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アンナ編
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同日昼過ぎ。
彼女たちは交代でアンナの目覚めを待つことにし、今の時間はルナとアデルが見ることになっていた。
2人はお菓子と紅茶を楽しみながら昔話に花を咲かせていたのだが、
「せっかく天国に行けたのに!?」
ハッと一気に目を覚ましたアンナが掛け布団を跳ね除けながら開口一番にそう言ったので飛び上がらんばかりに驚いた。
「は、はい?」
「…天国?」
突然の大声に驚きに固まる2人が呟いた声に「ん?」とアンナがそちらを振り向けば、
「あら、やっぱり天国?」
彼女は至極真面目な表情でそう宣った。
「きゃー!間違いなく天国だわぁ!!」
アンナが目を覚ましたと聞き、まずは女性だけで話を聞こうと3人のヒロインと4人の悪役令嬢が揃った。
だがその光景を見たアンナは再び叫ぶと、目を爛々と光らせ全員をじっくりと眺める。
「可愛い系が銀髪青目、ピンク髪に黄色い目、青髪にオレンジの目。綺麗系が茶髪に金目、赤髪に緑目、緑髪に薄茶の目、そして黒髪赤目!最高だわ!!」
シャーリー、ルナ、アデル、リーネ、ルリアーナ、アナスタシア、イザベルと視線を走らせ、その度にはあはあと荒い息を吐く。
正直、黒髪黒目で大和撫子風の品の良い可愛さを持った美少女然としている目の前の人物が変人にしか見えない。
「……どうしましょうか」
「……どうにかできるんですか?」
「アデル様、諦めちゃダメ」
「いや、でもこれは…」
変人ことアンナの様子に頭痛を覚えて片手で頭を押さえるルリアーナの呟きに、アデルが「無理では?」と言いたげな顔を返す。
ルナは「なんとか頑張ろうよ」と伝えるが、リーネはアデルと同じ気持ちのようだ。
シャーリー、アナスタシア、イザベルは何も言わないが、表情はリーネやアデルが浮かべているものに似ている。
「…何故かしら、この子を見ていると、昔の同級生を思い出すの」
ルリアーナはふるふると頭痛を追い払うように頭を振りながらリーネを見る。
「同じクラスだったのは1年の時だけだったけれど、リーネちゃんは覚えてないかしら?」
「…ん?」
高校の時にルリアーナと3年間同じクラスだったというリーネは「ああ、高校の時の同級生なの?」と言いながらアンナの奇行を見て、
「……もしかしてキョン?」
と呟いた。
「そうそう、あの子」
「はい?呼びました?」
その呟きに同意を返したのがルリアーナ。
質問を返したのがアンナだった。
しかもその言葉はリーネの推測を、延いてはルリアーナの推測を肯定するものとしか思えないもので。
「ごめん、私ちょっと帰るわ」
「待って、私も帰る」
ガタッ、ガタンと音を立てて立ち上がり、ルリアーナとリーネは一目散に部屋から去ろうとした。
「ちょちょちょ、帰るってなに!?」
「ここはルリアーナ様のお家ですよ!?」
「お姉ちゃんまでどうしたの!?」
当然周りはそんな二人の反応に驚き、制止の声を上げる。
理由はすでに察しているが、だからと言ってこの人を置いて行かれても困るのだ。
ルナとアデルとシャーリーはルリアーナの腕と胴体を、イザベルとアナスタシアはリーネの腕をそれぞれ掴んで、というよりはぎゅとしがみついて全力で2人の退室を止めた。
「ああ、絡み合う美女たち…眼福だわぁ…」
だが7人がこんなことになっている元凶が涎を垂らさんばかりの恍惚とした表情でそんなことを宣ったせいで、全員で部屋を出そうになった。
「改めまして、豊田杏奈になるはずだった京山優里花です」
7人がかりでなんとかアンナが異世界転移をしてきたことを説明すると、「あ、やっぱり貴女たち君となのヒロインよね」とアンナが言ったため、そのことを理解しているなら話は早いとゲームシリーズのヒロインと悪役令嬢が全員転生者であることを説明すると、「ってことはそこの2人は私の知り合いが転生した姿ってことなのかな?かなかな?」と嬉しそうに言ったが、件の2人、ルリアーナとリーネが断固として黙秘したために仕方なさそうに7人に向かって自己紹介をした。
しかしそれは何やら引っ掛かりを覚える言い方で、散々アンナに引っ掻き回された後でも聞かなければならない気がするものだった。
「えーと、なるはずだった、とは?」
「貴女はアンナさんではない、ということでしょうか?」
「でもアンナさんだという認識はあるんですよね?」
そのため、7人の中で比較的精神被害が少なかったルナとアデルとシャーリーがアンナに言葉の意味を問う。
今のアンナは『豊田杏奈』なのか『京山優里花』なのか、どちらの意志が強いのだろう。
「えーと、上手く言えないんだけど」
アンナはぽりぽりと頬を掻くと、
「豊田杏奈の立場になったということを理解している京山優里花、と言いますか…」
と言ってちらりと3人の顔を見て、
「……この漫画の…作者だと、言いますか…」
ごにょごにょととんでもない情報を呟き、3人の度肝を抜いた。
彼女たちは交代でアンナの目覚めを待つことにし、今の時間はルナとアデルが見ることになっていた。
2人はお菓子と紅茶を楽しみながら昔話に花を咲かせていたのだが、
「せっかく天国に行けたのに!?」
ハッと一気に目を覚ましたアンナが掛け布団を跳ね除けながら開口一番にそう言ったので飛び上がらんばかりに驚いた。
「は、はい?」
「…天国?」
突然の大声に驚きに固まる2人が呟いた声に「ん?」とアンナがそちらを振り向けば、
「あら、やっぱり天国?」
彼女は至極真面目な表情でそう宣った。
「きゃー!間違いなく天国だわぁ!!」
アンナが目を覚ましたと聞き、まずは女性だけで話を聞こうと3人のヒロインと4人の悪役令嬢が揃った。
だがその光景を見たアンナは再び叫ぶと、目を爛々と光らせ全員をじっくりと眺める。
「可愛い系が銀髪青目、ピンク髪に黄色い目、青髪にオレンジの目。綺麗系が茶髪に金目、赤髪に緑目、緑髪に薄茶の目、そして黒髪赤目!最高だわ!!」
シャーリー、ルナ、アデル、リーネ、ルリアーナ、アナスタシア、イザベルと視線を走らせ、その度にはあはあと荒い息を吐く。
正直、黒髪黒目で大和撫子風の品の良い可愛さを持った美少女然としている目の前の人物が変人にしか見えない。
「……どうしましょうか」
「……どうにかできるんですか?」
「アデル様、諦めちゃダメ」
「いや、でもこれは…」
変人ことアンナの様子に頭痛を覚えて片手で頭を押さえるルリアーナの呟きに、アデルが「無理では?」と言いたげな顔を返す。
ルナは「なんとか頑張ろうよ」と伝えるが、リーネはアデルと同じ気持ちのようだ。
シャーリー、アナスタシア、イザベルは何も言わないが、表情はリーネやアデルが浮かべているものに似ている。
「…何故かしら、この子を見ていると、昔の同級生を思い出すの」
ルリアーナはふるふると頭痛を追い払うように頭を振りながらリーネを見る。
「同じクラスだったのは1年の時だけだったけれど、リーネちゃんは覚えてないかしら?」
「…ん?」
高校の時にルリアーナと3年間同じクラスだったというリーネは「ああ、高校の時の同級生なの?」と言いながらアンナの奇行を見て、
「……もしかしてキョン?」
と呟いた。
「そうそう、あの子」
「はい?呼びました?」
その呟きに同意を返したのがルリアーナ。
質問を返したのがアンナだった。
しかもその言葉はリーネの推測を、延いてはルリアーナの推測を肯定するものとしか思えないもので。
「ごめん、私ちょっと帰るわ」
「待って、私も帰る」
ガタッ、ガタンと音を立てて立ち上がり、ルリアーナとリーネは一目散に部屋から去ろうとした。
「ちょちょちょ、帰るってなに!?」
「ここはルリアーナ様のお家ですよ!?」
「お姉ちゃんまでどうしたの!?」
当然周りはそんな二人の反応に驚き、制止の声を上げる。
理由はすでに察しているが、だからと言ってこの人を置いて行かれても困るのだ。
ルナとアデルとシャーリーはルリアーナの腕と胴体を、イザベルとアナスタシアはリーネの腕をそれぞれ掴んで、というよりはぎゅとしがみついて全力で2人の退室を止めた。
「ああ、絡み合う美女たち…眼福だわぁ…」
だが7人がこんなことになっている元凶が涎を垂らさんばかりの恍惚とした表情でそんなことを宣ったせいで、全員で部屋を出そうになった。
「改めまして、豊田杏奈になるはずだった京山優里花です」
7人がかりでなんとかアンナが異世界転移をしてきたことを説明すると、「あ、やっぱり貴女たち君となのヒロインよね」とアンナが言ったため、そのことを理解しているなら話は早いとゲームシリーズのヒロインと悪役令嬢が全員転生者であることを説明すると、「ってことはそこの2人は私の知り合いが転生した姿ってことなのかな?かなかな?」と嬉しそうに言ったが、件の2人、ルリアーナとリーネが断固として黙秘したために仕方なさそうに7人に向かって自己紹介をした。
しかしそれは何やら引っ掛かりを覚える言い方で、散々アンナに引っ掻き回された後でも聞かなければならない気がするものだった。
「えーと、なるはずだった、とは?」
「貴女はアンナさんではない、ということでしょうか?」
「でもアンナさんだという認識はあるんですよね?」
そのため、7人の中で比較的精神被害が少なかったルナとアデルとシャーリーがアンナに言葉の意味を問う。
今のアンナは『豊田杏奈』なのか『京山優里花』なのか、どちらの意志が強いのだろう。
「えーと、上手く言えないんだけど」
アンナはぽりぽりと頬を掻くと、
「豊田杏奈の立場になったということを理解している京山優里花、と言いますか…」
と言ってちらりと3人の顔を見て、
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