12 / 19
白と黒
3
しおりを挟む僕が君に会ったのは、偶然だったのか必然だったのか。
今となっては、僕には、分からない。
初めて出逢った日。柔らかな陽の光の中ではにかみ、こちらを見た少女に、その時アレクセイという名前だった少年は一目惚れした。
いつ隣国が起こした戦争に巻き込まれてしまうのか、小国に住むアレクセイや家族、周りの人々はいつも気が気では無い生活を送っていた。そんな中で、見つけた小さな恋。
少女の名前はマリーアンヌと言った。花のように可憐な彼女に、アレクセイは自分の良いところを必死でアピールし、政略結婚であったが、お互いに相手をきちんと想いあって結婚の約束までしたのだ。
そう、したのに。
戦争がアレクセイ達の生活を襲った。忽ち瓦礫の山と化した世界の中、必死に逃げて、どうにか隠れ果せて。
爆撃に脅えながらの地下の防空壕での生活。家族の死を目の当たりにし、心をすり減らしたマリーアンヌと僕は、それでも自分達の明日をも知れぬ状況下で身を寄せあって必死に生きた。
けれど、それは直ぐに終わりを迎えた。
マリーアンヌが死んだからだ。
アレクセイが水を探しに行っていた間に起きた事だった。投下された爆弾がマリーアンヌが避難していた場所を直撃した事によるものだった。
『直ぐに帰ってくるよ。』
『ずっとお待ちしております。』
それが、最期に彼女と交した言葉だった。
それから、僕も死んだ。
次に目覚めた時、その世界には彼女は居なかった。ずっと探していた。でも見つけられなかった。
僕はその世界で、一つの過去の話を聞いた。小国が大国に攻め入られて滅んだ話だ。
それはもう百年も昔の話だったが、『歌』として存在していた。その時の小国の王が国や民を捨て戦禍から逃れ、残された民が自分達の家族や恋人を亡くしたこと、そして国が滅ぶことを嘆き悲しんだという歌詞だった。
その歌を知った後、僕は死んだ。
次に生まれ変わった時、家族同士の交流の場で僕はまた、彼女に出逢えた。
僕はアローという名前で、彼女はサーシャという名前だった。
出会った瞬間に解った。向こうも僕だと解っていた。彼女が『逢いたかった』と初めて会った時に言ってくれたから、それが解ったんだ。
辺境の森で、二人で一緒に馬に乗り野を駆け回った。食事や勉学を共にし、将来的には婚約をすることが決まっていた。言葉にしなくても、伝えなくても彼女と想い合っていた。とても幸せだった。
けれど、また戦が起こった。
辺境の地は忽ち火の海と化した。敵に囲まれ、逃げ場のない城の中で、父は母と兄を剣で刺した後、私と彼女を刺した。恐らく、敵に蹂躙されるくらいならば、という判断だったのだろう。
その時、私達はまだ十代になったばかりの子どもだった。私達は手を繋いだまま、その想いを伝えられずに死んでしまった。
四度目に生まれ変わった時、僕はまた彼女を探そうとして。
止めた。
彼女が死んでしまう理由に、気がついてしまったから。
40
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説

罪なき令嬢 (11話作成済み)
京月
恋愛
無実の罪で塔に幽閉されてしまったレレイナ公爵令嬢。
5年間、誰も来ない塔での生活は死刑宣告。
5年の月日が経ち、その塔へと足を運んだ衛兵が見たのは、
見る者の心を奪う美女だった。
※完結済みです。


邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

王太子の愚行
よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。
彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。
婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。
さて、男爵令嬢をどうするか。
王太子の判断は?

出て行けと言われても
もふっとしたクリームパン
恋愛
よくあるざまぁ話です。設定はゆるゆるで、何番煎じといった感じです。*主人公は女性。書きたいとこだけ書きましたので、軽くざまぁな話を読みたい方向け、だとおもいます。*前編と後編+登場人物紹介で完結。*カクヨム様でも公開しています。

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる