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まおうさまとの出会い(1)
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「あ、れ……」
僕はベッドの上で、天井に右手を伸ばしている姿勢で目が覚めた。何かを掴みそこねたみたいに感じられて、不甲斐なく手を下ろす。
あれ、夢か……でも、ここはどこ? 見知らぬふかふかのベッドと、白い天井。窓辺から溢れ出る光の筋。もそり、とベッドを降りて窓辺に近づき、薄いレース調のカーテンを見開く。
「っ……綺麗」
僕の目の前にはつい今しがた開花したばかりのような桜に似た花びらがふわふわと舞っていた。太陽は天井の位置にある。花びらの1欠片が窓から部屋に入ってくる。僕はそれをちぎれないように拾い上げてから、再びベッドの中にもぐる。
どんな夢だったっけ?
夢の内容を思い出そうとしていると、部屋のドアノブが回されて人が入ってきた。
「おはようございます。阿月様」
「ふぇ?」
意識を失う前に見かけた銀髪ウルフの男の人が立っていた。
「あれ、夢じゃない? 僕、天国に来てしまったの?」
僕は自らの頬っぺをぷにぷにとつまむ。普通に痛いので、これは現実に起きていることなのかな?
慌てふためく僕のことを優しく見守っていた男の人ーー名前は、ライアと魔王様から呼ばれていた気がするーーに話しかけてみた。
「あ、あのっ」
「はい。なんでしょう?」
もじもじとつま先を合わせながら、僕は自分の心を鼓舞する。初対面の人と話すのが得意じゃなくて、声が震えてしまうのが直したい癖。
「僕はいったいどうしてここに……ここはどこですか?」
ライアはにこ、と親しげな表情を浮かべて僕を見る。その瞳には「大丈夫ですよ」と書いてあるみたいだった。僕の座っていたベッドの横にライアも腰掛ける。
「説明をしようかと思ったのですが、昨日はジス様が阿月様を召喚したてでお疲れのようだったので。まずはーー」
片手に持っていた小麦色のバスケットから何かを取り出す。
「朝食でもどうです?」
ライアが差し出してきたクロワッサンと、カヌレとメロンパン。どれも僕の大好物だ。
「いいんですか?」
僕はうずうずしながらライアに問いかける。ライアは笑顔のまま、「どうぞ」と僕の手のひらにパンを渡した。
「あ、甘い……おいしい」
「それはよかったです。人間界にあると聞く食べ物を作ってみたのですが……お口に合うようで何よりです」
「え? これライアが作ったの!?」
「ええ」
「すごい……! すごくおいしいよ! ありがとう!」
もっもっ、と食事をする僕をライアはとことん優しい表情で見つめてくる。
こんなにがっついちゃって、躾のなってない子だと思われたらどうしよう。
しかし、僕の空腹は僕の脳にもっと早く食べろと急かす信号を送る。だから僕は、10分もせずにライアが持ってきたパンを完食してしまった。
「さて。では簡単に説明しますね」
「お願いします」
ライアがキリよく話を再開する。
「阿月様は、まだ生きておられます。阿月様は魔王ジス様の召喚の儀により、この冥界へ召喚されたのです」
「そうなんだ……じゃあ、まだ僕は生きてるんだ」
すぐに納得しろと言われると難しいが、先程の空腹が満ちた様子を冷静に受け止めるとまだ自分は生きているというのは本当らしい。それに、確かに魔王様の頭部には小さな突起のような角が生えていた。僕の世界では考えられないことだ。
僕はベッドの上で、天井に右手を伸ばしている姿勢で目が覚めた。何かを掴みそこねたみたいに感じられて、不甲斐なく手を下ろす。
あれ、夢か……でも、ここはどこ? 見知らぬふかふかのベッドと、白い天井。窓辺から溢れ出る光の筋。もそり、とベッドを降りて窓辺に近づき、薄いレース調のカーテンを見開く。
「っ……綺麗」
僕の目の前にはつい今しがた開花したばかりのような桜に似た花びらがふわふわと舞っていた。太陽は天井の位置にある。花びらの1欠片が窓から部屋に入ってくる。僕はそれをちぎれないように拾い上げてから、再びベッドの中にもぐる。
どんな夢だったっけ?
夢の内容を思い出そうとしていると、部屋のドアノブが回されて人が入ってきた。
「おはようございます。阿月様」
「ふぇ?」
意識を失う前に見かけた銀髪ウルフの男の人が立っていた。
「あれ、夢じゃない? 僕、天国に来てしまったの?」
僕は自らの頬っぺをぷにぷにとつまむ。普通に痛いので、これは現実に起きていることなのかな?
慌てふためく僕のことを優しく見守っていた男の人ーー名前は、ライアと魔王様から呼ばれていた気がするーーに話しかけてみた。
「あ、あのっ」
「はい。なんでしょう?」
もじもじとつま先を合わせながら、僕は自分の心を鼓舞する。初対面の人と話すのが得意じゃなくて、声が震えてしまうのが直したい癖。
「僕はいったいどうしてここに……ここはどこですか?」
ライアはにこ、と親しげな表情を浮かべて僕を見る。その瞳には「大丈夫ですよ」と書いてあるみたいだった。僕の座っていたベッドの横にライアも腰掛ける。
「説明をしようかと思ったのですが、昨日はジス様が阿月様を召喚したてでお疲れのようだったので。まずはーー」
片手に持っていた小麦色のバスケットから何かを取り出す。
「朝食でもどうです?」
ライアが差し出してきたクロワッサンと、カヌレとメロンパン。どれも僕の大好物だ。
「いいんですか?」
僕はうずうずしながらライアに問いかける。ライアは笑顔のまま、「どうぞ」と僕の手のひらにパンを渡した。
「あ、甘い……おいしい」
「それはよかったです。人間界にあると聞く食べ物を作ってみたのですが……お口に合うようで何よりです」
「え? これライアが作ったの!?」
「ええ」
「すごい……! すごくおいしいよ! ありがとう!」
もっもっ、と食事をする僕をライアはとことん優しい表情で見つめてくる。
こんなにがっついちゃって、躾のなってない子だと思われたらどうしよう。
しかし、僕の空腹は僕の脳にもっと早く食べろと急かす信号を送る。だから僕は、10分もせずにライアが持ってきたパンを完食してしまった。
「さて。では簡単に説明しますね」
「お願いします」
ライアがキリよく話を再開する。
「阿月様は、まだ生きておられます。阿月様は魔王ジス様の召喚の儀により、この冥界へ召喚されたのです」
「そうなんだ……じゃあ、まだ僕は生きてるんだ」
すぐに納得しろと言われると難しいが、先程の空腹が満ちた様子を冷静に受け止めるとまだ自分は生きているというのは本当らしい。それに、確かに魔王様の頭部には小さな突起のような角が生えていた。僕の世界では考えられないことだ。
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