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しおりを挟む『貴方のことなんて、もう要らないわ』
ぽろり、と冷たい涙が自分の眼より転がり落ち、そのまま肌を滑っていった。
その言葉の意味をティアリーネは理解出来た。
頭の芯に氷を押し付けられたかのようにとても寒くて、身体も心もズタズタに引き裂かれて痛くて、悲しくて、怖くて。
生まれてきて初めて感じる慟哭を受け止めきれず、体がぶるぶると震えるのを他人事ように思いながら。
『産むんじゃなかった。本当に、何の役にも立たない子』
最後にそう、その人は言った。私を酷く蔑んだような目で見ながら。
ティアリーネはぱちり、と目を覚まして。ああ、夢だったか、と温かなベッドの中で安堵のため息をひとつ、小さくついた。強ばったまま固まっていた身体をゆっくりと伸ばしていくと、ひんやりとしたシーツに足の体温が馴染んでいく感覚が心地好く、さらに少女を現実へと引き戻した。
その夢は、もう何度となく見ている。十年も前の記憶のものだ。
ティアリーネの最古の記憶と言っても過言では無い、けれどちっとも嬉しくない思い出。
むくりとベッドから起き上がると、ティアリーネはそっと縁に座ってカーテンの向こう側、白みゆく空から降り注ぐ朝日を、無表情で見つめた。
(どうせなら、何も覚えていなければ良かったのに…)
そんなことを思いながら。
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