ひら、ひらり。

はぁて

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「李子くん。こっち」

 浴槽の中で、ちゃぷん。水音。僕の身体を反転させて、相良さんが見下ろしてくる。その、広い肩幅を見ていると不思議と安心してしまう。

「きょうは、とっておきがあるんだ」

 にこ。深い笑み。

「とっておき?」

 僕はぽけっとしながら答える。

「李子くんは初めてかもしれないけど、俺が優しくするから心配しないで」

 その言葉は、麻薬だ。僕の頭も心も歪に痺れさせる。

 相良さんの笑顔。なんか、いつもと違う気がするのはなぜだろう。笑ってるのに、優しい顔なのに、なにか違和感を覚える。それが胸につかえてしまう。もう半年もmateとして上手くやってきて、信頼関係は築かれているはずなのに。

 この胸騒ぎは、なに?

 ざぱ、とお風呂から上がって。相良さんが、僕の身体を拭いて服を着せてくれる。ここまでは、いつも通りだ。相良さんも服を着て。洗面所で髪の毛にドライヤーをかけてくれる。いつも通り。いつも通り。


 連れていかれたのは、相良さんの部屋。きぃ、と扉が閉まる音。その瞬間、なにかがはっきりと変わった。


 相良さんが身に纏う空気だ。


「sit down《座って》」

 あれ。今日はkneel(犬のような)おすわりじゃないんだ。相良さんとplayをするときは、よくそっちを使うから。

 こんなに丁寧に座ってと言われたのは初めてだ。訝しみながらも、僕の体は相良さんのCommandに従う。なんとなく、正座のほうがいいだろうと思って絨毯の上に正座をする。

 相良さんは直立して僕を見下ろしている。とても、高いところから。その視線がヒヤリとしていて、痛い。こめかみに突き刺さる。
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