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反りが合わない相手2
しおりを挟むところがどっこい。
リエナは何故かそれからもアリエットに良く絡んできた。何度も何度もしつこいくらいに。
アリエットが教室で自分の席に座って友人とお喋りをしていると、ふっと影がさしたので顔を上げると、そこにはにっこりと笑みを浮かべたリエナの姿。
「ティンバーランド伯爵令嬢様とは知らず、大変失礼いたしました。私、同じクラスのリエナ・ランドーソンと申します。
あまりにも珍しいお色だったので挨拶を忘れて話しかけてしまったのですぅ~。アリエット様の広い御心で許していただけると嬉しいですわ。」
「…ええ。よろしくお願いしますね。(おめーとは絶対よろしくしたくないわ~)」
まだ髪と目の色のことを言うんかーい、とまたまたピキっときたアリエットだったが、そこも何とか耐えて微笑み返した。けれど仲良くするつもりは全くなかった。
その彼女の後ろに少女と瓜二つの少年が立っていてアリエットは吃驚したが、彼は無表情にアリエットをじっと見ているだけで、特に何も声はかけられなかった。
お世辞でよろしく、と返しただけだ。それなのに。
ある時はランチルームで。
アリエットが友人と食事をとっていると、何故か相席をしてくるリエナ嬢。
「まあ!アリエット様は本当によく食べられますのね!令嬢っぽくないですわ~。私とても真似できないですわぁ…」
「…こんにちは。おほほ、ランドーソン様はスラッとしていらっしゃいますものね…(喧嘩売ってんのかしら?名前で呼ぶ事も許してないんですけどぉ?)」
「そうなのですぅ。スタイルをキープするように言いつけられていて、あまり多くは食べられませんの。ですから沢山食べられるアリエット様が羨ましいですわぁ~」
「…まあおほほ(ああそうですか)」
こっちも言うて太っとらんわ!
こちとら家の中では我慢しとるんじゃ!外でぐらい好きに食わせろや!
心の中で悪態を付きながら、ふとリエナの後ろに目をやるとこちらをじっと見つめるアシェルの姿もあったが、また何も言われなかった。
(あの人、何?)
ある時は図書館にて勉強をしていると、またしてもリエナがやってきた。
「アリエット様ってお勉強は本当に良くお出来になるんですねぇ~。」
「ほほほ、まあそれなりには…(「は」って何よ、「は」って?!)」
「まあ、私達そんなに成績変わりませんがぁ~うふふ」
「…ほほほ。(じゃあなんで言った)」
そういう双子の妹の後ろで、兄は椅子に座り黙々と勉強をしているのをアリエットは目の端に捉えていた。
(妹のひっつき虫かい)
ある時にはお茶会にて。友人と話をしているアリエットにリエナは話しかけてきた。
「アリエット様、御機嫌よう。
…アリエット様って髪も目の色も地味…あ、すみませぇん。控え目でいらっしゃるからもっと派手な服を着られたらよろしいのに~。そうしたらこういった混み入った場所でも直ぐに見つけることが出来ると思うんですの。
いえでももしかしたらそのお色だからこそ目立つのかもしれませんわねぇ~。」
「…御機嫌よう。
まあ。そう言うランドーソン様は銀糸のような美しい御髪でいらっしゃいますから、なんでもお似合いになられますわね~(何にもせんでもピッカピカの青魚の腹みたいに光って、それはそれは大層お得なことで・す・ね!)」
「そうなのです~、私はなんでも似合ってしまいますの。本当に困りますわうふふふ。」
(うふふふ、じゃないわよ。なんなのこの人。)
自分色に着飾ったリエナのその後ろで、アシェルも自分色に着飾り立っていたが、その辺から薄らと嫌味のこもった笑みを浮かべていた、ように思う。
(目の端にいちいち入ってくるんですけど?!あんた何?!)
何の目的があるのか分からないがことある事に絡んでくるリエナ(と、何故かずっと後ろにいるその兄)に、アリエットは段々と戸惑いから怒り、そしてまた戸惑いへと気持ちが変化していく。
溜息をつきながら幼少期よりの友人であるメーベリナに愚痴をこぼした。
「あの方達、本当に何なのかしら?」
「そうねえ…、ランドーソン男爵家は男爵とはいえ先々代は王家より王女が降嫁したこともあるし、古くからの名家なのよね。
賢者様をも輩出する高学歴のお家柄で、領地は王都の真隣。立地最高。国への貢献度の高さから過去に何度も陞爵の打診があったようだけれど、都度断っているちょっと変わった方達よね。
確かあの外見も王家の血が入っているからだったんじゃなかったかしら?」
指折り数えながらメーベリナが教えてくれる内容に、アリエットは大きく溜息をついた。
「知ってるわよ、有名な話じゃない。じゃなきゃこのクラスにもならないだろうし生徒会にも所属しないだろうし…。
じゃなくってあの態度よ~!」
「あー、あれねえ…。まあ、普通に考えたら貴女にストレートに嫌味を言っているわよね。」
「よね?!やっぱりそうよね?!」
「そして双子兄、止めないわね。見てるだけ」
「そうなのよ!いるだけなの!そこに!いるだけ!!」
「普通に考えたらね。」
「普通じゃない場合ってなによ…?」
メーベリナは金色の髪を揺らしてさあ?と小首を傾げた。
「噂程度でしか私も知らないから何とも言えないけど、ランドーソン男爵の方って相当なツンデレとか言うやつなんですって」
「ツンデレ…?何よそれ。」
「何だったかしら?庶民の恋愛小説で流行ってる表現なのよね~。一回読んでみたら分かるんじゃない?」
「ほう…?」
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