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第 四章 家庭教師な日々と初めての錬金術。

第 46話 家庭教師1日目。①

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    取り敢えず、話しが纏まったので指導開始だ。

    先日使った訓練場に皆で移る。初日ということで、やはり心配なのか侯爵もラルフさんも見学にきた。
お互いが木剣を持って対峙している。

    「始める前に言っておく。高々一ヶ月間で急に強くする事は難しい。だがやりようによっては、能力を伸ばす事は十分に可能だ。ただし、本人にその気が無ければ当然無理だ。強くなりたいか?」
「勿論よ!」
「なら、文句を言わずに耐えられるか?」
「アンタが本当に強くしてくれるならね。」
「言っただろう。強く成るのは君であって、俺がするのではない。俺は強く成れるように鍛練方法を教示してその相手をするだけだ。誰かにしてもらうなど、他力本願の考えでは強くなれんぞ。覚悟はあるのか?」
「勿論よ。強くなりたいの。」
「判った。では始める。」

    俺は木剣の先で直径三メートルの円を描き、その中心に立つように言う。

「円の真ん中に立っていろ。絶対そこから出ないように。これから攻撃を仕掛ける。回避、防御をしろ。ただし、円から絶対出ないように。いいな?
    あと指導期間中は俺の事は〈コーチ〉と呼ぶように。ではいくぞ。」

    俺は、脚に気をまとい、一気に近付き正面から縦に切り下ろす。セイラは木剣を横にして受け止めようとしたが剣が交差する瞬間におれが〈技・強打〉を発動する。受け止めた次の瞬間、セイラは剣の勢いのまま後ろへ吹き飛ばされていった。

「円から出るなと言っただろう!」

    飛ばされ、仰向けになっているセイラに叱責声をかける。

「いつまで寝ている。寝ていて強くなれるのか?」

慌てて起き上がり、木剣を持って元の場所に戻るお嬢様。

    「もう一回言うぞ。本当に強くなりたいなら血反吐を吐いても、なお起き上がり修練をしろ。強くなれる現状の道はそれしかないからな。後、覚えておけ。実戦においては、相手からの攻撃は基本全て回避しろ。
大抵の魔物は君より力が強い。また人間相手でも相手が男なら当然力の方が強い。そんな相手の攻撃を一々まともに受け止めていたら、直ぐに此方の剣が使い物にならなくなるし場合によっては腕力に負けるぞ。また相手によっては、そのまま剣ごと切られるぞ。覚えておけ。」
「はい、コーチ。」
「次、いくぞ。」

    先程と同じように一気に間を詰め縦に切り落とす。
今度は何とか避けたが体勢を崩してしまう。

「ほら、隙だらけだぞ。」

言いながら、今度は横に払う。流石に避けられないと思ってか剣で受け止める。
その瞬間に〈強打〉を発動させ、円の外へ飛ばす。
再び吹き飛ばされ、尻餅をついた格好で悔しがり、すぐ立ち上がって元の場所に戻るお嬢様。

「覚えておけ。どうしても剣で受け止めたいなら、飛ばされないと確信がある時にとすることだ。無ければ、相手の攻撃は受け止めるのではなく、受け流せ。この利点は体勢を崩さずにすみ、次の行動に直ぐ移れる。また場合によっては相手が体勢を崩し隙が出来るかもしれない。その為には、相手の攻撃を見極め理解しろ。どの方向から、どの位の力と速さの攻撃が来るのかを見極めろ。防御の基本はそれだけだ。その為には、相手の動きの全体の流れを感じろ。目だけではなく、全身を使ってな。」
「解りましたわ。コーチ。」

    こうして、二時間も続けて防御の訓練をした。
流石にお嬢様も疲労の為か座り込み、肩で息をしていた。

「〈ハイヒール〉。」

回復呪文を掛けてやり、今日の指導を終える。

    最後まで見ていた侯爵様に終了の挨拶とお願いをする。

「侯爵様、今日の指導は以上です。それで一つお願いがありまして、用意して欲しい物があります。鉛を板状にした一枚一キログラムのものを八枚用意して下さい。急ぎですみませんが、明後日までにはお願いします。」
「鉛の板なんかどうするのだい?剣の訓練に使うのだよね?」
「はい、そうです。時間が無いので急でお願いします。」
「判った。すぐに用意させるよ。」
「有難うごさいます。では明日昼過ぎにまた伺います。」
「ああ、ちょっと待ちたまえ。昼食を用意してある。一緒に食べよう。」
「冒険者と同席とか良いのですか?」
「問題ないよ。それに君は家庭教師なんだからね。」
「はあ、良いのであればご一緒させて頂きます。」本気まじ
「セイラも、一緒にしなさい。」
本気まじ本気まじ本気まじ
    俺の昼飯は侯爵様と一緒に食べることになった。

    家族用のダイニングルームなのか、二十畳位の広さの部屋の中央に長方形の机があり、長い辺には五脚、短い辺には一脚の椅子が並んでいる。俺は上座の左手で一番近い席を、向かい側には、夫人とセイラと弟たちだろう男の子が2人並んで座っている。俺の隣にはラルフさんが座っている。

    (うーん、こんな会食は友達の結婚披露宴以来だな。マナーなんて一般的な物しかしらんぞ。先に断っておこう。)

    「侯爵様、何分俺は冒険者なので、テーブルマナーなんて知らないので、ご不快があったらご勘弁下さい。」
「ああ、気にしないで良いよ。家は元々その辺は煩くないからね。気楽に食べなさい。」
「有難うごさいます。」

礼を言いながらお辞儀をした。

    食事が始まるまでに、侯爵様から家族の紹介を受けた。奥様のシュザンナ様、三十二とはとても思えない程若く見える。ただし、侯爵が年のことを言った時にいきなり黒いプレッシャーを感じたのは、夢であって欲しい。セイラのすぐ下の長男がガウェイン君十二歳、一番下の弟はアルベルト君八歳だ。
    ガウェイン君は父親似なのか、人見知りしない、しっかり者の子で、アルベルト君は明るい元気な子であった。二人とも、そのまま大きくなってもらいたいものだ。

    食事は初め多少もたついたが、次第に日本の頃を思い出して無事に終了する。しかし、気を張って食べていたので、味わうなんてできなかったな。ただ、バターだけでなくクリームソースやチーズといった乳製品を使った料理は旨かった記憶がある。
帰り際に今日の娘の無礼の詫びだと金貨五枚入った巾着をくれた。まあ、くれるなら貰っておくがね。















  

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