126 / 162
126 相良先生へ
しおりを挟む
僕はベッドの中で目を覚ました。いつもあるはずの温もりがない。セミダブルのベッドの半分には僕が。そしてもう半分には相良さんの姿はなかった。シーツに手のひらをはわせる。冷たい。相良さんは、かなり前にいなくなってしまったらしい。
ベッドの脇に置かれた丸テーブル。白くて、台が砂浜みたいなデザインをしている。その上に、白いメモが置いてあった。
『急な仕事で出ていかなきゃならなくなった。支払いは済ませてあるから、帰っても大丈夫だよ。忘れ物はしないように。あと、家に着いたら連絡して』
慌てて書いたのか、文字は走り書き。でも、相良さんの字は綺麗で。なんていうか、ぱきっとした印象。あれ、裏面にも何か書いてある。ぺらりと捲って文字を確認した。
『李子くん。好きだよ』
こっちの文字は、小さくて丁寧だ。慎重に書いたのかな。僕の胸はぱあぁっと華やぐ。僕はどきどきと高鳴る胸に手を置いた。嬉しい。嬉しい。相良さんに大切にされている。そのことが、夢みたいで。僕は昨日の夜に起きた悲しいことなんか忘れてしまいそうになった。でも、「ちはや」という3文字は僕を簡単に現実に引き戻してくる。やっぱり……気になる。相良さんに問いただすのは勇気がいるし……面倒くさいやつだと思われたくない。どうしよう……。
僕はベッドの中で30分考え込んで結論を出した。とりあえず、今はちはやという言葉を忘れよう。人の名前じゃないかもしれないし。ペットとかの名前かもしれない。もしかしたら、相良さんが好きなアニメのキャラクターの名前かもしれない。それを間違えて口に出してしまったんだ。昨日はとても疲れていたみたいだから。うん、きっとそう。僕は心のもやを振り払うようにしてベッドから抜け出す。そうして、身なりを正して職場に向かう。ホテルの外、海から見える朝焼けは綺麗で。僕はそれを相良さんと一緒に見れたらどんなに嬉しいだろうと思った。
ベッドの脇に置かれた丸テーブル。白くて、台が砂浜みたいなデザインをしている。その上に、白いメモが置いてあった。
『急な仕事で出ていかなきゃならなくなった。支払いは済ませてあるから、帰っても大丈夫だよ。忘れ物はしないように。あと、家に着いたら連絡して』
慌てて書いたのか、文字は走り書き。でも、相良さんの字は綺麗で。なんていうか、ぱきっとした印象。あれ、裏面にも何か書いてある。ぺらりと捲って文字を確認した。
『李子くん。好きだよ』
こっちの文字は、小さくて丁寧だ。慎重に書いたのかな。僕の胸はぱあぁっと華やぐ。僕はどきどきと高鳴る胸に手を置いた。嬉しい。嬉しい。相良さんに大切にされている。そのことが、夢みたいで。僕は昨日の夜に起きた悲しいことなんか忘れてしまいそうになった。でも、「ちはや」という3文字は僕を簡単に現実に引き戻してくる。やっぱり……気になる。相良さんに問いただすのは勇気がいるし……面倒くさいやつだと思われたくない。どうしよう……。
僕はベッドの中で30分考え込んで結論を出した。とりあえず、今はちはやという言葉を忘れよう。人の名前じゃないかもしれないし。ペットとかの名前かもしれない。もしかしたら、相良さんが好きなアニメのキャラクターの名前かもしれない。それを間違えて口に出してしまったんだ。昨日はとても疲れていたみたいだから。うん、きっとそう。僕は心のもやを振り払うようにしてベッドから抜け出す。そうして、身なりを正して職場に向かう。ホテルの外、海から見える朝焼けは綺麗で。僕はそれを相良さんと一緒に見れたらどんなに嬉しいだろうと思った。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる