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朝のひと悶着、評価はヘタレ
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落ち込んだ気分のまま目覚めた翌日の朝、太陽の光が降り注ぐ部屋でリリに髪を梳かれていた私は気がついてしまった。
なににって、この話の真相と陛下の企みにだ。
「エル、大至急ルード様と話がしたいわ!」
「かしこまりました、マイラさんに予定を確認して参ります」
「お願い」
エルは選び終えた衣装を手早くミディに託しながら部屋を出て行く。
今日選んだものは淡い黄色なのか、珍しい。
けれどきっとこの爽やかな日差しによく合うだろう。
「ではアンネローゼ様、こちらの袖にお手を」
「ええ」
そんなことを考えながら着替えを終えた私は戻ってきたエルにすぐにルード様の部屋へ連れて行かれた。
「っきゃああああああー!!?」
そして部屋に入ってすぐに叫んでしまった。
だってまさか着替えている最中だなんて思わなかったんだもの!!
「し、しっし失礼しました!!」
私は昨日のリチャード様よろしく大慌てで部屋から逃げ出した。
慌てて駆け込んできた私の乱れた髪を見て身支度担当だったリリとミディが悲鳴を上げたが、私にはそれに構う余裕は微塵もない。
初めて見る夫の裸(と言っても上半身だけだが)に赤くなった頬を必死で押さえていた。
「……あの殿下、つかぬ事をお伺いしますが」
「なんだ」
「ご結婚後はアンネローゼ様と毎夜一緒に過ごしていらっしゃいますよね?」
「……ああ」
「そう、ですよね、え、ですよね?」
「ああ、夜少し世間話をして、ほとんどの場合そのまま互いの部屋に帰るがな…」
「……ああ、なんてことでしょう。不敬でなければ『このヘタレ』と罵ってやれるのに」
「おい、口に出てるぞ」
「わざとです。それにしても嘆かわしい」
「わかっている!みなまで言うな!!」
ちなみに私が逃げだした後の部屋の中でルード様が苦虫を噛み潰したような顔をしていて、マイラが眩暈に襲われているのをエルはいたたまれない気持ちで見守っていたそうだ。
「今朝はその、失礼しました。せっかくお時間をくださったのに…」
「いや俺もうっかりしていたし気にするな」
あの後「ていうかこの後お二人でご朝食をお召し上がりになるんですから、その時にお話になればいいんじゃないですか?」というリリの言葉にさらに撃沈した私は恥ずかしさと気まずさを抱えて食堂へ向かった。
そして程なく現れたルード様に謝罪したのだが、羞恥からどうしても顔を上げることができないで俯いている。
「話があるんだろう?」
「はい」
向かい側でルード様が苦笑している気配がする。
心なしか声音が優しいのは私に気を遣ってくれているからか。
いけない、ただでさえ忙しい方なのに私のことでこれ以上煩わせては。
「実は私、今回の真相と陛下の企みに気づいてしまったのです」
「……企み?」
「はい」
思い切って顔を上げてみるとルード様は険しい顔をしていて、思わず「ひゅっ…」と声が漏れた。
いや、それは声というよりも息の音に近い。
瞬間的に訪れた緊張で絞まった喉が勝手に出した音だ。
「陛下が何を企んだ、と?」
「あ……」
より鋭くなった視線を受け、私は自身の失敗を悟る。
いくらなんでもこの国の王である陛下に対して『企む』という言い方は不敬が過ぎた。
ましてその方はルード様のお父様でいらっしゃったのに。
「あ、あの、もうしわ」
「あのくそ親父がまた何を企んだと?ローゼ、教えてくれ!!」
潤みそうになる視界を隠すために咄嗟に私が頭を下げたのと、ルード様が怒りも露わにテーブルを叩いたのはほぼ同時だった。
但しその矛先は予想とは違い私ではなかったようだった。
「……え?あれ?」
私は呆然としつつもルード様の不機嫌の原因が自分ではないとわかり、ようやく息が吸えた気がして胸を撫で下ろした。
そして自分が気づいたことを伝えるべく空咳を一つして喉を整えた後、ゆっくりと口を開く。
きっとこの予測は間違っていないはずと信じて。
なににって、この話の真相と陛下の企みにだ。
「エル、大至急ルード様と話がしたいわ!」
「かしこまりました、マイラさんに予定を確認して参ります」
「お願い」
エルは選び終えた衣装を手早くミディに託しながら部屋を出て行く。
今日選んだものは淡い黄色なのか、珍しい。
けれどきっとこの爽やかな日差しによく合うだろう。
「ではアンネローゼ様、こちらの袖にお手を」
「ええ」
そんなことを考えながら着替えを終えた私は戻ってきたエルにすぐにルード様の部屋へ連れて行かれた。
「っきゃああああああー!!?」
そして部屋に入ってすぐに叫んでしまった。
だってまさか着替えている最中だなんて思わなかったんだもの!!
「し、しっし失礼しました!!」
私は昨日のリチャード様よろしく大慌てで部屋から逃げ出した。
慌てて駆け込んできた私の乱れた髪を見て身支度担当だったリリとミディが悲鳴を上げたが、私にはそれに構う余裕は微塵もない。
初めて見る夫の裸(と言っても上半身だけだが)に赤くなった頬を必死で押さえていた。
「……あの殿下、つかぬ事をお伺いしますが」
「なんだ」
「ご結婚後はアンネローゼ様と毎夜一緒に過ごしていらっしゃいますよね?」
「……ああ」
「そう、ですよね、え、ですよね?」
「ああ、夜少し世間話をして、ほとんどの場合そのまま互いの部屋に帰るがな…」
「……ああ、なんてことでしょう。不敬でなければ『このヘタレ』と罵ってやれるのに」
「おい、口に出てるぞ」
「わざとです。それにしても嘆かわしい」
「わかっている!みなまで言うな!!」
ちなみに私が逃げだした後の部屋の中でルード様が苦虫を噛み潰したような顔をしていて、マイラが眩暈に襲われているのをエルはいたたまれない気持ちで見守っていたそうだ。
「今朝はその、失礼しました。せっかくお時間をくださったのに…」
「いや俺もうっかりしていたし気にするな」
あの後「ていうかこの後お二人でご朝食をお召し上がりになるんですから、その時にお話になればいいんじゃないですか?」というリリの言葉にさらに撃沈した私は恥ずかしさと気まずさを抱えて食堂へ向かった。
そして程なく現れたルード様に謝罪したのだが、羞恥からどうしても顔を上げることができないで俯いている。
「話があるんだろう?」
「はい」
向かい側でルード様が苦笑している気配がする。
心なしか声音が優しいのは私に気を遣ってくれているからか。
いけない、ただでさえ忙しい方なのに私のことでこれ以上煩わせては。
「実は私、今回の真相と陛下の企みに気づいてしまったのです」
「……企み?」
「はい」
思い切って顔を上げてみるとルード様は険しい顔をしていて、思わず「ひゅっ…」と声が漏れた。
いや、それは声というよりも息の音に近い。
瞬間的に訪れた緊張で絞まった喉が勝手に出した音だ。
「陛下が何を企んだ、と?」
「あ……」
より鋭くなった視線を受け、私は自身の失敗を悟る。
いくらなんでもこの国の王である陛下に対して『企む』という言い方は不敬が過ぎた。
ましてその方はルード様のお父様でいらっしゃったのに。
「あ、あの、もうしわ」
「あのくそ親父がまた何を企んだと?ローゼ、教えてくれ!!」
潤みそうになる視界を隠すために咄嗟に私が頭を下げたのと、ルード様が怒りも露わにテーブルを叩いたのはほぼ同時だった。
但しその矛先は予想とは違い私ではなかったようだった。
「……え?あれ?」
私は呆然としつつもルード様の不機嫌の原因が自分ではないとわかり、ようやく息が吸えた気がして胸を撫で下ろした。
そして自分が気づいたことを伝えるべく空咳を一つして喉を整えた後、ゆっくりと口を開く。
きっとこの予測は間違っていないはずと信じて。
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