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お風呂の蓋を開ける。
「ひゃっ」
素っ頓狂な声が出てしまった。だって、これ……これ……。
カララ、冷気が浴室の中に流れ込む。
「李子くんに楽しんでもらいたかったんだけど、俺も入っていい?」
何も身にまとっていない相良さんがいた。僕はしどろもどろになりながら、相良さんを招き入れる。
「こんなにいると、怖いです」
お風呂のバスタブの中に浮かぶ……いっぱいの黄色。ヒヨコの人形だ。20匹以上いるにちがいない。バスタブではヒヨコ渋滞が起きている。
「……そ、そっか」
相良さんは、少し戸惑いながら頭の後ろをぽりぽりとかいた。僕をからかうとかではなく、本気で僕に喜んでもらえると思ってたらしい。僕はそんな相良さんの考え方が好きでたまらない。
「ふう。李子くん、ほんとにちっちゃいなあ」
頭の上にタオルなんて乗せちゃってさ。相良さんが、ほわほわと呟く。僕は相良さんに後ろから抱きしめられていた。僕のつむじの上には、相良さんの顎が乗っかっている。
「……ちっちゃいって言われるのちょっとやです」
いつのまにか、ほんとうのきもちを言えるようになっていた。いつもは、他人の顔色を伺ってしまって、建前しか言えないのに。
相良さんだけだ。僕が本音を言えるのは。
「……じゃあ、ちっちゃいって言う代わりに、かわいいって言ってもいいの?」
いじわるな質問。
「……」
僕はぶくぶくとお風呂に口をつけて泡を浮かべた。その行動にツボってしまったのか、相良さんがくくく、と喉奥で笑い声を出す。笑うと僕がもっと拗ねるのを知ってるから、頑張って声を押し殺そうとしている。
「ひゃっ」
素っ頓狂な声が出てしまった。だって、これ……これ……。
カララ、冷気が浴室の中に流れ込む。
「李子くんに楽しんでもらいたかったんだけど、俺も入っていい?」
何も身にまとっていない相良さんがいた。僕はしどろもどろになりながら、相良さんを招き入れる。
「こんなにいると、怖いです」
お風呂のバスタブの中に浮かぶ……いっぱいの黄色。ヒヨコの人形だ。20匹以上いるにちがいない。バスタブではヒヨコ渋滞が起きている。
「……そ、そっか」
相良さんは、少し戸惑いながら頭の後ろをぽりぽりとかいた。僕をからかうとかではなく、本気で僕に喜んでもらえると思ってたらしい。僕はそんな相良さんの考え方が好きでたまらない。
「ふう。李子くん、ほんとにちっちゃいなあ」
頭の上にタオルなんて乗せちゃってさ。相良さんが、ほわほわと呟く。僕は相良さんに後ろから抱きしめられていた。僕のつむじの上には、相良さんの顎が乗っかっている。
「……ちっちゃいって言われるのちょっとやです」
いつのまにか、ほんとうのきもちを言えるようになっていた。いつもは、他人の顔色を伺ってしまって、建前しか言えないのに。
相良さんだけだ。僕が本音を言えるのは。
「……じゃあ、ちっちゃいって言う代わりに、かわいいって言ってもいいの?」
いじわるな質問。
「……」
僕はぶくぶくとお風呂に口をつけて泡を浮かべた。その行動にツボってしまったのか、相良さんがくくく、と喉奥で笑い声を出す。笑うと僕がもっと拗ねるのを知ってるから、頑張って声を押し殺そうとしている。
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