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第1話

第1-1話 はじまりはじまり

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日常の中の不思議/オトナ子供とコドモ大人

~追憶・先生の突発的リビド。またはランチ代わりの思案~
もしも、キミの『願い』が何か、もしくは誰かの手によって叶えられたとしたらどう思う?
あぁ、『願い』は『夢』とか『希望』とか『理想』と言い換えてもいいぞ。
でどうだ。キミは何の努力も、苦悩も、批難も無くそれを手に、我がモノにできるんだ。
逃げることも立ち向かうこともしなくていいんだ。人類の9.8割が喜んで受け入れるだろうね。それで、キミはどう思うのかな。「          。」
はーぁん、なるほど、キミの考えはそうか………ん?俺はど…思うかって?……そうだ…な、この…界のルー…で俺は、…いが関……て…る………。お……てい…の…—————

~駆けろ青年 先生救出編~
 走る。日曜日の昼下がり。公園では男の子たちが遊んでいて、ベンチでお喋りに夢中な母親たちを斜目にブロック塀の角を右に。走る。
子犬を散歩させている近所のおじいさんを傍目にマンションの裏手を左に。走る。気になっていた春期限定スイーツののぼりも脇目を振らずに走る。走る。
前方から迫る自転車の群れも華麗に躱…さず端に寄り過ぎ去るのを待ち、再び走る。走る。走る。走—————。

 先程から走ってばかりのこの青年は新月 透(しんげつ とおる)。風貌みため精神なかみもどこにでもいるごく一般的な高校二年生。そんな彼が何故一人で障害物マラソン大会に興じているか、それは十数分前に遡る。

 自分の部屋で課題をしていた彼は、張っていた気を緩めて一息入れようと椅子から立った。そのとき、彼の携帯から初期設定のままの着信音が鳴り出す。それに気づき開くと、画面には着信元の‘‘先生‘‘の名前が映されている。新月は緩めた気を張り直す。
「はい、新月です。」《ぁ、…えー》「先生?どうしました?」《とお、る、たす…て…》ピッ。ツー。ツー……
 6秒にも満たない通話時間に、助けを求める先生のくぐもった声。よく分からない瞬劇にポカンとその場で立ち尽くしてひとり黙考していた新月。が、どんなに頭を抱えても先生の状況を心配しても天啓が降りるわけもなく。
(んんー…よし)
頭よりも脚の方が先に動いた新月は家を勢い任せに飛び出した。
 「はぁ…はぁ…っぐ」新月が走り続けて(たまに歩いて)だいたい2キロ程の場所に目的地はある。そこは、廃墟認定寸前のボロ屋で、ひびが入った外壁には蔦が這い上がり、庭は苔や土、泥が混じり合ったような有様。はっきり言ってヒドい。ハロウィンの撮影所だったら文句の付けようも無いのだが。今にも魔女が出てきそうな家にお似合いな朽ちかけの木のドアを開くと、そこには新築同然のきれいな玄関があった。外観と内装のギャップに訪れるほぼ全員が目を丸くし、頭上に?マークを浮かべ疑問をぶつけてくる。しかし、新月もよく分かっていないためそういうモノだとしか言えない。そんな不思議な家の住人もまた不思議な人なのである。  【続く】
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