9 / 28
セロ・アレナトゥア 視点
しおりを挟む僕のせいじゃない。どう考えても僕のせいじゃないだろ。
だって、母上も父上も言っていた。
あの女の娘は禄なものじゃない、きっと阿婆擦れで常識なんかひとつも知らない、そんな女だって言っていた。でも、公爵家と縁を結ぶ為に必要な婚約なんだって。向こうの方が格上だけど、その娘は血が繋がっている訳じゃないから違う、名目上養女というだけの存在だと。セロ、貴方が手綱をしっかりと引くのよと母上にも何度も言われていたんだ。
僕は彼女が勘違いをしないように、その言葉をそのまま伝えた。それだけだ。それなのに。
ティアリーネ・マスティマリエ。
可愛らしい少女だった。薄桃色の白金髪に、瞬きをすれば音が聞こえてきそうなほど長い、髪色と同じ色の睫毛の奥に透明度の高いアクアマリンの瞳。華奢な身体も庇護欲を誘い、成長後の美しさも想像できるほどだった。
セロは少女を一目で気に入った。
下賎なものの血だと分かっていても、その人形のように端正な見た目に惹かれた。
父上や母上が言うように、碌な女じゃなくても一緒に居てやってもいい、そう思うくらいには気に入ったんだ。
なのに。
あいつの兄、ヴァン・マスティマリエに僕は追い出された。何だよ。本当の事を言ったから怒ったのか?親の面子を汚したなんて、僕はマスティマリエ公爵家を貶めたりなんかしていない。ティアリーネだけの事を言ったのに、何故公爵家の話になってしまったんだろう?
自宅へ帰り、部屋にいたら父上に呼ばれて執務室に入ったらいきなり怒鳴られた。公爵家から手紙届いていたんだ。その手紙を持って父上はプルプルと震えていた。
「お前がこれ程馬鹿者だったとは思いもしなかった」
だと。
父上の後ろで、母上が真っ青な顔をしていた。何故?馬鹿って、僕が?
「何故僕が馬鹿になるのですか?父上も母上も言っていたじゃないですか?僕は本当のことしか言っていません!」
と言うと、殺されそうな勢いで睨み付けられた。
「お前は本当にどうしようも無い…。あんなのは家族内での戯言だ。本人に伝えてどうするのだ。相手が王族であったら処罰されていたんだぞ。そんな事も理解できないから馬鹿だと言ったのだ。」
「お、王族なんて有りもしない例えを出されたって」
「あの娘は元々王族だ」
「は?だって、下賎の娘だと」
「ああそうだ。どうせ碌でもない出身の娘だろう。だが女一人で子供を産めるわけないだろうが」
「…どういう意味ですか?」
父は悪くなった顔色のまま、僕の顔を睨んだ。
「まだ分からんのか。公にはなっていないが、どう考えてもただの平民の娘が公爵家の養女になどなるわけが無いだろう。
あの娘は我が国の王家の血を引く者だ。」
そんなの、知るわけないじゃないか!
誰も教えてくれていなかった!やっぱり僕が悪いんじゃない!
そう言っても誰も肯定してくれなかった。それどころか、この国で一番厳しいと言われている寄宿舎送られることになった。なんで?何で僕がこんな目に合わないといけないんだよ!父上と母上が悪いんじゃないか!
………………………………………………
誤字の報告をありがとうございます(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”
教えて頂けて大変助かりました!
色々間違えていてすみません💦
247
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説

踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです


強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません
しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。
曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。
ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。
対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。
そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。
おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。
「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」
時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。
ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。
ゆっくり更新予定です(*´ω`*)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる