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本編② 協力者の登場
20 犯人のことを知りたい
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呪いをばらまいた犯人はアリア・クロックベル。
アルバートの祖母だったという事実が判明したが、彼からアリアについての情報を一切伝えてくれなかった。
これに関するアリーシャの発言を今は聞けないとアルバートはささっと立ち去ってしまった。それなのに、次まで呪いを回収できればすぐに連絡を出すようにという。
呪いを探すこともやる気が失せてしまう。だが、このまま呪いを放置すればどう自分に作用するかわかったものではない。
アリーシャは思い当たる場所を探し回った。花姫の宮、国王一家の本宮以外のところを探してみる。
薔薇園の中のアーチに呪いがあるのを発見した。
「この程度であれば見つけられるようになったわね」
呪いを回収し終えて自分の部屋に戻ろうとするとアリーシャは嫌な表情になった。
帰り際にヴィクター王太子がコレットと共に薔薇園を散歩していたのだ。
王太子は各花姫とも交流を持つ必要があり、花姫と過ごされることは珍しくない。
アリーシャ以外の花姫には本当にきちんと交流を持っているので大したものである。
ここで知らんぷりして帰ると色々言われてしまう。仕方ないと王太子が近づくまで待ち、頭を下げ道を譲った。
「こんなところで何をしている?」
そのまま無視して通りすぎてくれればよかったのに、あえてつっかかろうとするとは呆れてしまう。
「少し勉強疲れで薔薇園の景色に心を癒されていたところです」
王宮の庭園はどれも素晴らしく特に薔薇園は格別である。王太子に遭遇しなければ日課の散歩に使いたいくらいである。
「まぁ、お勉強を随分頑張っているようですわね。最近は評価もよいらしいし」
コレットはくすりと笑った。別に彼女が素直にアリーシャを褒めているわけではない。
近くにいた侍女たちはくすくすと笑い言い合った。
「その評価は正当なものなのかしら」
「兄の子爵様も教育に参加されているとか、身内びいきの評価をしているのでは?」
「かわいそうな、子爵様。あのような泥姫の面倒までみさせられて」
侍女の喋りに注意を促すこともせず、ヴィクターは鼻で笑った。
泥姫という呼び名を久々に聞いた気がする。ジベールが王宮内に目を光らせてから、侍女たちも注意するようになったようだ。だが、ここにはアリーシャを見下した王太子、コレット、その侍女たちしかおらずジベールの目が届かない。
「みっともないな。今更アルバートを巻き込んで、評価の操作をしてもお前の前身からにじみ出る品のなさは隠しきれない。とてもじゃないが妃に相応しくない」
ヴィクター王太子から直接かけられる妃に絶対選ばれないという通知であろう。
「そうですね」
アリーシャはにこりと微笑み、ヴィクターの言葉を肯定した。腹を立てて感情をむき出しにするかと思っていたようで意外だとざわついた。
「ですが、花姫になったことで素晴らしい教育を受けられ、私の人生に実りのあるものとするでしょう」
「はは、まさか公爵夫人の座でも狙っているのか。だから、ローズマリーに色目を使ってるのか」
色目を使っているのはむしろローズマリーの方です。そういいたかったが、また頬を叩かれるので押さえておく。
「いいえ、ローズマリー様とは個人的な付き合いです」
王太子から舌打ちが聞こえてくる。品がないのはそちらじゃないのだろうか。
「何故マリはこんな泥姫なんか」
明らかな悪意の視線にアリーシャは身じろぎした。だが、諭されまいと必死に足を踏ん張らせる。
「早く勉強に戻らなければなりません。失礼いたします」
あなたたちの相手をしている時間がもったいない。そう心の中で思いながらアリーシャは王太子たちの傍を離れた。
これ以上ここにいても嫌みしか言われないし。
部屋に戻って、アリーシャは指示通りアルバートに手紙を書いた。呪いを見つけたこと、位置を伝えてある。
手紙と一緒に呪いを渡せられれば楽なのだが、全く知識のない人間に運ばせるのは怖い。
呪いの犯人について教えてくれないのに、指示通り動いている自分に納得できない。
被害者のようなものなのだから教えてくれてもいいだろう。と不満はあるが、アルバートはそれすら無視しそうである。
「アリア・クロックベル」
確かそんな名前だった。もうこの世にいないと聞いたがどういう経緯で呪いをばらまいたかアルバートは知っている。知っていればアリーシャのあれ以上の質問を中断させることはなかっただろう。知らないとだけ言えばいいのだし。
「その方がどうかされましたか?」
いつの間にかお茶を持ってきてくれたドロシーにびっくりする。考えることに没頭してしまったようだ。
呪いのことを言おうか躊躇った。
「いや、義理の祖母のことだけど何も知らなくて」
直接の血の繋がりはないが、一応侯爵家の養女となったので祖母と呼んでいいはずだ。
「アルバート様や義父に聞きづらくて……」
「それならアリア様のことをご存じの方がいますよ。きっと喜んで招待してくださいます」
「誰のこと?」
話が進んでいき首をかしげる。
「王太后様です。面倒くさい手続きは私におまかせください」
会うのが憚れる相手じゃないの。
待ちなさいという前にドロシーは部屋を飛び出し、準備に取り掛かった。
翌朝ドロシーから返事が届けられる。
「是非、明日いらしてほしいと仰っております。明日の授業はお休みにしていただくようにフローエ夫人にお願いしましたし、アルバート様にも知らせておきました」
何故こうも仕事が早いのだろうか。
どうやらさすがに王太后の招待となれば教師は何も言えないようである。
アルバートから手紙が届けられる。内容は、授業はともかく呪いの品だけ受け取りに行くとだけ書いていた。確かにいつまでもアリーシャの部屋に置いたままだと面倒だ。アリーシャはアルバートが訪れるのを待った。
アルバートの祖母だったという事実が判明したが、彼からアリアについての情報を一切伝えてくれなかった。
これに関するアリーシャの発言を今は聞けないとアルバートはささっと立ち去ってしまった。それなのに、次まで呪いを回収できればすぐに連絡を出すようにという。
呪いを探すこともやる気が失せてしまう。だが、このまま呪いを放置すればどう自分に作用するかわかったものではない。
アリーシャは思い当たる場所を探し回った。花姫の宮、国王一家の本宮以外のところを探してみる。
薔薇園の中のアーチに呪いがあるのを発見した。
「この程度であれば見つけられるようになったわね」
呪いを回収し終えて自分の部屋に戻ろうとするとアリーシャは嫌な表情になった。
帰り際にヴィクター王太子がコレットと共に薔薇園を散歩していたのだ。
王太子は各花姫とも交流を持つ必要があり、花姫と過ごされることは珍しくない。
アリーシャ以外の花姫には本当にきちんと交流を持っているので大したものである。
ここで知らんぷりして帰ると色々言われてしまう。仕方ないと王太子が近づくまで待ち、頭を下げ道を譲った。
「こんなところで何をしている?」
そのまま無視して通りすぎてくれればよかったのに、あえてつっかかろうとするとは呆れてしまう。
「少し勉強疲れで薔薇園の景色に心を癒されていたところです」
王宮の庭園はどれも素晴らしく特に薔薇園は格別である。王太子に遭遇しなければ日課の散歩に使いたいくらいである。
「まぁ、お勉強を随分頑張っているようですわね。最近は評価もよいらしいし」
コレットはくすりと笑った。別に彼女が素直にアリーシャを褒めているわけではない。
近くにいた侍女たちはくすくすと笑い言い合った。
「その評価は正当なものなのかしら」
「兄の子爵様も教育に参加されているとか、身内びいきの評価をしているのでは?」
「かわいそうな、子爵様。あのような泥姫の面倒までみさせられて」
侍女の喋りに注意を促すこともせず、ヴィクターは鼻で笑った。
泥姫という呼び名を久々に聞いた気がする。ジベールが王宮内に目を光らせてから、侍女たちも注意するようになったようだ。だが、ここにはアリーシャを見下した王太子、コレット、その侍女たちしかおらずジベールの目が届かない。
「みっともないな。今更アルバートを巻き込んで、評価の操作をしてもお前の前身からにじみ出る品のなさは隠しきれない。とてもじゃないが妃に相応しくない」
ヴィクター王太子から直接かけられる妃に絶対選ばれないという通知であろう。
「そうですね」
アリーシャはにこりと微笑み、ヴィクターの言葉を肯定した。腹を立てて感情をむき出しにするかと思っていたようで意外だとざわついた。
「ですが、花姫になったことで素晴らしい教育を受けられ、私の人生に実りのあるものとするでしょう」
「はは、まさか公爵夫人の座でも狙っているのか。だから、ローズマリーに色目を使ってるのか」
色目を使っているのはむしろローズマリーの方です。そういいたかったが、また頬を叩かれるので押さえておく。
「いいえ、ローズマリー様とは個人的な付き合いです」
王太子から舌打ちが聞こえてくる。品がないのはそちらじゃないのだろうか。
「何故マリはこんな泥姫なんか」
明らかな悪意の視線にアリーシャは身じろぎした。だが、諭されまいと必死に足を踏ん張らせる。
「早く勉強に戻らなければなりません。失礼いたします」
あなたたちの相手をしている時間がもったいない。そう心の中で思いながらアリーシャは王太子たちの傍を離れた。
これ以上ここにいても嫌みしか言われないし。
部屋に戻って、アリーシャは指示通りアルバートに手紙を書いた。呪いを見つけたこと、位置を伝えてある。
手紙と一緒に呪いを渡せられれば楽なのだが、全く知識のない人間に運ばせるのは怖い。
呪いの犯人について教えてくれないのに、指示通り動いている自分に納得できない。
被害者のようなものなのだから教えてくれてもいいだろう。と不満はあるが、アルバートはそれすら無視しそうである。
「アリア・クロックベル」
確かそんな名前だった。もうこの世にいないと聞いたがどういう経緯で呪いをばらまいたかアルバートは知っている。知っていればアリーシャのあれ以上の質問を中断させることはなかっただろう。知らないとだけ言えばいいのだし。
「その方がどうかされましたか?」
いつの間にかお茶を持ってきてくれたドロシーにびっくりする。考えることに没頭してしまったようだ。
呪いのことを言おうか躊躇った。
「いや、義理の祖母のことだけど何も知らなくて」
直接の血の繋がりはないが、一応侯爵家の養女となったので祖母と呼んでいいはずだ。
「アルバート様や義父に聞きづらくて……」
「それならアリア様のことをご存じの方がいますよ。きっと喜んで招待してくださいます」
「誰のこと?」
話が進んでいき首をかしげる。
「王太后様です。面倒くさい手続きは私におまかせください」
会うのが憚れる相手じゃないの。
待ちなさいという前にドロシーは部屋を飛び出し、準備に取り掛かった。
翌朝ドロシーから返事が届けられる。
「是非、明日いらしてほしいと仰っております。明日の授業はお休みにしていただくようにフローエ夫人にお願いしましたし、アルバート様にも知らせておきました」
何故こうも仕事が早いのだろうか。
どうやらさすがに王太后の招待となれば教師は何も言えないようである。
アルバートから手紙が届けられる。内容は、授業はともかく呪いの品だけ受け取りに行くとだけ書いていた。確かにいつまでもアリーシャの部屋に置いたままだと面倒だ。アリーシャはアルバートが訪れるのを待った。
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