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第 五章 王都と陰謀と武闘大会
第 77話 トーナメント敗退後。再びお約束の影が。
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「コーチ、私負けてしまいましたわ。折角コーチから色々とご指導頂きましたのに。申し訳なくて。」
「セイラお嬢様。世の中には強い者などいくらでもいるのです。大事なのは強さは誇るのではなく、ただ己の中で追求していくものなのです。他者と比べて誇った所で、それは自己満足に過ぎません。自己満足した時、成長は止まるのですよ。」
(いや~、オジサン語っちゃったよ。偉そうな事言ったけど自分も出来ていないのにねぇ。自戒しないと。)
「済みませんでした、コーチ。また私、力を誇っていたようですわ。改めて日々精進致しますわ。」
「まあ、お嬢様なんだから剣の修練は程々にね。」
「そんな、お嬢様だなんて・・・・」
なんか赤面して黙り込んだよ。なんでだ?
「おやおや、親の目の前で何をしているのかな?」
「いや、何をって、慰めと励ましをしただけですが?」
「・・・こりゃあ、先は長いかな。セイラ、頑張りなさい。」
「お父様の意地悪。知らない!」
(あー、なんか不穏な会話だが、俺は平民で異邦人なんだがな。判っているよな侯爵さんよ。)
セイラの試合後多少バタバタしたが、陛下からの登城命令があったので、侯爵と俺とラルフさんの三人は迎えの馬車に乗り王宮へ向かった。
「待っていたぞ、早速座ってくれ。」
王様から着席を促されて、全員いつもの応接室の椅子に座る。
「来てもらって早速だが、今朝捕まえた暗殺者達の事だが、情報部で尋問したところ大変なことが判った。クロイセン帝国が侵攻してくる。どうやらここ最近の貴族派の工作は、クロイセン帝国からの謀略の一環だったようだな。
本来は先にアルを殺害して、混乱している所で私を暗殺して、それを待って侵攻する予定であったらしい。だがアルはオオガミ君によって守られて殺害ができないでいるので、今回帝国の方からも手を貸した形みたいだな。
本当なら明日の最終日の決勝戦の時に、私とアルを同時に襲うつもりだったそうだが、貴族派が捕まったため急遽アルだけでもと襲おうとしたらしい。」
陛下から事の次第を聞かされたが、おいおい良いのかよ。
「陛下、言葉を差し挟み申し訳ありませんが、俺は関係者とはいえ平民です。しかも他国者。国家の大事をその様に話されて宜しいのですか?」
「構わんよ。オオガミは事の発端から関わっているし、実際捕まえたのは君だ。そして、正直君の協力を得たい。私からの緊急指名依頼として受けて貰いたい。どうだ?」
「面倒事は嫌いだったんですけどねぇ。まあ、気の良い知り合いも増えてきた所ですし、侯爵には色々良くもして頂きましたので、良いでしょう。依頼引き受けます。ギルドに指名依頼を出して下さい。」
「ありがとう。手配するよ。宰相頼む。」
「すぐに手配しましょう。」
宰相は手配しに部屋から出て行く。それを見届けてから、王様は話を続けた。
「さて、クロイセン帝国の侵攻だが、流石にこっちの予定が狂ったからと言って進軍を早めるということはなくてな、予定通り三日後に帝都を出発して、十日後に越境してくる予定らしい。越境直前に宣戦布告して、すぐに越境する段取りらしいな。段取りからすると、かなり前から用意していたみたいだ。帝国め、小賢しいことを。」
陛下が話している内に、宰相が帰ってきた。
「さて、宰相も戻ってきたので対策をたてねばな。まずは、国境に領地を持つ辺境伯爵に至急連絡をしよう。
今からなら早馬を出せば三日以内で連絡できる。敵が越境してくるまでには、十分に迎撃準備出来るだろう。国軍も召集する。だが、今は建国祭期間中のため治安要員として、兵士や騎士をさいているので直ぐに出せる兵力は、まず二万だ。これをアルが率いてくれ。頼めるか?」
「私で良いのですか?私は軍事に強くはないですが?」
「うむ、そこで、オオガミ君に軍師として同行してもらい、彼に助言をしてもらえ。」
「お話し中割り込んで申し訳ないですが、国軍の将軍達はどうしました?」
「それが実はな。殆どの者が闇ギルドや貴族派と繋がっていたのと、残りはいまだ調査中で、とてもではないが使えないのだよ。」
「なんと、真ですか。それでは。」
「うむ、そういった事情で怖くて使えないのだ。そこで済まんがアルよ、頼めるか?」
「判りました。ラルフもいますし、オオガミ君もいますからね。後続が来るまでは何とかしてみます。」
「頼む。あと更に三日後に後続の一万の計三万だな。これは私が率いよう。今すぐに動かせる兵力はこんな所だ。
帝国がいくつ出してくるか分からないのが怖いが、今はこれで手一杯だ。
そこで、オオガミは従軍してもらう以上指揮系統を決めておかないといけないな。指揮官は将軍としてアル、副官はラルフがやってくれ。オオガミは参謀として率いる兵士はいないが、アルを助言して助けてやってくれ。私が率いる軍が到着するまで、何とか国境を守ってくれ。」
「はっ!」
「了解!」
侯爵と俺は揃って返事をした。さてさて、護衛依頼が戦争に従軍する羽目になるとはね。まあ。なるべく楽して勝ちたいものですねぇ。
「セイラお嬢様。世の中には強い者などいくらでもいるのです。大事なのは強さは誇るのではなく、ただ己の中で追求していくものなのです。他者と比べて誇った所で、それは自己満足に過ぎません。自己満足した時、成長は止まるのですよ。」
(いや~、オジサン語っちゃったよ。偉そうな事言ったけど自分も出来ていないのにねぇ。自戒しないと。)
「済みませんでした、コーチ。また私、力を誇っていたようですわ。改めて日々精進致しますわ。」
「まあ、お嬢様なんだから剣の修練は程々にね。」
「そんな、お嬢様だなんて・・・・」
なんか赤面して黙り込んだよ。なんでだ?
「おやおや、親の目の前で何をしているのかな?」
「いや、何をって、慰めと励ましをしただけですが?」
「・・・こりゃあ、先は長いかな。セイラ、頑張りなさい。」
「お父様の意地悪。知らない!」
(あー、なんか不穏な会話だが、俺は平民で異邦人なんだがな。判っているよな侯爵さんよ。)
セイラの試合後多少バタバタしたが、陛下からの登城命令があったので、侯爵と俺とラルフさんの三人は迎えの馬車に乗り王宮へ向かった。
「待っていたぞ、早速座ってくれ。」
王様から着席を促されて、全員いつもの応接室の椅子に座る。
「来てもらって早速だが、今朝捕まえた暗殺者達の事だが、情報部で尋問したところ大変なことが判った。クロイセン帝国が侵攻してくる。どうやらここ最近の貴族派の工作は、クロイセン帝国からの謀略の一環だったようだな。
本来は先にアルを殺害して、混乱している所で私を暗殺して、それを待って侵攻する予定であったらしい。だがアルはオオガミ君によって守られて殺害ができないでいるので、今回帝国の方からも手を貸した形みたいだな。
本当なら明日の最終日の決勝戦の時に、私とアルを同時に襲うつもりだったそうだが、貴族派が捕まったため急遽アルだけでもと襲おうとしたらしい。」
陛下から事の次第を聞かされたが、おいおい良いのかよ。
「陛下、言葉を差し挟み申し訳ありませんが、俺は関係者とはいえ平民です。しかも他国者。国家の大事をその様に話されて宜しいのですか?」
「構わんよ。オオガミは事の発端から関わっているし、実際捕まえたのは君だ。そして、正直君の協力を得たい。私からの緊急指名依頼として受けて貰いたい。どうだ?」
「面倒事は嫌いだったんですけどねぇ。まあ、気の良い知り合いも増えてきた所ですし、侯爵には色々良くもして頂きましたので、良いでしょう。依頼引き受けます。ギルドに指名依頼を出して下さい。」
「ありがとう。手配するよ。宰相頼む。」
「すぐに手配しましょう。」
宰相は手配しに部屋から出て行く。それを見届けてから、王様は話を続けた。
「さて、クロイセン帝国の侵攻だが、流石にこっちの予定が狂ったからと言って進軍を早めるということはなくてな、予定通り三日後に帝都を出発して、十日後に越境してくる予定らしい。越境直前に宣戦布告して、すぐに越境する段取りらしいな。段取りからすると、かなり前から用意していたみたいだ。帝国め、小賢しいことを。」
陛下が話している内に、宰相が帰ってきた。
「さて、宰相も戻ってきたので対策をたてねばな。まずは、国境に領地を持つ辺境伯爵に至急連絡をしよう。
今からなら早馬を出せば三日以内で連絡できる。敵が越境してくるまでには、十分に迎撃準備出来るだろう。国軍も召集する。だが、今は建国祭期間中のため治安要員として、兵士や騎士をさいているので直ぐに出せる兵力は、まず二万だ。これをアルが率いてくれ。頼めるか?」
「私で良いのですか?私は軍事に強くはないですが?」
「うむ、そこで、オオガミ君に軍師として同行してもらい、彼に助言をしてもらえ。」
「お話し中割り込んで申し訳ないですが、国軍の将軍達はどうしました?」
「それが実はな。殆どの者が闇ギルドや貴族派と繋がっていたのと、残りはいまだ調査中で、とてもではないが使えないのだよ。」
「なんと、真ですか。それでは。」
「うむ、そういった事情で怖くて使えないのだ。そこで済まんがアルよ、頼めるか?」
「判りました。ラルフもいますし、オオガミ君もいますからね。後続が来るまでは何とかしてみます。」
「頼む。あと更に三日後に後続の一万の計三万だな。これは私が率いよう。今すぐに動かせる兵力はこんな所だ。
帝国がいくつ出してくるか分からないのが怖いが、今はこれで手一杯だ。
そこで、オオガミは従軍してもらう以上指揮系統を決めておかないといけないな。指揮官は将軍としてアル、副官はラルフがやってくれ。オオガミは参謀として率いる兵士はいないが、アルを助言して助けてやってくれ。私が率いる軍が到着するまで、何とか国境を守ってくれ。」
「はっ!」
「了解!」
侯爵と俺は揃って返事をした。さてさて、護衛依頼が戦争に従軍する羽目になるとはね。まあ。なるべく楽して勝ちたいものですねぇ。
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