ただ面接した時に魔法で鑑定させてもらうけどね。俺に反意や敵対心があったら困るからね。寝首をかかれたくないからね。後、このメンバーはツールに行くことになるから移動出来る人を頼むね。」
「期限はいつまでに?」
「う~ん、出発が三週間後位だからね、遅くても十日で集めてくれ。期限が来て人数が足らない時は冒険者に護衛依頼を出すから、慎重に頼むね。」
「はっ、承知しました。」
「うん、頼むね。でサウルには、俺とセイラとシーラは家の馬車に乗るけど、サウルやガトー、クラリス達とメイド達が乗る馬車の用意と物資用の荷馬車、また護衛の乗る馬の用意と色々あるが移動の準備をしてくれ。」
「畏まりました。こちらの期限は何時まででしょうか?」
「そうだね、護衛の人数が決まらないと動けない事があるから、二十日後までに頼むね。費用は渡しておくかい?」
「いえ、ある程度用意の目処がたってから、経費を計算して報告いたします。その時にお願いします。」
「用意する物が多いから段取り良くガトーと手分けしてやってくれ。」
「畏まりました。お任せ下さい。」
「うん、頼む。二人とも色々立て込んで忙しいと思うが、宜しく頼む。」

    ツールへ向けて移動の準備に手を打ちつつ、またツールの現状を知るために、宰相に最近の報告書を見せてもらおうと訪ねた。

    「宰相閣下、お願いがあるのですが?」
「何かなツール伯爵。」
「はい、拝領したツールの町について何も知らないので、事前に知っておこうかと思いまして、経営報告書や収支報告書、産物や各種資源の判る物を見せて頂きたいのです。お願い出来ますか?」
「成る程、領主としては当然だな。今日中に揃えて屋敷に送る様にしよう。」
「有難うございます。後、騎士団三千を持つことを許されましたが、どうやって集めたら良いのですかね?」
「うむ、確かに他の貴族は
既にある程度の騎士を抱えているから、足りない分だけ雇うだけだが、そなたは丸々集めないといけないな。分かった。こう言うのはどうであろうか。冒険者ギルドを通じて、募集をかけてみては。集まった中から面接をして取り敢えず千人集めてみては?いきなり三千は大変だろうから、千人から始めて、暫くは常時募集で少しづつ増やしていってはどうかな?」
「成る程、冒険者ギルドを使って募集をかそれでやってけるのか。分かりました。みます。」
「ただ、雇う時は相手の身元に気を付けよ。今回お主はいくら戦功が大きかったとはいえ、平民から領地持ち貴族になったのだ。色々な所から密偵が差し向けれたとしても、可笑しくはない。古い仕来たりに煩い貴族やお主を警戒している貴族等の他、逆に取り入ろうとしてくる者もいるだろう。気を付けることだ。」

(ふ~、だから貴族とかには関わりたく無かったんだ。全く面倒臭いことだ。)

「助言肝に銘じます。」
「うむ。」

    俺は、退室の挨拶をして部屋から出て、王宮から出て行くべく廊下を歩いていると、向かいから若い騎士が三人話しながらこちらに近づいてくる。何か嫌な雰囲気だ。こちらを見て何やらヒソヒソと話し込んでいるな。

「おや、これはこれは今有名なツール伯爵殿ではありませんか。かような場所に一人とは、いや、ご自分に付ける騎士も雇えていないとは、やはり成り上がり者には人は寄って来ないのですかな?」
「全く全く。」
「その通りですな。」

   (何だこいつら。いきなり失礼なことを言いやがって。ならば。)

「何処のどなたかは存ぜぬが、昨日の今日で人を揃えられると思っている、世間知らずの何処かのボンボンとは違いましてね。私は出来ることからコツコツやるタイプでして、周りが赤子を扱う様に全てやってくれる人とは違うのですよ。」
「なんだと、私が赤子だと言うのか、貴様!」
「別に貴方だとは、言っていないのですがね。なにか身に覚えでもおありかな?」
「貴様、許さんぞ。成り上がりの癖に侯爵家のこの私に向かってその様な口振り。」

激昂する若い騎士のお付きの二人は剣の柄を握りいつでも抜ける態勢だ。

「おや、抜きますか?ここで抜くとご自慢の家が取り潰しになりますよ?自分も死んで家族も道連れにしますか?なんて親孝行な息子でしょうねぇ?」
「・・・・良かろう。ここではやらん。だが練兵場で相手してもらおう。」
「ほう、どうしてもやると言いますか。なら負けたらバラン殿と宰相閣下に事の次第を話して処罰してもらいますが、今なら伯爵に対しての暴言を見逃してあげますが、どうします?」
「クルーガー殿、不味いぞ。相手は帝国のザラ将軍を一騎討ちで倒した男だぞ。」
「そうですぞ、ここは引かれてはいかがかな。」
「いや、ここまで言われたのだ。私にもプライドがある。」
「ふん、高々個人のプライドで家を潰しますか。いいでしょう。勝負の後でうやむやにされないように、立会人を立てますが宜しいな?」
「クルーガー殿、相手は本気だ。本当にお主の実家を潰す積もりだぞ。止めておけ、私は下りるぞ。」
「私も巻き添えは御免こうむる。」
「ちっ、根性無し共が、いいだろう。立会人を立ててやる。お前、隊長を呼んでこい。練兵場に行くぞ、ついてこい。」

    そのクルーガーという騎士の後について、練兵場に着いた。中では近衛騎士達が鍛練をしていたが、俺が入っていくと、皆手を止めた。先程の中の一人が、隊長らしき者を連れてこちらに来る。これもお約束か?


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