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セロ・アレナトゥア 視点
しおりを挟む僕のせいじゃない。どう考えても僕のせいじゃないだろ。
だって、母上も父上も言っていた。
あの女の娘は禄なものじゃない、きっと阿婆擦れで常識なんかひとつも知らない、そんな女だって言っていた。でも、公爵家と縁を結ぶ為に必要な婚約なんだって。向こうの方が格上だけど、その娘は血が繋がっている訳じゃないから違う、名目上養女というだけの存在だと。セロ、貴方が手綱をしっかりと引くのよと母上にも何度も言われていたんだ。
僕は彼女が勘違いをしないように、その言葉をそのまま伝えた。それだけだ。それなのに。
ティアリーネ・マスティマリエ。
可愛らしい少女だった。薄桃色の白金髪に、瞬きをすれば音が聞こえてきそうなほど長い、髪色と同じ色の睫毛の奥に透明度の高いアクアマリンの瞳。華奢な身体も庇護欲を誘い、成長後の美しさも想像できるほどだった。
セロは少女を一目で気に入った。
下賎なものの血だと分かっていても、その人形のように端正な見た目に惹かれた。
父上や母上が言うように、碌な女じゃなくても一緒に居てやってもいい、そう思うくらいには気に入ったんだ。
なのに。
あいつの兄、ヴァン・マスティマリエに僕は追い出された。何だよ。本当の事を言ったから怒ったのか?親の面子を汚したなんて、僕はマスティマリエ公爵家を貶めたりなんかしていない。ティアリーネだけの事を言ったのに、何故公爵家の話になってしまったんだろう?
自宅へ帰り、部屋にいたら父上に呼ばれて執務室に入ったらいきなり怒鳴られた。公爵家から手紙届いていたんだ。その手紙を持って父上はプルプルと震えていた。
「お前がこれ程馬鹿者だったとは思いもしなかった」
だと。
父上の後ろで、母上が真っ青な顔をしていた。何故?馬鹿って、僕が?
「何故僕が馬鹿になるのですか?父上も母上も言っていたじゃないですか?僕は本当のことしか言っていません!」
と言うと、殺されそうな勢いで睨み付けられた。
「お前は本当にどうしようも無い…。あんなのは家族内での戯言だ。本人に伝えてどうするのだ。相手が王族であったら処罰されていたんだぞ。そんな事も理解できないから馬鹿だと言ったのだ。」
「お、王族なんて有りもしない例えを出されたって」
「あの娘は元々王族だ」
「は?だって、下賎の娘だと」
「ああそうだ。どうせ碌でもない出身の娘だろう。だが女一人で子供を産めるわけないだろうが」
「…どういう意味ですか?」
父は悪くなった顔色のまま、僕の顔を睨んだ。
「まだ分からんのか。公にはなっていないが、どう考えてもただの平民の娘が公爵家の養女になどなるわけが無いだろう。
あの娘は我が国の王家の血を引く者だ。」
そんなの、知るわけないじゃないか!
誰も教えてくれていなかった!やっぱり僕が悪いんじゃない!
そう言っても誰も肯定してくれなかった。それどころか、この国で一番厳しいと言われている寄宿舎送られることになった。なんで?何で僕がこんな目に合わないといけないんだよ!父上と母上が悪いんじゃないか!
………………………………………………
誤字の報告をありがとうございます(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”
教えて頂けて大変助かりました!
色々間違えていてすみません💦
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