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終 再会
しおりを挟む「お兄さん」
呼ばれる声にツミは振り返ると、そこにマコモは悲しそうにツミを見つめていた。
「どうして?」
マコモがそう尋ねるとツミは皮肉げに笑った。
「どうしてだろうな。何かが頭の中に響いてきて、お前を死なせてはいけないと思った。いや………、多分、お前に死んでほしくなかったんだろうな」
ツミはマコモの方に近づこうとしたがやめた。
「結局俺は人殺しをやめれないんだな」
「…………………」
静かに時間が流れ、お互い沈黙したままだ。
ようやく口を開いたのはツミの方だった。
「マコモ、俺が言うのもなんだがお前は不用心すぎる。いくらここが山神さまの領域だったとしても、俺なんかに簡単に気を許して………」
色々言いたいことがあったのだが、ツミは躊躇しやめた。
「神社に帰れ」
それだけ言い残し、ツミはその場を去った。
「………………」
ツミを引き留めようとしたがその前に彼はいなくなってしまった。
あれからどのくらいの時が経っただろうか。
私は彼に再び会うことはなかった。
彼との再会を想いながら月日は流れていた。
もう一年くらいは経つのではないだろうか。
マコモはそう思った。
もう会えないだろう、そう諦めようと思ってもマコモはどこかで期待していた。 また彼はマコモの前に現れるのではないかと。
そんな日々を過ごすマコモの目の前に一人の青年が現れた。
「………」
マコモは青年を見て内心驚いた。
彼を連れて来たタカクの話によるとこうだ。
彼は山神【トヨノモリノミノミコト】が夢に現れ、姫巫女の身を命にかけても守るようにと告げられたという。
氏素性のわからぬ者に神社の者はいぶかしんだが、彼の話を聞けば聞くほど信憑性が高く感じられたという。
タカクはあまり信じていないのだが、王の意見は事の真偽をマコモに確かめてもらおうと言った。
「本来ならば姫巫女様が直に会うことのできない者ですが、どうか山の神にお尋ねください」
「尋ねるまでもありません」
マコモは青年にほわりと笑いかけた。
そして、ゆっくりと青年の前へと歩く。
タカクは不用意に近づいてはなりませんと窘めるが、マコモは聞かなかった。
「顔をあげてください」
青年は顔をあげ、マコモに恭しく挨拶をする。
「お初にお目にかかります。私、山の神より姫巫女の近辺の警護を任されました………」
「はい、宜しくお願いします。ところであなたのお名前はなんというのかしら?」
本当の名前よ?
念を入れて聞いた後、青年の口から名前が明かされる。その名を聞いてマコモは嬉しくなり笑った。
「そう、宜しくね。アモウ」
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