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アナスタシア編
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「君とな4のヒロイン、ルナです。前世では清水莉緒って名前で、秋奈の、アデル様の部活の先輩でした。よろしくお願いします」
リーネたちと合流し、密談の場として定着しつつあるフージャの船の一室に集まった7人は思い思いの場所に立ったり腰掛けたりしながらまずはと自己紹介を始めた。
先陣を切ったのは初対面の人が多いルナで、彼女の前世にシャーリーとリーネは興味津々だった。
「へー、今回はアデル様と知り合いだったのね」
「皆さんよく繋がりますねぇ」
2人はまたも前世で誰かの知り合いだった人間だと知ってまたも続いた偶然に笑う。
「そうなの。しかもうちの妹の先輩でもあったらしくて」
ルリアーナも「凄いよねぇ」と笑ったが、
「……何気にアンタ、間接的とはいえ全員コンプしてない?」
「はい?」
ふと笑いを収めたリーネの言葉に目を瞬かせた。
「まず直接知ってたのが私とシャーリーちゃんでしょ?で、イザベルは私の妹だから友人の妹ってことで間接的な繋がりがある。さらにアデル様とルナちゃんも妹の友人や先輩っていう繋がりがあるんでしょ?」
それぞれを指差しながら「フルコンプじゃん?」というリーネに「そういえば」と目を見開く。
当人同士の繋がりはなく、犠牲者同士でもない。
被害者遺族である姉の同級生というだけの繋がりであるイザベルや、妹の先輩と友人であるルナとアデルとの関係を見ればそれが必然ではなく偶然だというのはわかるが、それにしても凄い確率ではある。
以前「世間は狭い」と言ったが、それに当て嵌まっているのは自分だけだと今更ながらに気がついた。
「もしかしてアナスタシア様とも知り合いだったりして」
リーネはこれから会う予定の、自分と対の存在である最後の悪役令嬢のことを思い出しながら目の前の悪役令嬢に笑う。
そうだとは思っていないが、彼女ならそんなこともあるかもしれないと。
「可能性はあるかもしれませんね」
そしてそれにアデルは同意を示した。
「まだ出会っていない人は引っ越しをして逃げることができた2番目のストーカー被害者の方だけですから。年齢はシャーリーさんと同じくらいだったはずなので、歳の近かったルリアーナ様とも、もしかしたらお会いしていたかも」
その根拠として年齢のことを言いながらアデルは関係者一覧の紙を取り出す。
「今までの皆さんのお話しを聞くと、どうやら亡くなった時期に近い順番で無印から転生しているようですし、引っ越した方がいつ亡くなったかはわかりませんが、可能性は十分にあると思います」
だが不意に暗い表情になり、「ただ」と言葉を足す。
「そうなるとカロンさんが謎なんです。彼女が転生者で事件に関わっていた方だとすると、彼女の件は公になっていないか、あの犯人の犯行だとわかられていない可能性があります。だからどうしたというわけでもないのでしょうが、気になると言うか、なんと言うか…」
つつっと紙に書かれた『カロン』の文字を指でなぞりながらアデルはため息を吐いた。
「とはいえわからないことを悩んでもしょうがありませんから、自己紹介の続きをしましょうか」
しかしすぐに顔を上げ、「中断させてすみません」と苦笑しながらシャーリーたちに続きを促した。
このことについて悩むのは今ではない、と。
「そうね」
「元々腰を折ったのは私だから、アデル様が気にしないで」
「じゃあ、作品順ということで私が」
ルリアーナとリーネとシャーリーはそう言って笑うと、アデルがこれ以上落ち込まないようにとそれぞれ声を出す。
まだあまり状況が掴めていないルナは戸惑っていたが、それでも皆がアデルに気を遣い、優しくしてくれているのはわかって嬉しくなった。
率直にいい人たちだと思うし、これから自分もその仲間に入れてもらえるのだと思えば漠然と感じていた不安が薄れていくような気がした。
この人たちと一緒なら大丈夫だと何故か信じられると思えた。
自己紹介を終えて船を出ると、丁度お昼時らしくウドスの街は賑わいを見せていた。
「明日の朝にはスペーディアへ移動するから、今の内行きたいお店に行っておきましょ」
そんなルリアーナの提案の下、実はずっと気になっている店があったと言ってリーネとシャーリーが案内したのは、フルーツが宝石のように美しく飾り付けられたキラキラと輝くケーキが並ぶ店だった。
「ランチタイムにはデザート付きの食事もやってるから!」
「街の人はもちろん、お忍びで貴族の方もいらっしゃるようなお店だそうですから!!」
2人は何を言う前からルリアーナに「お願い(します)!!」と頭を下げる。
それは単純にルリアーナが主導権を握っているから、というのもあるが、
「…別にいいけど、2人とも完全に私に集る気ね?」
表のメニューに書いてある、庶民ではなかなか手を出しづらい金額を見てルリアーナは全てのことを悟り、「しょうがない人たちね」と笑顔でため息を吐いたのだった。
なお、フージャは「男が行くにはハードルが高い」とその店に行きたくないようだったが、「俺もいるからいいじゃん」という甘いもの好きのルカリオに説得されて渋々ながら一緒に入って、「やっぱり俺だけ浮いてる…」と心の中で涙した。
しかし女性陣の中でも違和感のないルカリオを羨ましがったかと言えばそうでもないあたり、彼は存外格好つけのようだ。
そしてそれは当然のように他の皆にバレていて、妙に微笑ましい顔で見守られていた。
ルカリオ以外は精神的には全員実年齢プラス16~23歳のお姉さんだからか、思春期の弟を見守るような気持ちになったのだ。
そんなことがありながらも昼食を終え、その後は気ままにウドスの街を観光し、夜はフージャが選んだ平民にも行きやすいけれどちょっといいお店で夕食を食べた7人は、男子組2人と平民ヒロイン組3人と貴族悪役令嬢組2人に分かれて部屋を取り、夜更かしすることなく眠りについた。
そして翌日は予定通りスペーディアにあるフージャの実家であるバロス家所有の港へ向かうべく、遥かな海原に向けて出港した。
リーネたちと合流し、密談の場として定着しつつあるフージャの船の一室に集まった7人は思い思いの場所に立ったり腰掛けたりしながらまずはと自己紹介を始めた。
先陣を切ったのは初対面の人が多いルナで、彼女の前世にシャーリーとリーネは興味津々だった。
「へー、今回はアデル様と知り合いだったのね」
「皆さんよく繋がりますねぇ」
2人はまたも前世で誰かの知り合いだった人間だと知ってまたも続いた偶然に笑う。
「そうなの。しかもうちの妹の先輩でもあったらしくて」
ルリアーナも「凄いよねぇ」と笑ったが、
「……何気にアンタ、間接的とはいえ全員コンプしてない?」
「はい?」
ふと笑いを収めたリーネの言葉に目を瞬かせた。
「まず直接知ってたのが私とシャーリーちゃんでしょ?で、イザベルは私の妹だから友人の妹ってことで間接的な繋がりがある。さらにアデル様とルナちゃんも妹の友人や先輩っていう繋がりがあるんでしょ?」
それぞれを指差しながら「フルコンプじゃん?」というリーネに「そういえば」と目を見開く。
当人同士の繋がりはなく、犠牲者同士でもない。
被害者遺族である姉の同級生というだけの繋がりであるイザベルや、妹の先輩と友人であるルナとアデルとの関係を見ればそれが必然ではなく偶然だというのはわかるが、それにしても凄い確率ではある。
以前「世間は狭い」と言ったが、それに当て嵌まっているのは自分だけだと今更ながらに気がついた。
「もしかしてアナスタシア様とも知り合いだったりして」
リーネはこれから会う予定の、自分と対の存在である最後の悪役令嬢のことを思い出しながら目の前の悪役令嬢に笑う。
そうだとは思っていないが、彼女ならそんなこともあるかもしれないと。
「可能性はあるかもしれませんね」
そしてそれにアデルは同意を示した。
「まだ出会っていない人は引っ越しをして逃げることができた2番目のストーカー被害者の方だけですから。年齢はシャーリーさんと同じくらいだったはずなので、歳の近かったルリアーナ様とも、もしかしたらお会いしていたかも」
その根拠として年齢のことを言いながらアデルは関係者一覧の紙を取り出す。
「今までの皆さんのお話しを聞くと、どうやら亡くなった時期に近い順番で無印から転生しているようですし、引っ越した方がいつ亡くなったかはわかりませんが、可能性は十分にあると思います」
だが不意に暗い表情になり、「ただ」と言葉を足す。
「そうなるとカロンさんが謎なんです。彼女が転生者で事件に関わっていた方だとすると、彼女の件は公になっていないか、あの犯人の犯行だとわかられていない可能性があります。だからどうしたというわけでもないのでしょうが、気になると言うか、なんと言うか…」
つつっと紙に書かれた『カロン』の文字を指でなぞりながらアデルはため息を吐いた。
「とはいえわからないことを悩んでもしょうがありませんから、自己紹介の続きをしましょうか」
しかしすぐに顔を上げ、「中断させてすみません」と苦笑しながらシャーリーたちに続きを促した。
このことについて悩むのは今ではない、と。
「そうね」
「元々腰を折ったのは私だから、アデル様が気にしないで」
「じゃあ、作品順ということで私が」
ルリアーナとリーネとシャーリーはそう言って笑うと、アデルがこれ以上落ち込まないようにとそれぞれ声を出す。
まだあまり状況が掴めていないルナは戸惑っていたが、それでも皆がアデルに気を遣い、優しくしてくれているのはわかって嬉しくなった。
率直にいい人たちだと思うし、これから自分もその仲間に入れてもらえるのだと思えば漠然と感じていた不安が薄れていくような気がした。
この人たちと一緒なら大丈夫だと何故か信じられると思えた。
自己紹介を終えて船を出ると、丁度お昼時らしくウドスの街は賑わいを見せていた。
「明日の朝にはスペーディアへ移動するから、今の内行きたいお店に行っておきましょ」
そんなルリアーナの提案の下、実はずっと気になっている店があったと言ってリーネとシャーリーが案内したのは、フルーツが宝石のように美しく飾り付けられたキラキラと輝くケーキが並ぶ店だった。
「ランチタイムにはデザート付きの食事もやってるから!」
「街の人はもちろん、お忍びで貴族の方もいらっしゃるようなお店だそうですから!!」
2人は何を言う前からルリアーナに「お願い(します)!!」と頭を下げる。
それは単純にルリアーナが主導権を握っているから、というのもあるが、
「…別にいいけど、2人とも完全に私に集る気ね?」
表のメニューに書いてある、庶民ではなかなか手を出しづらい金額を見てルリアーナは全てのことを悟り、「しょうがない人たちね」と笑顔でため息を吐いたのだった。
なお、フージャは「男が行くにはハードルが高い」とその店に行きたくないようだったが、「俺もいるからいいじゃん」という甘いもの好きのルカリオに説得されて渋々ながら一緒に入って、「やっぱり俺だけ浮いてる…」と心の中で涙した。
しかし女性陣の中でも違和感のないルカリオを羨ましがったかと言えばそうでもないあたり、彼は存外格好つけのようだ。
そしてそれは当然のように他の皆にバレていて、妙に微笑ましい顔で見守られていた。
ルカリオ以外は精神的には全員実年齢プラス16~23歳のお姉さんだからか、思春期の弟を見守るような気持ちになったのだ。
そんなことがありながらも昼食を終え、その後は気ままにウドスの街を観光し、夜はフージャが選んだ平民にも行きやすいけれどちょっといいお店で夕食を食べた7人は、男子組2人と平民ヒロイン組3人と貴族悪役令嬢組2人に分かれて部屋を取り、夜更かしすることなく眠りについた。
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