婚約破棄から始まる4度の人生、今世は隣国の王太子妃!?

緋水晶

文字の大きさ
74 / 80

朝のひと悶着、評価はヘタレ

しおりを挟む
落ち込んだ気分のまま目覚めた翌日の朝、太陽の光が降り注ぐ部屋でリリに髪を梳かれていた私は気がついてしまった。
なににって、この話の真相と陛下の企みにだ。
「エル、大至急ルード様と話がしたいわ!」
「かしこまりました、マイラさんに予定を確認して参ります」
「お願い」
エルは選び終えた衣装を手早くミディに託しながら部屋を出て行く。
今日選んだものは淡い黄色なのか、珍しい。
けれどきっとこの爽やかな日差しによく合うだろう。
「ではアンネローゼ様、こちらの袖にお手を」
「ええ」
そんなことを考えながら着替えを終えた私は戻ってきたエルにすぐにルード様の部屋へ連れて行かれた。
「っきゃああああああー!!?」
そして部屋に入ってすぐに叫んでしまった。
だってまさか着替えている最中だなんて思わなかったんだもの!!
「し、しっし失礼しました!!」
私は昨日のリチャード様よろしく大慌てで部屋から逃げ出した。
慌てて駆け込んできた私の乱れた髪を見て身支度担当だったリリとミディが悲鳴を上げたが、私にはそれに構う余裕は微塵もない。
初めて見る夫の裸(と言っても上半身だけだが)に赤くなった頬を必死で押さえていた。
「……あの殿下、つかぬ事をお伺いしますが」
「なんだ」
「ご結婚後はアンネローゼ様と毎夜一緒に過ごしていらっしゃいますよね?」
「……ああ」
「そう、ですよね、え、ですよね?」
「ああ、夜少し世間話をして、ほとんどの場合そのまま互いの部屋に帰るがな…」
「……ああ、なんてことでしょう。不敬でなければ『このヘタレ』と罵ってやれるのに」
「おい、口に出てるぞ」
「わざとです。それにしても嘆かわしい」
「わかっている!みなまで言うな!!」
ちなみに私が逃げだした後の部屋の中でルード様が苦虫を噛み潰したような顔をしていて、マイラが眩暈に襲われているのをエルはいたたまれない気持ちで見守っていたそうだ。

「今朝はその、失礼しました。せっかくお時間をくださったのに…」
「いや俺もうっかりしていたし気にするな」
あの後「ていうかこの後お二人でご朝食をお召し上がりになるんですから、その時にお話になればいいんじゃないですか?」というリリの言葉にさらに撃沈した私は恥ずかしさと気まずさを抱えて食堂へ向かった。
そして程なく現れたルード様に謝罪したのだが、羞恥からどうしても顔を上げることができないで俯いている。
「話があるんだろう?」
「はい」
向かい側でルード様が苦笑している気配がする。
心なしか声音が優しいのは私に気を遣ってくれているからか。
いけない、ただでさえ忙しい方なのに私のことでこれ以上煩わせては。
「実は私、今回の真相と陛下の企みに気づいてしまったのです」
「……企み?」
「はい」
思い切って顔を上げてみるとルード様は険しい顔をしていて、思わず「ひゅっ…」と声が漏れた。
いや、それは声というよりも息の音に近い。
瞬間的に訪れた緊張で絞まった喉が勝手に出した音だ。
「陛下が何を企んだ、と?」
「あ……」
より鋭くなった視線を受け、私は自身の失敗を悟る。
いくらなんでもこの国の王である陛下に対して『企む』という言い方は不敬が過ぎた。
ましてその方はルード様のお父様でいらっしゃったのに。
「あ、あの、もうしわ」
「あのくそ親父がまた何を企んだと?ローゼ、教えてくれ!!」
潤みそうになる視界を隠すために咄嗟に私が頭を下げたのと、ルード様が怒りも露わにテーブルを叩いたのはほぼ同時だった。
但しその矛先は予想とは違い私ではなかったようだった。
「……え?あれ?」
私は呆然としつつもルード様の不機嫌の原因が自分ではないとわかり、ようやく息が吸えた気がして胸を撫で下ろした。
そして自分が気づいたことを伝えるべく空咳を一つして喉を整えた後、ゆっくりと口を開く。
きっとこの予測は間違っていないはずと信じて。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~

桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜 ★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました! 10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。 現在コミカライズも進行中です。 「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」 コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。 しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。 愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。 だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。 どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。 もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。 ※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!) 独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。 ※誤字脱字報告もありがとうございます! こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

王妃を蔑ろにし、愛妾を寵愛していた王が冷遇していた王妃と入れ替わるお話。

ましゅぺちーの
恋愛
王妃を蔑ろにして、愛妾を寵愛していた王がある日突然その王妃と入れ替わってしまう。 王と王妃は体が元に戻るまで周囲に気づかれないようにそのまま過ごすことを決める。 しかし王は王妃の体に入ったことで今まで見えてこなかった愛妾の醜い部分が見え始めて・・・!? 全18話。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

処理中です...