【完結】私が貴女を見捨てたわけじゃない

須木 水夏

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(ラディア・サムル伯爵令嬢視点)

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「何で…、何で私が閉じ込められないといけないの」
 





 扉の鍵も窓の鍵も、掛けられていて開かない。食事は朝と夜の二度、侍女と従者がやって来て扉直ぐ横のテーブルに食事を置き、前回のお盆を下げてゆく。その間、従者はラディアが扉より出ないように目を光らせているのだ。
 前回、扉を通り抜けようとしたら従者に取り押さえられ地面にねじ伏せられた。
 あまりの痛みに「痛い!なんて無礼な!」とラディアが叫ぶと、「この部屋から出ようとするなら力づくでも止めるようにと伯爵に命じられております」と冷たい声で言われた。

 それがあまりに痛かったので、それ以降は大人しくしているけれど。

 おかしい。絶対におかしい。フィラメスティア様も、パスファー様も、周りにいた友達もみんな言っていたわ。

 平民の偽聖女の娘が、公爵家に居座っているって。フィラメスティア様もパスファー様もお優しくていらっしゃるから、直接彼女に何か言ったりするわけじゃなかったけれど、私はあの子が目障りだった。

 だって、なんでしょう?何故、そんな子が筆頭公爵家に養女として迎えられているの?おかしいじゃない。詳しい事は知らないけれど、偽聖女なんて呼ばれているんだからきっと母親は大罪人か何かだと思っていた。そしたら平民だって!でしょうね!あんな髪の色、貴族では見た事ないもの。

 
 だから、みんなを代表して言ってあげたのよ。ここにいるべきでは無いってはっきり言ってあげたのに。
 あの後マーヤは止めようと言ったのにと私を責めるし、ケイトは泣き喚いて話にならなかった。気分が悪くて早退したら、そのまま部屋に閉じ込められて今に至る。



 そういえば。マーヤが、学園で別れる時に何か言っていたわ。

」だって。

 何よ、王家の痣って、って聞いたら信じられないものを見るような目で見られたわ。何なのあの子。ちょっと仲良くしてやったら調子に乗って。子爵の癖に。



 一日中部屋の中にいて、とてもつまらない。手紙も書かせて貰えないし刺繍道具も本も取り上げられたから、何にもすることがないの。

 あれからお父様にもお母様にも会っていないし、一度だけ会いに来た弟にも「もうすぐお別れだから」ってすごく冷たい声で言われた。あの子どこかに行くのかしら。

 ここから早く出たいわ。学園に戻ったら、フィラメスティア様とパスファー様に会いに行って、今度は一緒に来てもらおう。そしてあの女に、ここから出ていけって言ってもらおう。




 おかしいもの。絶対。

 穢れた血平民が私より上の地位にいるなんて、間違っているもの。何が「ティアリーネ・マスティマリエは貴女方を処します」よ。マガイモノ養女の癖に。


 そんな事有り得るはずがない…。













 




 
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