52 / 73
阿月様とシュカ王子と桜くんの1日(side きなこ)
しおりを挟む
阿月様のお子さま。桜くんが生後4ヶ月を迎えた頃。
僕はなんでも口に運んでしまう桜くんをなんとか止めようと宥める日々を送っていた。桜くんは、ママである阿月様の言うことは素直に聞くのだが、阿月様が見ていないところで自由に冒険を始めてしまうのが、僕のひやっとするところだ。
「桜くん。危ないでちよ。それは、めっ! でち。積み木はお口に入れないでちよ。ぽんぽんが痛くなるでち」
シュカ王子が買い与えた赤ちゃん玩具の積み木を桜くんはとても気に入っている。寝ているときも手に握るくらいだ。積み木のおままごとセットのそれらは、人参の形をした積み木が特に桜くんのお気に入りでいつも舐めてしまう。僕は度々注意するのだが、許してもらえるとわかっているからかずっと舐めている。
「こらー。桜」
「あうー」
阿月様が部屋に戻ると、途端に桜くんは積み木を舐めるのをやめる。
なんなんでちか。この子……しっかりと、人を選んでやってるでちか?
あまりの賢さに唸っていると、そうか桜くんはシュカ王子の血を引いているからこんなにやんちゃくんなのだと納得することができた。
桜くんが生後6ヶ月を迎えると、阿月様の提案でハーフバースデーを行うことになった。
風船やリボンでお部屋を飾り付けして、桜くんにかわいいお洋服を着せて、家族写真を撮るのだ。
「阿月様。これ、よかったら……」
おそるおそる、阿月様にハーフバースデーのプレゼントを渡す。
「わー! きなこくん嬉しい! ありがとう。開けていい?」
「もちろんでち!」
桜くんのお洋服を作ってみたでち。気に入ってもらえるでちかな……?
「すごい。きなこくんの手作り!? さすがきなこくん天才だね! 今日はきなこくんにもらったお洋服を桜に着せて写真を撮ろう」
くまちゃんの耳をつけたトレーナーを作ってみたでち。
桜くんはいたずらしなければ、優しいくまちゃんみたいな子なんでちよ。
「はーい。写真撮るでちよー! 桜くん。こっち見てくださいでち」
僕は桜くんのお気に入りの人参の積み木をふりふりと振って、カメラに目線を誘う。シュカ王子は正装で、阿月様も羽織を身につけている。
「はい、チーズ」
何枚も写真を撮るのが楽しい。正面からの真面目なショットと、少し微笑ましいショット。すると、僕のことを阿月様が呼び止めた。
「きなこくんも一緒に写ろうよ」
「えっ。いいんでちか?」
「もちろんだよ。桜の隣に来て」
守備衛兵にカメラを渡し、僕も家族写真に混ぜてもらうことになった。
うう、緊張するでち。
撮影後、写真を印刷すると、緊張しながら笑う僕の顔を見たシュカ王子が、お腹を抱えて笑っていた。
ひどいでち。僕も緊張するんでち。
阿月様が大変喜んでいる様子だったのが嬉しくて、久しぶりにアザラシの姿に変身したら以前のようにもふってくれた。桜くんにこの姿を見せるのは初めてで、興味深そうに僕の毛をつんつんしていた。
僕は今とても幸せでち。
僕はなんでも口に運んでしまう桜くんをなんとか止めようと宥める日々を送っていた。桜くんは、ママである阿月様の言うことは素直に聞くのだが、阿月様が見ていないところで自由に冒険を始めてしまうのが、僕のひやっとするところだ。
「桜くん。危ないでちよ。それは、めっ! でち。積み木はお口に入れないでちよ。ぽんぽんが痛くなるでち」
シュカ王子が買い与えた赤ちゃん玩具の積み木を桜くんはとても気に入っている。寝ているときも手に握るくらいだ。積み木のおままごとセットのそれらは、人参の形をした積み木が特に桜くんのお気に入りでいつも舐めてしまう。僕は度々注意するのだが、許してもらえるとわかっているからかずっと舐めている。
「こらー。桜」
「あうー」
阿月様が部屋に戻ると、途端に桜くんは積み木を舐めるのをやめる。
なんなんでちか。この子……しっかりと、人を選んでやってるでちか?
あまりの賢さに唸っていると、そうか桜くんはシュカ王子の血を引いているからこんなにやんちゃくんなのだと納得することができた。
桜くんが生後6ヶ月を迎えると、阿月様の提案でハーフバースデーを行うことになった。
風船やリボンでお部屋を飾り付けして、桜くんにかわいいお洋服を着せて、家族写真を撮るのだ。
「阿月様。これ、よかったら……」
おそるおそる、阿月様にハーフバースデーのプレゼントを渡す。
「わー! きなこくん嬉しい! ありがとう。開けていい?」
「もちろんでち!」
桜くんのお洋服を作ってみたでち。気に入ってもらえるでちかな……?
「すごい。きなこくんの手作り!? さすがきなこくん天才だね! 今日はきなこくんにもらったお洋服を桜に着せて写真を撮ろう」
くまちゃんの耳をつけたトレーナーを作ってみたでち。
桜くんはいたずらしなければ、優しいくまちゃんみたいな子なんでちよ。
「はーい。写真撮るでちよー! 桜くん。こっち見てくださいでち」
僕は桜くんのお気に入りの人参の積み木をふりふりと振って、カメラに目線を誘う。シュカ王子は正装で、阿月様も羽織を身につけている。
「はい、チーズ」
何枚も写真を撮るのが楽しい。正面からの真面目なショットと、少し微笑ましいショット。すると、僕のことを阿月様が呼び止めた。
「きなこくんも一緒に写ろうよ」
「えっ。いいんでちか?」
「もちろんだよ。桜の隣に来て」
守備衛兵にカメラを渡し、僕も家族写真に混ぜてもらうことになった。
うう、緊張するでち。
撮影後、写真を印刷すると、緊張しながら笑う僕の顔を見たシュカ王子が、お腹を抱えて笑っていた。
ひどいでち。僕も緊張するんでち。
阿月様が大変喜んでいる様子だったのが嬉しくて、久しぶりにアザラシの姿に変身したら以前のようにもふってくれた。桜くんにこの姿を見せるのは初めてで、興味深そうに僕の毛をつんつんしていた。
僕は今とても幸せでち。
17
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説
魔王の溺愛
あおい 千隼
BL
銀の髪が美しい青い瞳の少年。彼が成人の儀を迎えた日の朝すべてが変わった。
喜びと悲しみを分かち合い最後に選ぶのは愛する者の笑顔と幸せ───
漆黒の王が心を許したのは人の子。大切な者と心つなぐ恋のお話。
…*☆*…………………………………………………
他サイトにて公開しました合同アンソロジー企画の作品です
表紙・作画/作品設定:水城 るりさん
http://twitter.com/ruri_mizuki29
水城 るりさんのイラストは、著作権を放棄しておりません。
無断転載、無断加工はご免なさい、ご勘弁のほどを。
No reproduction or republication without written permission.
…*☆*…………………………………………………
【公開日2018年11月2日】
千年の祈り、あるいは想い(うらみ)
味桜
BL
それなら、また君を見つけに行く。何度生まれ変わろうと、僕は君を忘れない―――
<前編>
永きにわたり、人間から迫害される超能力者一族<エスピリカ>。
かつて王家に仕えた一族はなぜ王国にとって不吉な予言をし、王の怒りを買い王国を追放されたのか。
予言の告げる「王国の罪」とは。
王国兵士×エルフ系人外のBLファンタジーここに開幕ッ!
<後編>
時は前編の千年前。王家に仕えた一族が
王国から追放されるまでの物語。
そしてトルマーレ王国「真実」のストーリー。
前編の"予言"の瞬間と、
禁断の"主従BL"が描かれる!
前編のキーパーソン、
王×族長の前世の記憶、ここに在りッ!
(BL色は後編の方が濃い目ッ!)
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる