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魔王様のいたずら
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「ん……」
微睡みの中から、目が覚めようとしていた。何か、暑い。とにかく暑かった。阿月はまだぱしぱしとする目を擦りながら、暑さの原因を探す。
「あ……」
阿月の目の前に見えたのは、艶のある黒髪。頭上からは、すぅすぅと小さくも落ち着いた吐息が聞こえてくる。阿月の腰に回された腕の主を見上げると、それはジスであることが判明した。
だ、抱っこされてる!? だから暑いんだ……!
他人と一緒のベッドで眠ったことすらない阿月の頭の中には警報音が鳴り出す。
『アルファと添い寝なんてけしからん! 危険! 危険! 今すぐ離れるべし!』
そんな自分の心の声が聞こえてきた。
「……やだ。離れたくない」
思わず阿月の口から本音が洩れる。
「ああ。わたしもだ」
心地いい低音が、阿月の耳の傍で聞こえて身体をびくりと跳ねさせる。
「なゃっ!?」
「初夜から同じベッドに入っていいものかとわたしも悩んでいたんだが、善は急げと天上の国の言葉にもあるように、わたしは昨日公務から帰ってからそなたと眠っていた」
あわあわと慌てふためく阿月を薄目に捉えて、ジスは
「もう少しこうしていよう。そなたはあたたかいな。平熱が高いのだろうか」
「あ、えと、平熱は、36.8℃だから高いかもしれないです」
「ふむ。そうか。ならば」
「わっ」
ジスが阿月の身体を抱き起こして、お腹の上に乗せる。
「湯たんぽにしてしまおう」
「……!」
ど、どうしよ。ジスのお腹の上に乗ってる、僕。
「お、重くない?」
「まさか。わたしをなんだと思っている」
「ま、魔王様……」
ふふん、と少し鼻高に上擦る声でジスは
「魔王なのだから、人間1人くらいは軽々抱ける」
「う……」
「まあしばらく、わたしは二度寝するが。そなたも眠るとよかろう」
た、確かに、まだ寝足りないかもだけど……! この状況。僕の下半身とジスの下半身が自然な位置で重なってしまって、恥ずかしいよ……。
すぴーと寝息を立てて、ジスは二度寝の体勢に入ってしまった。阿月はおろおろしながら、でも動くとジスを起こしてしまいそうで怖くて、目をきゅっと閉じてじっとしていた。
あ、でもーー。
右頬をジスの胸の辺りに押し付ける。
トクン、トクンという心臓の音は同じ。僕と同じ速さなんだ。魔王様も、心臓がドキドキすることもあるのかな? なんて妄想じみたことを想像してしまい、心の中で頭をぶんぶんと振る。
「……あったかいな」
ジスの大胆な行動に驚きもしたが、嬉しさの方が勝る。うん、だって僕のいた元の世界ではこういうことは起こらなかっただろうし。いいのかな。ここでオメガとしての2回目の人生を送っても。
2回目の人生ならば、何も恐れることなく自由気ままに生きれるだろうかーー。
一抹の不安を覚えながらも阿月も夢の中に落ちていく。無意識にジスの腕にぎゅっと手を回したことなど、自覚もせずに。
微睡みの中から、目が覚めようとしていた。何か、暑い。とにかく暑かった。阿月はまだぱしぱしとする目を擦りながら、暑さの原因を探す。
「あ……」
阿月の目の前に見えたのは、艶のある黒髪。頭上からは、すぅすぅと小さくも落ち着いた吐息が聞こえてくる。阿月の腰に回された腕の主を見上げると、それはジスであることが判明した。
だ、抱っこされてる!? だから暑いんだ……!
他人と一緒のベッドで眠ったことすらない阿月の頭の中には警報音が鳴り出す。
『アルファと添い寝なんてけしからん! 危険! 危険! 今すぐ離れるべし!』
そんな自分の心の声が聞こえてきた。
「……やだ。離れたくない」
思わず阿月の口から本音が洩れる。
「ああ。わたしもだ」
心地いい低音が、阿月の耳の傍で聞こえて身体をびくりと跳ねさせる。
「なゃっ!?」
「初夜から同じベッドに入っていいものかとわたしも悩んでいたんだが、善は急げと天上の国の言葉にもあるように、わたしは昨日公務から帰ってからそなたと眠っていた」
あわあわと慌てふためく阿月を薄目に捉えて、ジスは
「もう少しこうしていよう。そなたはあたたかいな。平熱が高いのだろうか」
「あ、えと、平熱は、36.8℃だから高いかもしれないです」
「ふむ。そうか。ならば」
「わっ」
ジスが阿月の身体を抱き起こして、お腹の上に乗せる。
「湯たんぽにしてしまおう」
「……!」
ど、どうしよ。ジスのお腹の上に乗ってる、僕。
「お、重くない?」
「まさか。わたしをなんだと思っている」
「ま、魔王様……」
ふふん、と少し鼻高に上擦る声でジスは
「魔王なのだから、人間1人くらいは軽々抱ける」
「う……」
「まあしばらく、わたしは二度寝するが。そなたも眠るとよかろう」
た、確かに、まだ寝足りないかもだけど……! この状況。僕の下半身とジスの下半身が自然な位置で重なってしまって、恥ずかしいよ……。
すぴーと寝息を立てて、ジスは二度寝の体勢に入ってしまった。阿月はおろおろしながら、でも動くとジスを起こしてしまいそうで怖くて、目をきゅっと閉じてじっとしていた。
あ、でもーー。
右頬をジスの胸の辺りに押し付ける。
トクン、トクンという心臓の音は同じ。僕と同じ速さなんだ。魔王様も、心臓がドキドキすることもあるのかな? なんて妄想じみたことを想像してしまい、心の中で頭をぶんぶんと振る。
「……あったかいな」
ジスの大胆な行動に驚きもしたが、嬉しさの方が勝る。うん、だって僕のいた元の世界ではこういうことは起こらなかっただろうし。いいのかな。ここでオメガとしての2回目の人生を送っても。
2回目の人生ならば、何も恐れることなく自由気ままに生きれるだろうかーー。
一抹の不安を覚えながらも阿月も夢の中に落ちていく。無意識にジスの腕にぎゅっと手を回したことなど、自覚もせずに。
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