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「さっきの魔物、何かやたら硬くなかった?お陰ですっごい時間かかっちゃったよ」
盗聴範囲内に入った途端、ハーピスがつまらなそうに言う。
不貞腐れたようなその声は普段の彼より幾分大きい。
そして実に説明的だ。
「そうですね、守備型でしたから、中々倒れてくれませんでした」
それに合わせるように俺も説明的な言葉を返す。
だがハーピスと違い、その言葉には何の感情も乗せることができなかったし、若干たどたどしい。
「でももう魔物の気配はしませんよ。午前分は終了にして一度施設に戻ってもいいかもしれません」
続くドクトは感情こそ込められていなかったが、ごく自然に言葉を発している。
流石Mr.パーフェクト、演技までお手の物か。
俺たちはハーピスの作戦に従って早速盗聴中の側妃相手に一芝居打っているわけだが、もしかしたらこの中で一番演技が下手なのは俺かもしれない。
「そういえば気になったんだけど」
俺が自分の大根ぶりに軽くへこんでいると、ハーピスがちらりとこちらを見る。
それは本題に入ると伝えるアイコンタクトだ。
「物理攻撃無効だったはずだけど、微妙に無効じゃなくない?」
ハーピスの合図に頷き、俺も用意していた台詞を言う。
「やっぱりそうですよね。魔物の脚が当たった時、衝撃と痛みがあったので、もしかして完全に無効化はされないのかなと思っていました」
そして次の発言者であるドクトを見た。
彼も俺に頷くと、すうっと息を吸い、
「そうなのですか?なら一度私たちで実験をして、効果を確認しないといけませんね」
さり気ない台詞とは裏腹に厳しい顔をして、握る拳に力を入れていた。
そして作戦は第二段階へ入る。
「魔法無効は術式をいじってないから効いてるはずなんだ」
ハーピスはそう言うと徐に懐から紙を1枚取り出した。
それには何のかはわからないが術式が記されている。
「これは簡単な水魔法の術式で、大きな水の塊を対象の頭上に落とすことができる陣だよ」
ハーピスは説明しながらそれを見やすいように見せてくれたが、残念ながら俺たちには術式が読めない。
なので揃って「へー、そうなんだ」という顔で彼の説明を聞くしかなかった。
「結界がちゃんと発動していれば、水は結界に阻まれてネージュにはかからないはず、だから」
動かないでねとハーピスに言われ、俺はその場で固まった。
結界魔法を掛けられていないドクトは巻き添えを嫌がり、ハーピスの横に移動する。
「行くよ、ウォーターボール」
ハーピスが発動キーである魔法名を唱えれば、俺の頭上に水の球が形作られていく。
そしてそれはあっという間に大きくなり、一抱え程の大きさになると同時に俺目掛けて落ちてきた。
「うぉっ!?」
結界で守られている自分には届かないと頭では理解しているが、目に見えない結界を意識することは難しく、反射的に目を閉じた俺の口からは色気もへったくれもない声が漏れてしまった。
バッシャーン
一拍遅れて水球が地面に着いた音が鼓膜を揺らす。
恐る恐る目を開いてみれば、俺は一切濡れることなくその場にへたり込んでいた。
「うん、やっぱり魔法無効はちゃんと機能してたね」
その俺を見下ろして、地面に跳ね返った水をドクトと共に浴びたパーピスが腰に手を当てて満足そうに笑った。
…これは水も滴るいい男ってやつ?
盗聴範囲内に入った途端、ハーピスがつまらなそうに言う。
不貞腐れたようなその声は普段の彼より幾分大きい。
そして実に説明的だ。
「そうですね、守備型でしたから、中々倒れてくれませんでした」
それに合わせるように俺も説明的な言葉を返す。
だがハーピスと違い、その言葉には何の感情も乗せることができなかったし、若干たどたどしい。
「でももう魔物の気配はしませんよ。午前分は終了にして一度施設に戻ってもいいかもしれません」
続くドクトは感情こそ込められていなかったが、ごく自然に言葉を発している。
流石Mr.パーフェクト、演技までお手の物か。
俺たちはハーピスの作戦に従って早速盗聴中の側妃相手に一芝居打っているわけだが、もしかしたらこの中で一番演技が下手なのは俺かもしれない。
「そういえば気になったんだけど」
俺が自分の大根ぶりに軽くへこんでいると、ハーピスがちらりとこちらを見る。
それは本題に入ると伝えるアイコンタクトだ。
「物理攻撃無効だったはずだけど、微妙に無効じゃなくない?」
ハーピスの合図に頷き、俺も用意していた台詞を言う。
「やっぱりそうですよね。魔物の脚が当たった時、衝撃と痛みがあったので、もしかして完全に無効化はされないのかなと思っていました」
そして次の発言者であるドクトを見た。
彼も俺に頷くと、すうっと息を吸い、
「そうなのですか?なら一度私たちで実験をして、効果を確認しないといけませんね」
さり気ない台詞とは裏腹に厳しい顔をして、握る拳に力を入れていた。
そして作戦は第二段階へ入る。
「魔法無効は術式をいじってないから効いてるはずなんだ」
ハーピスはそう言うと徐に懐から紙を1枚取り出した。
それには何のかはわからないが術式が記されている。
「これは簡単な水魔法の術式で、大きな水の塊を対象の頭上に落とすことができる陣だよ」
ハーピスは説明しながらそれを見やすいように見せてくれたが、残念ながら俺たちには術式が読めない。
なので揃って「へー、そうなんだ」という顔で彼の説明を聞くしかなかった。
「結界がちゃんと発動していれば、水は結界に阻まれてネージュにはかからないはず、だから」
動かないでねとハーピスに言われ、俺はその場で固まった。
結界魔法を掛けられていないドクトは巻き添えを嫌がり、ハーピスの横に移動する。
「行くよ、ウォーターボール」
ハーピスが発動キーである魔法名を唱えれば、俺の頭上に水の球が形作られていく。
そしてそれはあっという間に大きくなり、一抱え程の大きさになると同時に俺目掛けて落ちてきた。
「うぉっ!?」
結界で守られている自分には届かないと頭では理解しているが、目に見えない結界を意識することは難しく、反射的に目を閉じた俺の口からは色気もへったくれもない声が漏れてしまった。
バッシャーン
一拍遅れて水球が地面に着いた音が鼓膜を揺らす。
恐る恐る目を開いてみれば、俺は一切濡れることなくその場にへたり込んでいた。
「うん、やっぱり魔法無効はちゃんと機能してたね」
その俺を見下ろして、地面に跳ね返った水をドクトと共に浴びたパーピスが腰に手を当てて満足そうに笑った。
…これは水も滴るいい男ってやつ?
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