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本編② 協力者の登場
24 花姫の記録
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先日知ったドロシーの出身と特技についてアルバートに報告して返ってきた内容はこうであった。
ドロシーがどの程度信用できるかは一度確認してみる。
アリーシャだけで単独で動かせるのは不安があったようだ。
信用していないというが、ドロシーの影響でアリーシャ周辺の環境がよくなったのは事実である。
授業が終わった後、アリーシャは図書館で花姫の過去の記録を確認していた。
「あったわ。アリア・アデライト伯爵令嬢……えーと、ローズの花姫だったのね」
ローズマリーの先輩にあたるのか。
才色兼備、母親の血筋が卑しいと言われていたがそれでも多くの賛同者を得ていたので当時の妃第一候補としてあがっていたようである。
花姫から妃を決める際、匿名化された花姫選定というものが行われる。誰が選定権を持っているか公にされておらず花姫教育が終わった時それぞれ妃に相応しいと感じられた花姫の名を選挙する。
アリアは男女共に人気が高く、妃に相応しいと言われていた。
だけど例の落馬事故でアリアは花姫辞退となり、代わりに妃となったのはアンナ妃であった。
「ええっと……」
家系図の本と経歴の本を読み漁る。
ニコラス王は突然夭折したというが、心臓発作によるものだろうと言われている。残されたアンナ妃はうつ病になりベルタ宮へ移った後に自殺をしてしまった。
アリアが亡くなって1年も経たずにニコラス王とアンナ妃は死んでいる。
これはアリアが残した呪いと関係している可能性があるが、アルバートに聞いても適当にはぐらかされてしまうかもしれない。
ニコラス王が崩御されたため急遽王位についたのがサイラス王であった。彼としてはニコラス王に御子が生まれるまでのつなぎの王太子の予定だったため花姫制度は始まっていなかった。それでも、サイラス王の御子が必要になり花姫制度が開始され、テレサが花姫に選ばれた。
テレサとしてはアリアの落馬事故と立て続けに起きた不幸に恐怖を感じており王宮にあがるのを拒否していたが立派な花姫となり、妃に選ばれ現王の母、国母となった。
テレサが花姫になったばかりの時は悪夢の訴えがあったため、気休めにと神官の血筋の侍女を用意されたという。その後にいろいろあってテレサは落ち着いてきたという。
王太后も少し呪いの影響を受けていたのね。それで、侍女の配置で助かったと。
アリアに関する記録をもう少し探してみよう。
そう思ったがアリーシャは退去せざるをえなくなった。
「何を悪だくみしている」
不機嫌そうに失礼な言葉をかけてくる男にアリーシャは心底嫌な表情をした。顔をあげると同時にその表情を隠す。
「いえ、過去の花姫の歴史について興味があったので」
「最近、王太后の元を訪れたようだな。味方に引き込む気か」
会話が成立しない。する気がないのか。
「王太后を味方につけても無駄だ。あの人は政治に口出しするような性格ではないし、お前がどんな工作をしようとも私の妃はマリと決まっている」
まだ選挙は始まってもいないというのに、勝ち誇ったように言うとは。確かに現状ローズマリーが優勢であろう。
「王太后様とは、あくまで個人的なお付き合いです」
「ジュノー教会にも行ったそうだな。妃にならなかったらエレンの妻の座でも狙っているのか?」
ローズマリーには同情してしまう。
こんな人の話を聞かない男の相手をさせられるなんて。
この前の星祭りのパーティーでも全く彼女の言葉を聞いていなかったのを思い出した。
「殿下は随分と想像力が豊かなのですね。年も離れておりますし、さすがに私でもそこまで非常識ではありませんよ」
自分からみればエレンは子供である。そんな子供に色目使っていると思われるなど不愉快である。
「それでは御機嫌よう」
司書に頼んで資料は片付けてもらうことにする。帰り際にアリーシャはふと司書の机の中に呪いの方式の気配をみた。
王太子が見ている中これを回収するのはやめておこう。明日はアルバートがやってくる日だし、アルバートと相談しながら回収することにしよう。
◇ ◇ ◇
銀髪の女性が泣いていた。彼女は寝台から転げ落ち起き上がる気力もなく慟哭していた。
何があったのかと手を伸ばそうとしても難しい。
「許せない……」
女性はぽつりとつぶやいた。
「許せない。私を陥れたあいつら……私をこんな目に遭わせたあいつらを許せない」
その言葉は強く頭の中にこだまする。ずきずきと痛む。
「あの二人に私が受けた苦痛を……苦しみながら死んでしまえばいい」
それは強い呪いの言葉であった。
彼女が何者か何となく理解できた。
アリア……、あなたは何でそんなに王宮を恨んでいるの?
あいつらというと誰のことだと考えなくてもわかる。どうしてニコラス王夫妻を恨んでいるの。
そんなに妃になれなかったのを恨んでいるのか。
そうではない。
証拠はないが頭の中でちらつく1つの物語が現れる。
ドロシーがどの程度信用できるかは一度確認してみる。
アリーシャだけで単独で動かせるのは不安があったようだ。
信用していないというが、ドロシーの影響でアリーシャ周辺の環境がよくなったのは事実である。
授業が終わった後、アリーシャは図書館で花姫の過去の記録を確認していた。
「あったわ。アリア・アデライト伯爵令嬢……えーと、ローズの花姫だったのね」
ローズマリーの先輩にあたるのか。
才色兼備、母親の血筋が卑しいと言われていたがそれでも多くの賛同者を得ていたので当時の妃第一候補としてあがっていたようである。
花姫から妃を決める際、匿名化された花姫選定というものが行われる。誰が選定権を持っているか公にされておらず花姫教育が終わった時それぞれ妃に相応しいと感じられた花姫の名を選挙する。
アリアは男女共に人気が高く、妃に相応しいと言われていた。
だけど例の落馬事故でアリアは花姫辞退となり、代わりに妃となったのはアンナ妃であった。
「ええっと……」
家系図の本と経歴の本を読み漁る。
ニコラス王は突然夭折したというが、心臓発作によるものだろうと言われている。残されたアンナ妃はうつ病になりベルタ宮へ移った後に自殺をしてしまった。
アリアが亡くなって1年も経たずにニコラス王とアンナ妃は死んでいる。
これはアリアが残した呪いと関係している可能性があるが、アルバートに聞いても適当にはぐらかされてしまうかもしれない。
ニコラス王が崩御されたため急遽王位についたのがサイラス王であった。彼としてはニコラス王に御子が生まれるまでのつなぎの王太子の予定だったため花姫制度は始まっていなかった。それでも、サイラス王の御子が必要になり花姫制度が開始され、テレサが花姫に選ばれた。
テレサとしてはアリアの落馬事故と立て続けに起きた不幸に恐怖を感じており王宮にあがるのを拒否していたが立派な花姫となり、妃に選ばれ現王の母、国母となった。
テレサが花姫になったばかりの時は悪夢の訴えがあったため、気休めにと神官の血筋の侍女を用意されたという。その後にいろいろあってテレサは落ち着いてきたという。
王太后も少し呪いの影響を受けていたのね。それで、侍女の配置で助かったと。
アリアに関する記録をもう少し探してみよう。
そう思ったがアリーシャは退去せざるをえなくなった。
「何を悪だくみしている」
不機嫌そうに失礼な言葉をかけてくる男にアリーシャは心底嫌な表情をした。顔をあげると同時にその表情を隠す。
「いえ、過去の花姫の歴史について興味があったので」
「最近、王太后の元を訪れたようだな。味方に引き込む気か」
会話が成立しない。する気がないのか。
「王太后を味方につけても無駄だ。あの人は政治に口出しするような性格ではないし、お前がどんな工作をしようとも私の妃はマリと決まっている」
まだ選挙は始まってもいないというのに、勝ち誇ったように言うとは。確かに現状ローズマリーが優勢であろう。
「王太后様とは、あくまで個人的なお付き合いです」
「ジュノー教会にも行ったそうだな。妃にならなかったらエレンの妻の座でも狙っているのか?」
ローズマリーには同情してしまう。
こんな人の話を聞かない男の相手をさせられるなんて。
この前の星祭りのパーティーでも全く彼女の言葉を聞いていなかったのを思い出した。
「殿下は随分と想像力が豊かなのですね。年も離れておりますし、さすがに私でもそこまで非常識ではありませんよ」
自分からみればエレンは子供である。そんな子供に色目使っていると思われるなど不愉快である。
「それでは御機嫌よう」
司書に頼んで資料は片付けてもらうことにする。帰り際にアリーシャはふと司書の机の中に呪いの方式の気配をみた。
王太子が見ている中これを回収するのはやめておこう。明日はアルバートがやってくる日だし、アルバートと相談しながら回収することにしよう。
◇ ◇ ◇
銀髪の女性が泣いていた。彼女は寝台から転げ落ち起き上がる気力もなく慟哭していた。
何があったのかと手を伸ばそうとしても難しい。
「許せない……」
女性はぽつりとつぶやいた。
「許せない。私を陥れたあいつら……私をこんな目に遭わせたあいつらを許せない」
その言葉は強く頭の中にこだまする。ずきずきと痛む。
「あの二人に私が受けた苦痛を……苦しみながら死んでしまえばいい」
それは強い呪いの言葉であった。
彼女が何者か何となく理解できた。
アリア……、あなたは何でそんなに王宮を恨んでいるの?
あいつらというと誰のことだと考えなくてもわかる。どうしてニコラス王夫妻を恨んでいるの。
そんなに妃になれなかったのを恨んでいるのか。
そうではない。
証拠はないが頭の中でちらつく1つの物語が現れる。
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