ひら、ひらり。

はぁて

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 志麻さんは見た目とうってかわって、言葉が丁寧だった。単に接客中だからという理由かもしれないけど、こんな美容師さんがいてくれたら安心して髪の毛を任せられる。

 僕は普段は1000円カットの安い床屋しか行かないから、こんな高級そうな美容院にどぎまぎしてしまう。

 僕、場違いじゃないだろうか。特になにも言われなかったから、大学生がよく着る値段が手頃なブランドのパーカーに、白いパンツという動きやすい格好にした。白いパンツは形崩れしないから気に入っている。靴はスポーツメーカーがおしゃれ靴として出しているものを履いている。白いスニーカーは悪目立ちしないので、どんな服にも似合う。汚さないようにするのは大変だけど……僕は毎週靴を洗うくらい綺麗好きだ。この靴も履き続けて1年くらい経つけど、手入れが行き届いているからかまだ履けそう。物持ちはいい方だと思う。美容院の鏡で自分の格好をちらちらと確認していたら、相良さんにぽんと肩を叩かれた。そのままぐにぐにと肩を揉まれる。

「リラックスしてー。顔、こわばってる」

 相良さんは僕の緊張に気づいてくれていたらしい。僕はふう、と深呼吸をして目を閉じる。大丈夫。わからないことがあれば、相良さんがついててくれるからなんとかなる。そう思って、志麻さんが案内してくれた椅子に向かった。

「じゃあ、よろしくお願いします」

「はい。お願いします」

 相良さんは僕の椅子の隣に置いてあるソファに背もたれを押し付けていた。このソファも高そうだな……茶色い革張りの大きなそれは存在感も強くて。僕は店内の装飾に目を取られていた。半個室のようになっているのか、隣の席のお客さんは見えない仕組みになっている。僕はそれに安堵した。誰かに見られていると思うと、余計緊張してしまうだろうから。
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