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義理の妹
しおりを挟むアゼリアは、鮮やかな赤髪とサファイアのように輝く美しい瞳、そしてアゼリアに接していると誰もがいつの間にか彼女の事を好きになる…そんな人懐っこく、明るい性格をしていた。
ユリアーナもずっと長い間、義妹の事を可愛く思い気にかけていた。
『おねえさま、おねえさま!』
七年前から自分を慕い懐いてくる義妹は、父の遠縁の親族の娘だった。
七年前、アゼリアの両親と兄弟が突如として馬車の事故でなくなり、彼女は当家に引き取られた。当時はまだ八歳になったばかりだった。
引き取られた当初、アゼリアは親が亡くなっている事には気がついておらず、ただ硬い表情で「両親はいつ自分を迎えに来るのか」と、歳の近いユリアーナに何度も聞いた。
両親が迎えに来られない事を理解した後は、寂しがって笑いもせず、泣きながら部屋の隅で小さくなっている少女を不憫に思ったユリアーナが拙くも懸命に励ました結果、アゼリアはユリアーナに懐いた。
『私もお姉様のようになれるように、頑張ります!』
そう言って可憐に笑ったアゼリア。
ユリアーナはその言葉を聞いて、少女が辛い過去から立ち直って本当に良かったと心から思った。
明るく陽気で、甘え上手なアゼリアにユリアーナも両親も、完全に彼女を伯爵家の一員として受け入れていた。特にユリアーナ自身は物心ついたばかりの頃にやってきたアゼリアを本当の妹のように思っていた。
いや、確かに妹だったのだ。
可愛らしく純粋で、守ってあげたいと。
ユリアーナには、アゼリアが伯爵家にやってくる以前よりディオラルド・アヴダントという婚約者がいた。ディオラルドは隣接している領地の伯爵家の次男で、優しく穏やかな性格をしていた。
継ぐ家のない少年は、ユリアーナと結婚をした後、共にステイフィルドの領地を守り、アヴダントと共闘していくと親達の約束事で決められた誓約結婚だった。
本人達は幼馴染であり、気心知れた中であり、特にユリアーナはディオラルドに対して恋愛的に好きだと思う気持ちを初めて会った時からはっきりと持っていた。
将来結婚し、このまま生きていくことは変化は少ないだろうが穏やかに過ぎていくと想像するだけで楽しみだった。
ユリアーナが十三歳になった時、そしてアゼリアが十歳を過ぎた頃、初めてディオラルドとアゼリアは顔を合わせた。ユリアーナとディオラルドのお茶の席に、彼女がアゼリアを呼んだからだ。
『ディオ様。二年前にやって来て、私の義妹になってくれたアゼリアです。』
『は、初めまして。義妹のアゼリアと申します。』
『初めまして。ユリアーナの婚約者のディオラルドだよ。将来の義兄として仲良くして欲しい。』
アゼリアは最初とても恥ずかしがり、ディオラルドと目を合わせようとしなかったが、彼の優しい喋り方や穏やかな微笑みに安心したのか、何時の間にか、いつものように頬を少し赤く染めて。人懐っこい笑みを浮かべキラキラと新緑のように輝く瞳でディオラルドを見つめていた。
アゼリアにとってディオラルドは、家族以外で初めて歳の近い異性だった。
…考えてみれば、あの頃から彼らはお互いに惹かれていたのかもしれない、とユリアーナは思い出してはそう思うのだった。
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