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サラの娘【テューダーズ伯爵視点】
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サラ。美しい若葉色の瞳の儚げで優美な女。俺の物にするつもりで、そう出来なかったただ一人の女だ。
俺は子どもの頃から顔とスタイルと要領はかなり良かった。
髪の色はモカブラウン、瞳の色は海のように深い青。すっと通った鼻筋に薄く形の良い唇。身長は高い訳では無いが頭が小さいためにバランス良く、どんな服を身につけてもよく似合った。他の男が着ればダサく見える原色の服でも、俺であれば難なく着こなせる。
自分で言うのもなんだが、俺には美貌、快活な性格、人を惹きつける他人とは違うセンスがあった。伯爵という地位の家へと生まれ、何不自由ない暮らしをしていた。
初めて女を知ったのは十歳の頃だ。十五歳のメイドに身体を触られ触り返していたら何となくそんな雰囲気になり、なし崩し的に寝た。女の身体は柔らかく、滑らかで心地よく、そして温かい。
気に入った俺は、それ以降色んな女と関わりを持った。平民から伯爵令嬢まで。バレれば良くない事になる事は分かっていたから、全ての関係を親にも友だちにも秘密にしていたが、この俺の美しさだ。何もしなくても女が寄ってくる状況は、女と遊んでいるという噂として流れ出した。勿論、関係を持った相手には口止めをし、金も払っていたからあくまでも噂でしかないと両親も友人達も思っていた。その頃の俺には婚約者もいたし、みんな遊びだと割り切っている関係だったからな。
サラ・リッチェルザムに出会うまでは。
特に抜きん出て美しい容姿の女だった訳では無い。どちらかと言うと真面目そうで地味なタイプだと最初俺は感じた。
しかし、良く見ると顔の造りはまあまあ整っている。気がついたら目で追っていた。
気持ちが大きく動いたのは、ぱっちりと大きな目元が柔らかく弧を描き、白く艷めく頬がピンク色に染まる瞬間を見た時だ。サラが彼女の婚約者、フルバードを見た時だったが、俺はそんな彼女の表情に目を奪われた。
だが如何せん、彼女の相手が気に入らない。サムエル・フルバードはやたら頭が良くて大人しいが身長が高く、時々人を小馬鹿にしたような態度で見下ろしてくる嫌なやつだった。
当時テストの範囲の事で聞きに行ったら『まず自分で出来るところはしないと。全部教えてなんて非常識すぎないかい?』とちいせえことを言われて腹が立ったので、顔を殴ってやったことがある。まあ、大した顔でもないんだし、傷がついても構わないよな?
(あんな腹の立つ奴とサラを結婚させるなんて。…そうだ、奪ってしまおう。)
俺は早速実行に移した。女は褒められる事を喜ぶ。「美しい」や「可愛い」といった言葉は特に有効的だ。
まずはお近付きになろうとしてみたものの、彼女のガードは固く俺の言葉に戸惑ったようにこちらを見るものの、直ぐに視線を逸らして微笑んでもくれない。
いつも上手くいっているはずの手法がサラには通用せず、俺は焦った。こうなったら力づくで身体を奪い関係を持ってしまおうと考えた。こんなに容姿の優れている俺に奪われるのだからサラもきっと受け入れるはずだと思った。
ありがたい事にサラは侯爵家の生まれだ。高位貴族とお近づきになれるチャンスだと、俺はサラが一人になるタイミングを虎視眈々と狙っていた。
そしてその日。俺は資料室へと一人で入っていったサラの跡をつけ、部屋の中へと入った。そこは紙とインクと埃の匂いのする場所だった。
(こんな場所で身体を奪われるなんて可哀想に。また改めてちゃんと清潔な場で可愛がってやらなくては。)
足音を殺し、本棚の前に立って黙々と文字を読みながら資料を取り出しているサラの背後に立ち、バッと羽交い締めにした。
細くて柔らかな、そして良い匂いのする身体。腕に触れた胸の大きさは思っていたよりもあり俺は興奮した。
『…!!だ、誰?!』
『俺だよ』
『……テュ、テューダーズ子息…?!な、何をするんですっ…!離して…!嫌っ!』
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
補足。
『あの親あっての彼』の回で、夜会で酔っていたテューダーズ伯爵に母サラが絡まれて、と父が嘘をついているのは、まだ現役学生のメアリーナの事を思っての嘘です。本当は学園内の資料室で強姦未遂が起きてしまっていたからでした…。
学者の血を引くメアリーナは、資料室が大好きで、一番最初にロメオとティファニーの逢い引きを見てしまったのも資料室の窓からでした。
だから、お父さんは資料室でそんな事があったなんて、言えなかったんですね…。
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